チームカムイVSオリジン

 やっぱり普通に終わらなかったBODで、なぜか空高くに招待された。


「オオオオオオ!!」


 洗脳された連中との戦闘まで強制されている。気分はもう最悪だよ。


「ああもう……雷光一閃!」


「全力ぶった斬り!」


 骨くらい折れる一撃のはずだが、平然と立ち上がってくる。

 これ人体改造されてんじゃないかな。


「罪もない人々にこの仕打ち。許せません!」


「君に許して貰う必要はない。酷な話だが、君が一番どうでもいいんだ。王子カムイ」


「何だって?」


「Aの器であるルシード。剣士として圧倒的なポテンシャルを見せるクリムゾンマスク。その戦法と魔法が魅力的なアジュ。全体的にまとまっているだけの占い師に興味はない」


「なら試してみるがいい!」


 カムイの攻撃魔法がオリジンに集中する。だが見えない壁にぶつかり止められた。


「対魔法用の強化壁だ。私の自信作だよ」


「無敵ってわけじゃないだろう?」


 虚無ぶつければ消せるはずだ。指先に魔力を集中する。


「させないよ」


 マジックアサシン四人組が、一斉に俺を狙って迫ってきた。


「ええい邪魔だ!」


 距離を取って魔法を連打し、その隙にヴァンがふっ飛ばしてくれる。

 でも立ち上がるんだなあ……苦しみが増すだけだぞ。


「君の魔力は面白い。魅力的だが、チャージに時間がかかるタイプだね?」


「大正解だよ」


 こいつきっちり試合見てやがったな。観察して油断しないタイプは嫌いだ。


「まあいい。ザコから潰す」


 敵は強化されたが催眠状態にある。つまり俺との知恵比べにすら勝てない。

 雷の手を複数出し、ダメージがないのをいいことに拘束してクナイを指す。


「その程度の傷でどうしようというんだい?」


「強力な痺れ薬が塗ってある。人体が動かなくなっちまえば終わりだ」


 単純に動かなくするならこれでいい。正面から倒す必要がない。


「体が動かなきゃ洗脳もクソもないだろ」


「ルシード、解析完了である!」


「了解、コードオールクリア!!」


 高速で動き、C1戦で見せた光る剣で斬っていく。

 斬られたやつが起き上がらない。これはまさか。


「お前の野望もここまでだ。オリジン」


「驚いた。最新技術と洗脳まで解除できるのか。流石に反則だろう」


 対管理機関としてパーフェクトだなアーク。解析すれば浄化できるのか。


「いいぞ、そのまま浄化し続けてくれ」


「面白い。では壁はどうする? この透明な板は簡単には壊れないよ」


「ライトニングジェット!」


 強化して飛ばしたクナイでも少し刺さるだけか。かなり分厚いなこれ。


「後はオレらの仕事だ。いくぜカムイ!」


「了解です!!」


 カムイが壁の弱い部分を探り出し、ヴァンと一緒に集中攻撃を加える。


「オオオオオッラアアァァ!!」


「セイヤアアアアアァァァ!!」


 やがて壁にヒビが入り始める。よしよし、流石はパワー担当。そのままぶっ壊せ。


「サカガミ! 援護を頼む!」


「了解。駆け抜けろ、ライジングウォール!」


 ザコをまとめて左右に雷の壁を作ってやる。逃げ場がなくなれば、あとはルシードが高速ですれ違いざまに斬るのみだ。


「一刀両断!」


「ナイスアシストである!」


 これでザコも壁もクリアだ。残るはオリジン唯一人。


「よくできました。素晴らしいよ。帰ったらデータを纏めないと」


「帰すつもりはないぞ」


「ご褒美だ。私が本気で戦ってあげよう」


 オリジンの体が煌めくメタルな材質へと変わっていく。白衣も髪の毛までも。


「君たちの力も取り込んで、私が機関を掌握する。そうすればオルインを管理下に置く足がかり程度にはなるだろう」


「お前の目的は何だ! オレとアークではないのか!」


「それもあるけれど、機関の間抜けな目標を守ってあげようかなって。一番強い力を持つものが、危険な力を封印して管理する。そして平和が訪れる」


 別世界に持ち込まなきゃ好きにしろと思うが、よりによってなぜオルインなのか。ひたすら迷惑である。


「オレもアークも平和を願って生まれた。その力を、お前たちのような輩にくれてやるわけにはいかん!!」


「わからないかい? 君たちを含めた百人程度が死ぬだけで、それこそ数百万の命が平和に暮らせるかもしれないんだ」


「百人も百万人も勝手に死ね。俺が助けるのは三人だけだ」


「へえ、チームメイトを信頼しているんだね。友情というやつかい」


「ん? こいつらは対象外だぞ」


「違うんですか!?」


 なぜ変な勘違いが生まれるのか。認識が甘いぞカムイ。


「お前らなんて強いんだから勝手に生きていけよ」


「言うと思ったぜ」


「説得できそうもないね。ならお喋りはここまでだ」


 オリジンが消えた。とっさに長巻と雷で防御しつつ後ろへ飛ぶ。

 両腕に衝撃が来るが、なんとか防ぎきったらしい。


「がっ……バカな」


「ルシード!」


 ルシードが装甲ごと掴み上げられていた。速い。こいつどんなスピードで動いてやがる。


「ルシードさんを離せ! 風流牙!」


「無駄だよカムイ君」


 カムイの攻撃を食らっても微動だにしない。

 オリジンの左手から放たれるエネルギー波は、逆にカムイの防御を突破して壁に叩きつけた。


「うあああぁ!!」


「アーク、バックファイア!」


「承知!」


 両手足からブーストを吹かし、オリジンの顔に吹き付けた。


「それも無駄だ。どれ、装甲のテストをしてあげるよ」


