ゴーレム退治と素材ゲット
長巻の材料を取りに来たら、案の定面倒な敵がいた。
見た目は泥人形。硬さは鉄以上のゴーレムを倒そう。
「まだまだ出てきやがる」
「ラブレイン!」
上空にあったピンクの光が、敵へと雨になって降り注ぐ。
「これで多少は減るだろう」
「ここまでやって多少かよ」
「それだけあの鉱石のパワーがすごいってことさ。だからうちらが材料に選んだんだ」
武器の出来上がりに期待でもしようかね。
とりあえず動きを封じてみよう。
「サンダーネット!」
電撃の糸を蜘蛛の巣のようにして飛ばす。
やはり引きちぎられる。予想はしていたが、生物相手じゃないと効果薄いな。
土の塊に神経とか無いし。
「一点突破で砕くしかないね。バーニングバンカー!」
ホノリの両腕についたパイルバンカーで、ゴーレムに二つの穴が開く。
あれくらい一点突破しないと無理ってことか。
「やってみるか……せい!」
クナイを一本持ち、雷のジェット噴射をつけて投げてみる。
半分くらいまで刺さったが、動きが止まったわけではない。
「サンダーフロウ!」
市販のカトラスを装備。今度は折れないように雷コーティングだ。
クナイにはサンダーシードもかけてある。
弾ける雷球を確認し、傷口に剣を突き入れた。
「雷光一閃!」
見事内部から爆裂。突き刺しているのに一閃なのは言ってはいけない。
実際使えているからいいのだ。
「手間かかるわボケ!」
「もう少しペース配分を考えるのじゃ。おぬしは魔法のコントロールはできるじゃろ。あとはスタミナとの折り合いじゃ」
「じゃあうちらは見守るから」
「がんばれー」
「戦えや!」
「ボスは主役に譲るさ。これもまた愛だ」
新しく巨大なゴーレムが現れた。
下半身が四本脚。上半身は人型ブリキのおもちゃ。
「こんなもん譲られても困るわ」
「オレとアジュでやっておくか」
「非戦闘員を駆り出すんじゃない」
「おぬしの武器収集じゃろ」
「わかっているさ。しょうがない。リベリオントリガー!」
しょうがないので真面目に本気出す。でもあれどうするんだ?
市販の武器が初心者用なのもあって、間違いなく折れるぞ。
「ほう、やはり魔法が豊富か。面白いぞ我が友よ!」
「よくわからんが……オレを救った者が、あの程度のザコに遅れを取るとは思えん」
「あれはちょいと限定的な強さでね」
「ほらほら来るよー。がんばってあじゅにゃん」
またゴーレムの両腕が飛んでくる。それずるいって。
「ライジングナックル!!」
両手を雷化して巨大化させ、ロケットパンチにぶつけてやる。
なんとか砕けるようだな。
ここで止まらず、右足を杭にして突く。
「パイル!」
だが本体は硬い。ならば螺旋状にして掘り進んでやろう。
「ドリル!」
いつものパターンだ。ガリガリ削れているし、このまま傷を広げていこう。
「面妖な……」
「こんな隠し玉があるか……面白い男よ」
これじゃ致命傷にはならんらしい。やつの目からビームの雨が降る。
「ええい邪魔くさい」
雷速移動で逃げ回っちゃいるが、威力の低い攻撃じゃ、形勢を変えるのは厳しいだろう。
一旦着地。渋々だが集中して両手に魔力を乗せる。必殺技で一気にいこう。
「プラズマ……速い速い!?」
異常な速度で接近してくる。
反射的に上空へと移動。上を見上げたゴーレムの目から、本日最大のビームが放たれた。
「プラズマイレイザー!!」
なんとか間に合った。ビームとビームのぶつかりあいだ。
じわじわだが押せている。けど魔力消費が馬鹿にならん。
「少年漫画みたいじゃのう」
「ああいうのあるよねー」
「愛を持って挑むのだ! さすれば勝利を得るだろう!」
外野が何か言っているが、気にしている場合でもないか。
リベトリ形態とプラズマイレイザーの同時かつ長期使用ってしんどいな。
「シリウス、なんとかできるか?」
「オレはあくまで災厄の王子。雨風や病気はゴーレムには効かん」
「おいおいマジか」
「だからこうすることしかできん」
音速を超えて敵の足元へ。独特の歩法から繰り出される肘打ち。
「ヌウゥン!!」
そのとてつもない衝撃は、見事に敵の後ろ足二本をへし折った。
「シヤアアァァ!!」
ぐらつくゴーレムの前に滑り込み、強烈な前蹴りで天を向かせた。
なんというパワー。この世界の王族のポテンシャルどうなってんのさ。
「今だ!!」
「よしっ、最大出力!!」
ビームの軌道が俺から逸れ、やがて威力を失っていく。
そこを狙い、本体へと全魔力を開放して押し込んだ。
「おおおりゃああぁぁぁ!!」
着弾を確認。確かな手応えとともに、ゴーレムは大爆発し、その姿を消した。
「はあ……きっつ」
「よくやったのじゃ」
