二回戦 VSマジックアサシン
俺とヴァンが勝ち、次はカムイとルシードの番なわけだが。
『勝者、チームカムイ!!』
特筆すべき点もなく、安全に勝ったよ。怪我もしなくてよかった。
今は選手席に戻り、別チームの試合を見ている。
リリアたちのところには戻れない。どうして?
『勝者! チーム古武術!!』
ファーレンスとレグルスがいるチームだ。
腕を上げているなあ……っていうかレグルスがマジで強い。
もう一人の赤い髪の男も強かった。
「あいつは?」
「オレのギルドメンバーだ。戦闘向きのやつだから気をつけろ」
ルシードの仲間らしい。どうせ強いだろうし、勝手のわかるルシードに任せたい。
『続いてチーム四剣豪VSチームモデルC! ルールは1VS1の勝ち抜き戦だ!』
「さてどうなるかね」
「順当に行けば四剣豪だろう。大手Bランクギルドだ」
「ルシード、なんかあいつこっち見てねえか?」
フードの男がこちらを、ルシードを見ている気がする。
「なんかやったのか?」
「いや、心当たりはないが……戦闘を見れば、知人かどうかは判別できる」
できるんかい。俺はできない自信があるぞ。
『では両者前へ!!』
ロングソードの騎士と、フードの男が対峙する。
『鋼鉄をも切り裂く剣豪と、謎のフード男の勝負だ! どうなるのかは腕次第! 試合スタート!!』
「ぬうん!」
剣豪が勢いよく踏み込もうとし、次の瞬間、そこ場に立っていたのはフードの男のみ。
「なにっ!!」
一撃で場外にふっ飛ばされ、気を失っている剣豪。これはどういうことだ。
「ただすっげえ速く動いたんだな」
「ああ、高速で近づいて殴ったんだ」
「恐ろしいスピードとパワーです……」
『おおっとこれは予想外!! 強い強すぎるぞタイプC3! どうなってんだああぁぁ!!』
静まり返る会場に、司会者の声だけが響く。圧倒的だ。
そこからの三試合も、そのままC3という男が一撃で勝ち抜いていった。
『チームモデルCの勝利! 圧勝だあああぁぁ!!』
「音速の六千倍は出ている。しかも本気じゃないな」
「当たりたくねえチームだ」
幸いにも俺たちが当たるとしたら三回戦だ。それまでに負けていてくれたらいいのよ。誰か頑張って倒してね。
『これで一回戦はすべて終了だ! 三十分休憩したら次だ。今日はそれだけで終わり!』
総勢十八チームの試合が終わる。長かったな。今のうちに警戒するべき相手をまとめよう。
「どう見る? オレはモデルCがやばいと思う」
「同感だ。ギルドメンバーだというひいき目はあるが、古武術も危険だ」
「そこらへんだな。あとは次に当たるマジックアサシンをどうするかだ」
言っていたら舞台がせり上がり、よくわからん壁やパイプ? が伸びる場所に変わる。舞台の中央しか使っていなかったが、めっちゃ広いのよねここ。
ちょっとした工業地帯が出来上がった。
『よっしゃ準備完了だ!! 二回戦の一発目は、入り組んだ地形でのチーム戦だぜ!』
「これ敵ガン有利だろ」
「あいつら暗殺技術に長けているはずだよな?」
「ううん……父もそこまで僕に試練は出さないと……思いたいです」
おやあ? これ勝てないよね? なぜに一方的に不利だ。
『四人全員参加だから、作戦は様々だぜ。開始まで十分の作戦タイムをやる。その後舞台に上がってもらうぞ!』
「こりゃ別々に動かねえ方がいいぜ」
「そうなると誰が指揮官をやる? ここにいるのは全員ギルマスなどで上に立つものだろう?」
少々の沈黙。俺は当然だが無理。他のやつならカムイかな。
「すまないがオレは辞退したい。作戦は別の者が立てることが多くてな。どうやら化かし合いで有利にはなれんらしい」
「オレは好き勝手してるほうが性に合ってんだよな……うーん……アジュやるか? お前さん得意そうだし」
「サカガミさんの推理力と洞察力ならきっと……」
「無理だな。これはガチめの理由がある」
まさか俺に来るとは思わなかったが、これは本当に無理。弱音じゃない。
「聞かせてくれ」
「全員の全力と性格を知らん。何より忠誠心とでもいうのかね。完全に命令に従えない。遂行できないと言うべきか」
「一度決めた指揮官に逆らうような真似はしない。武士道に反する行為だ」
「オレもさ」
「僕もです!」
これ本当に無理だな。問題の根っこが伝わっていない。
「そういう問題じゃないんだよ……例えばだ、俺が囮になって死ねと言ったら死ねるか?」
急に言われて数秒沈黙。それを破ったのはカムイだった。
「それが……勝利に必要であれば!!」
「はいダメ」
「えっ、ダメなんですか!?」
「完全にダメ。最終的に死ぬことを本来の俺は求めていない。死ぬのはお前の判断ミス」
