マジックアサシン決着

 マジックアサシンをあと三人倒そう。移動中に作戦会議だ。


「どうする?」


「また罠がある可能性は高いな」


「解除すると居場所を知らせることになるかもしれん」


「ならばできる限り回避するか」


 罠に感知系のトラップがあるかもしれない。俺ならそうする。対策は回避して進むことかな。


「さっきの風水ってのはできねえのか?」


「あれはざっくり言えば占いですよ?」


「興味がある。よければオレに見せてくれないだろうか」


「いいね。まだ四人一緒だ。大抵のことは対処できるだろ。俺も見たい」


「ううん……では少し見てみます」


 カムイの魔法陣が風水盤の形に変わっていく。

 これかなり独特な魔法だと思うんだけど、後で教えてもらおうかな。


「このまま南西に進むと吉。ラッキーカラーは赤」


「んじゃ燃やしとくか」


「目立つな。お前赤いんだから、そのまま先頭行け」


「なるほど」


 吉と言われた方向へ歩き出す。間もなく誰かの声が聞こえた。


「キキキキキ、見つけたぞ」


「おいどこがラッキーだ」


 金髪の男が、パイプの上からこちらを見下ろしている。


「出てきちゃっていいのかアサシン」


「もう仕掛けは終わってんだぜ。キヒヒヒヒヒ」


 またボウガンと瓦礫の群れが飛んでくる。


「いけない! 魔法で叩き落としてください!」


 言われた通りにする。何か妙な予感がしたのもあるが、それで正解だったようだ。


「これは……魔法の刃か」


「トラップに風の刃を乗せているんです。物に隠れた二枚刃ってところですね」


「流石はカムイ王子。同じ風属性ってのもあるんだろうなあ。だがどうする?」


「とっとと逃げりゃいいだけだろ」


「いや少し厳しそうだ」


 敵と反対方向にクナイを投げてみる。地面に突き刺して軽く放電させるだけ。

 そしてなぜか大爆発。


「既に囲まれているらしい。トラップだらけだ」


「頭の回るやつもいるようだねえ」


 こいつは囮みたいなもの。注意を引きつけ、残り二人がトラップで囲む。

 連携取れてんなあ。うちとは違うぜ。


「おーいカムイ。オレはここでいいのか?」


「クリムゾンさん、もう少し右にずれて、そこだと凶兆です。あと爆発してください」


「自爆指示とかオレじゃなけりゃ誤解されるぜ」


 言われてヴァンが移動し、爆発で周囲が揺れる。


「何をしている。くらえ必殺の……うおう!?」


 爆発の揺れでトラップが揺らいだのか、離れた場所でも爆発が起きる。


「おっ、スイッチ入ったか」


「おのれそんな偶然が……ぬおぉ!?」


 突然パイプが崩れ、敵が落ちてくる。すかさず攻撃魔法を撃ちまくるが、どうやら風で落下地点を変えつつ滑空できるようだ。


「逃がすか!」


 クナイを二本投げるが、敵はすぐに壁の後ろへと隠れていった。


「おっと、危ない危ない」


 クナイは壁に刺さった。声と隠れる時間からして、この壁はそれほど分厚くはないだろう。計画通りだ。


「ライトニングジェット!」


 刺さったクナイに仕込んでおいた魔法が発動。多少威力は落ちるが、壁をぶち抜き敵に当てるには十分だ。


「ぐばあぁ!?」


 これもトールさんとの修行の成果だろうか?