「奇跡的に崩落もなかったな」
「ここ頑丈だからねー」
どうやらもうゴーレムは出ないらしい。休憩したいところだが、さっさと材料確保しよう。神殿に戻る。
「やはりできるな。強いではないか」
「そうか? このくらいなら珍しくもないだろ?」
「いや、立派であったぞ」
わからん。まずリリアがここにいる誰よりも圧倒的に強い。
俺は全力ももっちに勝てるか不明なんだから、やはり普通の範疇じゃないのかね。
「よし、この山から取ればいいんだな?」
祭壇の奥にある、青白い鉱石で出来た、壁というか山というか……とにかくそこから削るのだ。
「うむ、できれば欠片ではなく、大きめに、されど規定量を超えぬようにじゃな」
「そのためにホノリがいる」
「任せな。こういうのは慣れている。といっても……かなりの硬度だね。ガリガリ削っちゃ、質が落ちるか日が暮れるか」
『ソード』
「これ使え」
この剣なら切れぬものはない。バターよりもするっと切れるぜ。
「ありがと、少し借りるね……相変わらず軽すぎるなこれ」
「その剣で戦っちゃダメなの?」
「一切修行にならんぞ」
「神話生物以外には禁止じゃな」
何でも切れるし、圧倒的に軽い。そして壊れない。
完全に上達を阻害する。よって通常戦闘では使わないのだ。
「おおぉぉぉ……っと……よし切れた」
アイスを丸く取るやつみたいなくり抜かれ方をしている壁。
切れ味がおかしい。鉱石の切れ方じゃないな。
「一切抵抗がなかったよ。これは危ない」
「だろうな。またゴーレムが出ないうちに退散だ」
洞窟から出て、入り口で手続きを終えたら商店街へ。
適当な店で休憩を取る。
「材料はもう少しだね。これなら試験にも間に合うよ」
「試験?」
「もうすぐ期末試験だからねー」
「もうそんな時期か」
そういや期末試験まだだった。
最初に中間試験があったせいで忘れていたよ。
「何かあれば我らも協力するぞ」
「いやいい。そっちはそっちの都合もあるだろう。俺たちに深入りすべきじゃないさ」
「そうか。何かあれば遠慮せず言ってくれ」
どうせ勇者科の試験は特殊だ。凄まじく面倒なことになる。
ならば俺も多少は準備すべきか。
「やるとしたら……」
「魔法の修行じゃな」
「最近訓練したばっかだろ」
モッケイのおかげか、レパートリーも増えた。
魔法は面白いが、そろそろできることが限られてきそう。
「あの無茶な形態はなんなのだ?」
「どれだよ?」
「青く光るものと、腕が飛んだり伸びたり……どうやっている?」
「全身を魔力と雷で染める……でいいのか?」
「そこ曖昧なの?」
最初は色々と考えていたはず。だがもう感覚でできるし、危険ならリリアが止めるだろう。安全に使えているので、もうできることに疑問はない。
「理屈十割でできるものじゃなくてな」
「かなりの荒業に思えるが、なぜそんな発想になった?」
「簡単に言えば横着だ」
これは俺の後ろ向きな発想から来ている。
やっていることは危険だろうし、そういう博打も好きじゃないが、あの時は状況が状況だったからな。
「よくあるだろ。達人超人が、頭より体が早く動くっていうか、感じた時には動き終わっているやつ」
「一流の超人が言うあれだね」
「そうだ。普通は五感とか、脳が考えたりとかして、それが体を伝わって動く。だから本能とか経験から自然に動くタイプには速度で劣る」
「そこで、できれば努力をせず、戦闘センスや経験がなくとも、似たような結果が出せる方法を編み出したわけじゃ」
「全身を魔力でまとめて、全行程を全身で行えるようにしたんだよ。そうすりゃ伝達もなにもない」
「横着もそこまでいけば誇れるものだな」
正直武道家みたいな真似はできんからな。
できるようになるには、相当の修行がいる。めんどい。
っていうかその時間を魔法にあてたい。
「まあそんな感じだよ。やったらできた」
「発想がずれているのにレベルが高いな」
「普通は修行する方がむしろ楽なのだ。どうやってもできんものはできん」
「そこは個人の得意不得意だろう」
個性とかセンスとか才能とか、まあそういう方向だろう。
別の長所でも伸ばせばいい。
「とはいえ、俺も武器が完成次第、扱いに慣れないとな」
「うちらの試験が何になるかだねえ」
「備えだけはしておくべきじゃな」
「我らも応援しているぞ。必ず突破できよう」
結論は一つ。試験に備えて準備しよう。
単純だが、やることがはっきりしているうちはそれでいい。
「やるだけやってみるさ」
まずは武器だ。そろそろ完成させないとな。
そんな話をして、その場は解散になった。
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