「僕の!?」
「だろうな。オレもそこまではわかるぜ」
ヴァンだけは少し理解している。ルシードは頭に疑問符が出ている気がした。
「極端な話、命令無視してでも俺の理想の形で、四人全員が勝利して生還する。ただし命令には従う。これが大前提なんだよ」
「よくわかりません」
「完璧にこなすだけじゃない。俺を理解し、不快にさせず喜ばせたいという、奉仕に近い心があって初めて成立する」
ただのチームメイトは絶対にこれができない。
使い捨てていい命なら別だが、こいつらは有能かつ善人寄りっぽい。貴重なのでちゃんと生きろ。
「あいつらはそれを理解して『俺が望む』120点を出し続ける。これは覚悟とかじゃない。俺への理解度だ。それ込みでの指示なんだよ」
「よくわかんねえが、ぜってえ無理だわ」
「同感だ。できないと言う者に無理をさせるべきではない。それがしっかりした理由であるのなら余計にな」
「ってわけでカムイ、王様になるんだろ? 俺たちくらい使いこなせ」
結局これが最適解だ。こいつに王としての素質があるのなら、人を率いる立場になる。本人の性格上、無理な要求もしないだろうし、まあ安全だよ。
「これも修行だ、カムイ。オレは君の指示に従うぞ」
「難しけりゃ、オレに全員ぶっ倒してこいって言えばいいんだよ」
数分悩んでいるようだが、時間は過ぎていく。それを理解してか、顔を上げ、決意を込めた目で言った。
「…………わかりました。僕、やってみます!!」
「よし、ならまず全員ができることから……」
そして時間が来た。作戦は悪くない。あとはこれがどう出るか。
『さあ始めていこうか! 両チーム舞台へ!!』
改めて広すぎる舞台だ。鉄塔やらパイプの海だな。敵どころか舞台中央すら見えない。
『隠密戦で実況はいけねえ。脱落者の発表しかしないから、気をつけな。レディ……ゴー!!』
「行きます!」
一斉に走り出す。こういう場合のセオリーは複数あるが、今回は四人で動く。
陣形はヴァンが前。俺が左でルシードが右。俺たちに守られるように中央にカムイ。ちょうど三角形の陣だ。
「このくらいの距離なら、僕の水が繋がります。適切な距離を意識しながらお願いしますね」
「了解」
カムイが水の紐を俺たちにつなげている。何かあればすぐに気づけるはずだ。
このまま外回りで中央を観察しつつ、敵の開始位置に行く。
誰かがそこを合流地点としている可能性はある。
「やはりな。塔のように見えて中は埋まっている。建物の中で戦うことは想定されていない」
あくまでも見栄えをよくしつつ、俺たちに制限をかけるためか。
「このまま隠れて行きましょう。四対一を続けていけば勝てます」
「了解だ」
迅速に移動を続けると、四方から何かが飛来する。
「壁を背にして回避!」
炎の矢が石や土とともに飛んでくる。
下手に打ち合うのは場所を知らせるだけだ。攻撃の条件がわからない以上、無闇な戦闘は避けよう。
「見つかったのか?」
「まだわからんぜ。自動トラップかもしれねえ」
「音で感づかれるだろう」
「この場を急いで離脱します」
巨大な火球が塔にぶつかり、こちらへ瓦礫が降ってくる。
「逃げろ!」
逃げようとしても、退路すべてを塞ぐように攻撃が飛んでくる。
防御と回避でぎりぎりだぞ。
「こりゃ見えてやがるな」
「どこからだ? こう火の玉が多くては、こちらの視界もままならんぞ」
「サンダースプラッシュ!」
近くにいるのなら、電撃の霧で探知する。
「一撃あてて、煙の中を逃げます。適当に攻撃したら、僕のあとに付いてきてください!」
「了解!」
探知完了。いいだろう。どうせならこの状況を招いたやつにぶちかます。
「ライトニングフラッシュ!!」
「ぶっ飛べオラアァ!!」
「二の太刀、閃光!!」
「風流牙!!」
全員同じ方向にぶっ放した。その先には、耐火服を着込んだ男が飛んでいる。
服のおかげで炎の中を移動していたらしい。
「おや?」
「ん?」
「バカな!! なぜわかった!!」
四人同時攻撃には耐えられないらしく、ファイアボールの群れを突っ切って敵にぶち当たる。
「教えると思うかい?」
「オレには特殊なレーダーがある」
「んなもん勘だよ」
「風水的にそちらがいいかなと」
「納得いくかあぁぁ!!」
豪快にぶっ飛んでいった。ありゃ場外まで行くな。
俺たちもさっさと離れよう。
『マジックアサシン、一名戦闘不能!!』
これで一人撃破。この調子で残り三人はしんどそうだな。
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