 ジェットはシードとは違い、潜伏させて発動させるタイプの魔法ではなかったのに。


「俺も成長してんのね」


 クナイと魔法の刃先を丸めたからだろう。致命傷にはなっていない。

 大会だからね。だがまともに立ち上がる前にヴァンが追撃をかける。


「全力ぶった斬り!!」


「ヌオアアァァ!?」


『マジックアサシン、一名戦闘不能!!』


 見えなくなるほど吹き飛ばして終了。

 これであと二人か。案外簡単に終われるかも。


「ルシード! 右である!」


「しゃべるなアーク!」


 知らん声が聞こえたと思えば、ルシードが反応していた。

 土で作られた巨大ハンマーをなんとか避けている。


「やっぱ数合わせ連中じゃダメだなあ~」


「しょうがないよ。囮にはできたでしょ」


 暗がりから二人、こちらを覗いている。

 両方銀髪で、少し顔が似ている。兄弟かも。


「君たちの能力は把握したよ」


「そうかい。ならデータを活かせず消えちまいな!」


 ヴァンの炎とルシードの光が敵を貫く。だがその姿はゆらりと消えた。

 陽炎だな。それに超スピード混ぜて撹乱しているんだ。


「狩りを始めようか」


 壁を反射して魔法の弾が飛んでくる。位置を悟られないための工夫だろう。


「フレイムダガー!」


 片方は炎使いらしい。全方位から炎の剣が襲ってくる。

 撃ち落とすか切り払うのでやっとだ。


「マスク、爆発は中止だ。煙で接近されるぞ!」


「わかってる!」


 猛スピードで接近する敵と、遠距離から大火力で押してくる敵がいる。

 速度で俺とカムイを、土のハンマーや炎で残りを潰す算段だな。


「サンダーネット!」


 とにかく敵の動きを止めてしまえばいい。


「無駄無駄。そんなものでなあ!」


 全身から風の刃を出し、拘束する糸から逃れている。

 糸の耐久力が低いことが露呈しているな。


「ルシード、上である!」


「喋るな!」


 どう考えてもルシードから二人分の声がする。

 どういうことだ。通信機でも隠し持ってんのか。


「おいそれどうなってんだ?」


「勝つために使えそうか?」


 ここで大怪我でもしたら、それこそ次で勝てなくなる。手段は使うべし。俺の鎧とヴァンの融合は除外で。


「隠すより話すべきである」


「ルシードさんそれ、鞘から声がしてません?」


「なるほどな。ギミックは鞘の方だったわけか」


「魔力と熱源反応がある。近くである。カムイ殿、六時方向より敵襲!」


 カムイの首を狙い、炎のギロチンが落ちてくるのを回避。

 本当に位置を把握できているようだな。


「あまり大声で喋るなアーク」


「アーク?」


「この鞘の名前だ」


「なるほど。よろしく願いします、アークさん」


「承知である。カムイ殿」


 ごく普通に会話できている。どういう仕組みか気になるが、今は敵の退治だ。

 全員をじりじりと消耗させる戦術だろう。

 行動範囲も狭まり、このままでは誰かが怪我をする。


「居場所はわかる。でがそれだけである。高速移動を続ける相手には、それでは足りないのである」


「奴らはオレたちの周囲を回っている。その回転を止めるか、一方向に誘導できれば、あるいは……」


「どうするカムイ。これだけ魔力の乱れた場所で、高速移動されっぱなしじゃ風水も難しいだろ」


「…………わかりました。なら僕に作戦があります」


 聞いてみると実にシンプルだが、いい作戦だ。全員納得したので行動開始。


「四の太刀! 氷源!!」


 刀から発せられる凍気によって、地面が凍り、棘が増えていく。


「サンダードライブ!」


 氷に沿って、壊すぬように電撃を走らせながら、同時に全方位にサンダーネットとクナイをばら撒いた。


「小細工で暗殺術を超える気かあ?」


「風よ、水よ、天へと舞い上がれ!」


 カムイの起こす竜巻が空へ舞い、ルシードが空中で凍らせていく。


「合体魔法! 雨天氷槍撃!!」


 巨大な氷の槍が、雨のように降り注ぐ。


「ちっ、鬱陶しい真似しやがって!!」


「サンダーシード!!」


 クナイの雷球を破裂させ、さらに舞台をかき回す。

 同時にカムイの風水で、槍の降り注がない場所を見つけて移動。

 三人で上へジャンプして、下にヴァンだけを残す。


「豪快! 円陣斬り!!」


 巨大な炎を剣に付与し、横に大きく回転斬り。


「ぬおああぁぁ!!」


「こいつ、馬鹿力め!」


 周囲は魔法が飛び交っていて、大きく動けない。

 ヴァンの一撃を防御するしかなく、必然的に動きは止まる。


「アーク、ウイングモード!」


「承知!」


 鞘がバラバラになり、ルシードの背中に羽のように取り付いた。

 光を噴射して広がるそれは、本当に翼を広げた天使のようだ。

 見ていないで俺も行くか。


「リベリオントリガー!」


 強化魔法で雷速移動だ。ルシードとは別の敵へと接近し、敵正面に俺の分身を出す。


「しまっ!?」


 気を取られているうちに背後へ周り、しっかり掴んで雷撃を流し込む。


「ライトニングバスター!!」


「ヌガアアアアアァァァ!?」


 雷の柱へ飲み込まれ、こんがりした敵の出来上がり。死んじゃいない。


「アーク、マキシマムブースト!」


 恐るべき速度で加速と急旋回を繰り返し、斬撃を浴びせ続けるルシード。

 逃げようにもセンサーは正確に敵を捉え続ける。


「決めるぞ!」


「一刀両断!!」


 剣に光が満ち、一筋の軌跡を描く。

 迷いのない、綺麗な剣筋だ。敵の防御壁をものともせず、すらりと切り崩した。


「こんな……はずが……」


『マジックアサシン、全員戦闘不能! 勝者、チームカムイ!!』


 多少の苦戦はしたが、それでも勝ちは勝ちだ。

 疲れた……今日はもう試合がない。他のチーム見たらさっさと帰って寝よう。

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