 オリジンの猛ラッシュが始まる。硬いものがぶつかる音が響き続け、アークから火花が散る。


「がはっ、うおおああぁぁ!?」


「頑丈だね。致命的な破損が見られない」


 雷速移動で背後に周り、長巻のスロット全部使って一撃を放つ。


「雷光一閃!!」


「っ……ほう、やるね。そこまで速く動けるのか」


 鋼鉄のしっぽを生やすことで攻撃をガードされた。しかも傷が浅い。そして修復が始まっている。

 鉛のようなものが溶けるように滲み出し、傷口を消していった。


「ちっ、化け物が」


「順超人クラスとでも思ってくれたまえ。君のテストもしてあげよう」


「ならオレも混ぜな! オオオオオッラッシャア!!」


 俺とヴァンが並び立ち、同時に連撃を浴びせていく。

 この時点で人間などミンチになっているはずだが、メタル装甲に加え、超人に近いというのも本当なのだろう。的確に攻撃を捌いてくる。


「カムイ! こいつ、コアとかないのか!」


「位置が動き続けています。とても微細で、丸ごと消すしかありません!」


「二の太刀、閃光!」


 ルシードも加勢してさらにハイスピードの攻防が続く。

 正直ルシードがダメなら正攻法じゃ無理だな。


「傷の治りが遅い。私のシステムすら超えるか」


「このまま押し切りましょう!」


 四人全員なら流石に有利だ。徐々にだが装甲が剥げ、内部まで同じ金属だと理解できる所まで来た。


「甘いね。勝てると思っただろう? ヌオオオオオオォォアア!!」


 オリジンが吠え、とてつもない衝撃波が弾けた。


「全員退避!!」


 それぞれ大きく飛んで回避するが、カムイを巨大なエネルギー弾の群れが囲んでいた。


「カムイ!!」


「まず一匹」


「うわああああぁぁ!!」


 大爆発を起こし、カムイの体を観客席へと叩きつけた。


「次は君だ。クリムゾンマスク」


「ライトニングジェット!」


 クナイを二本飛ばす。オリジンは横に身を捻って回避するが、ヴァンの横薙ぎの一撃で反射させる。


「爆雷フルスイング!!」


 これには防御が効かなかったのだろう。炎と雷に焼かれ、体の深くまでクナイがめり込んでいる。


「ぬううぅぅう!!」


 すかさず背後からオリジンの体に触れ、全力の電撃を流し込んだ。


「ライトニングバスター!!」


「がああぁぁ! ふざけやがって! この程度で消えるものか!!」


「そうだな。後は頼んだぜ」


 俺たちの仕事は傷口を広げ、ルシードの刃が入る隙間を作ることだ。


「うおおおおおぉぉぉ!!」


「なにぃ!?」


 胸に空いた穴へ深々と刃が刺さり、奥義が繰り出される。


「真の太刀、聖龍!!」


 オリジンから聖なる光が漏れ出し、やがて膨れ上がっていく。


「ヌオオオォオォ!! ふざけるな……ふざけるなよ! こんなことで私が消えてなるものかああああぁぁぁ!!」


 まだうるさいオリジンに、俺とヴァンの剣も突き刺さる。


「こいつでとどめだ!」


「落ちろおおおおおぉぉぉ!!」


 三人の全魔力が混ざり合い、巨大な柱となって天を撃つ。


「うううううおああああああああ!!」


 断末魔を残して消滅していった。

 同時に限界が来たようで、全員座り込む。


「ふう……マジできつかったぜ」


「終わった……のか?」


「終わってなくてももう終わり。俺は戦わないぞ」


 そして闘技場が揺れだした。


「オリジンの反応は消えていないのである! これはむしろ……」


『絶対に許さんぞ! その魔力、その技、すべて取り込んでくれるわ!!』


 どこからか声が響く。闘技場の壁が消え、床以外が完全に消滅した。


「おいおいおい、こりゃどういうことだ?」


 一箇所に何かが集まっている。それは何かとてつもなく危険なものの前触れだと感じた。


『さあ死ぬがいい下等生物!』


「バックアップ……いやあれが本体であるな」


 床から巨大なオリジンの上半身だけが生えている。

 所々の装甲は崩れ、より機械的なフォルムへと変わったが、その大きさは会場そのものより数段上だ。


『後悔する時間も与えん! ここで死ね!!』


「ルシード、これはお前の因縁だ。だから決着はお前がつけろ」


 空を埋め尽くしそうなほど巨大で、比例してか態度もでかくなってやがるな。

 こんなんやってられるかアホ。もういい。奥の手で消滅させてやる。


「わかっている。だがこれは……」


「今から俺たちがどうなろうと、どんな姿になろうと気にせず、敵のコアだけを砕け。すぐに忘れろ」


「どういう意味である?」


 これはもう壊していいだろ。本気でいくぜ。


「クリムゾン、ソニアとクラリスを呼べ。俺もやる」


「うっしゃあ! ようやくメインイベントだぜ!」


 意図が通じてよかったよ。


「ヴァン・マイウェイの名において命ずる。来てくれ! イシス! ネフティス!」


 二人が瞬間移動してヴァンの横へ。そして融合が始まる。


「うおおおおおっしゃああああ! きたぜえええええ!!」


 融合してヴァリスとなったヴァンなら、機関なんぞ楽勝だろう。

 だが借りを作るのも、オリジンを殴らずに終わるのも気に入らない。

 いつもの鍵を腕輪に差し込む。


『ヒーロー!』


「なっ……その姿は!!」


「締めは譲ってやるよ、ルシード」


 とっとと終わらせて帰らせてもらうぜ。

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