金の延べ棒とガーディアン
ヤマトの王子二人がパーティーに加わった。
「どうしてこうなった」
「安心しろ。アジュとリリアの愛を邪魔することはない。そういえば……そちらはアジュの身内に入ったのか?」
「うちらかい? まあ知り合いだよ。恋人だのハーレムだのに入る気はないよ」
「同じく! 命がいくつあっても足りない気がするぜい」
「賢明な判断だ。正直これ以上弱点は増やせない」
余計なやつを増やさないでくれ。俺の平穏を乱すな。
「弱点? 恋人ではないにしろ、リリアらは大切な存在ではないのか?」
「仲間を増やすやつってのは、弱点ぶら下げて歩いているアホなんだよ。知り合いだの家族だのは、できる限りゼロがいい。そいつらを狙われるとうざいだろ。俺なら敵の大切な存在から潰す」
「なるほど、大局を見据えているのだな」
「ただ拗らせておるだけじゃろ」
「だろうねえ」
家族とか恋人がいるくせに、他人に喧嘩売るアホの神経がわからん。
そいつらから殺せば面白いことになるだろ。
「それほそれとしてだ……オレも今後は王族としての振る舞いが必要になる。やはり延べ棒は必要ではないか?」
「まだ延べ棒気にしてたんかい!!」
「ゲンジの言うことにも一理あるのではと」
「ねえよ。1ミクロンもねえよ。金目の物から離れろ。そういうので釣っても、結局大事な場面で役には立たないんだよ」
どうせ金で雇ったやつというのは、金で使える範囲でしか動かないし、動かせない。正直最終決戦とかに連れて行くものじゃない。
「助力が欲しければ、もっと真摯に願うことだな。我もそうしている。金の切れ目に繋がり続ける縁。そのためには金品では心もとないだろう?」
「知っているぞ。菓子折りというものを持っていくのだな?」
「惜しいけど違うのじゃ」
マジなのかボケなのか判別つかないぞ。
歩きながらの会話に、中身を求めるのも違うかもしれんが、これはまた面倒な気がするぜ。
「嘘偽りのない気持ちを届けるのだ、我が兄よ」
「そうだよー。結局大切なのは気持ちなんだぜい、お兄さん」
「誠意を込めるのじゃ」
「クックック、オレとて世間知らずのお坊ちゃんではない。ちゃんと知っているぞ。小判という金塊のようなものを入れる、山吹色のお菓子という存在をな!!」
「どんな誠意伝えようとしてんだああぁぁ!!」
こいつどんな知識の偏り方してやがるんだよ。誰だよ変なこと吹き込んだの。
「違うのか? これをお代官様という存在と交換するという、スイーツパーリィーがあると聞いたぞ」
「誰からだよ! それ結局金だろうが! 金で解決しようという根本が治ってないだろうが!」
「違ったか。フウマの忍より、そういう連中の所に忍者は行くのだと……」
「それ悪人が成敗されてるだけ! ただの賄賂なんだよ! 悪代官斬りに行ってんだよそれ!!」
「なんと! それはいかんな」
素で驚いているっぽい。えぇ……もうこいつどういうことなの。
「ふっ、これも城に隔離され、復讐を誓いながら山ごもりしていた弊害か」
「急に重い過去出してくんなや!!」
「これ、うちら聞いちゃっていい話題なの?」
「国家機密聞いちゃってない? あじゅにゃんのせいにしていい?」
「なんで俺だ!?」
ホノリとももっちが引いている。
完全に俺たちから距離を取って、聞いていないアピールが始まろうとしていた。
「すまない、オレが城が爆破された時、命からがら逃げ出さなければ、こんなことには……」
「お前どういう心理状態!? 誰に何を伝えようとしてその話してんの!?」
「安心しろ。ヤマトではもう、なんかイベントでした的な雰囲気でいこうという空気ができ始めている」
「本当に大丈夫かお前の国!? そんな感じでクーデターっぽいもん処理していいわけ!?」
「くっ……オレが凶兆の王子として、城に攻め込んで復讐など企てなければ!」
「それは本当にお前のせいだろうがああぁぁ!!」
なんなのこの疲労は。戦闘ゼロなのに俺すげえ疲れるんだけど。
どうして俺は疲れているの。
「おっと、どうやらこの奥らしいな」
「話しているうちについたのじゃ」
奥に到着したらしい。遺跡というよりは神殿だろうか。
手入れが行き届いているのか、どうにも壁が綺麗だ。
巨大な祭壇のような場所に、これまた巨大な鉱石の山ができていた。
「地中より出ている部分だけでこれだ。しかも土地の魔力を吸って、尽きる様子も見せん」
「ここから水色の透き通った鉱石だけを抽出するのじゃ」
「俺休んでいていい? 疲労がすげえわ」
「歩くペースが早かったか?」
「歩くペースよりボケのペースの方が早かっただろうが」
壁が、いや部屋そのものが輝き出す。
魔力が循環し、ひび割れる音がしたと思えば、青く光る鉱石の欠片が床に落ちる。
「来るぞ」
水のように床へ吸い込まれ。人を真似たブリキのおもちゃみたいなゴーレムが現れた。
「あれがガーディアンか」
「気をつけるのじゃ。前のより強敵じゃ」
3メートルくらいか、土と壁の混ざったタイプで、胸のあたりが輝いている。
「弱点丸出しか。サンダースマッシャー!」
ゴーレムの下半身が床へと吸い込まれ、俺の魔法を回避する。
そのまま両腕からビームまで出してきやがった。
「おいおいどういうタイプだこいつ」
この程度なら見てから避けられる。しかし妙な敵だ。
ゴーレムなのに硬いイメージってよりは泥だなこれは。
「硬度を変えてくるんだよ。一度溶け込んだら、同じ材質のものなら泥人形みたいにこねては組み替えられる」
「じゃから足元注意じゃ」
俺たちの足元が波紋のように揺れている。
嫌な予感がする。とっさに全員で後方へと飛び退いた。
「なるほど、こいつは面倒だ」
床や壁と同じ材料だろう。巨大な腕が二本、俺たちを捕まえようと伸びていた。
「ここは中級者向け採掘エリア。出てくる敵も強敵ということだ」
「そうか、中級者エリアともなると、でかいパンチが飛んでくるんだな」
完全に独立してパンチが飛んできている。
お前そういうのロボット以外がやるなや。
「ホノリ、ももっち、片方任せる。合わせろヒカル」
「よかろう、ラブバスター!」
「ライトニングフラッシュ!」
いける。攻撃魔法で消せるらしい。
もう片方も物理攻撃で粉々になっているし、勝てない相手じゃないっぽいぞ。
「これコアとかどこにあるんだ?」
「本体は地中じゃな。ゴーレムが存在するだけでエネルギーを使っておる。空っぽになれば石ごと消滅するのじゃ」
「持久戦かよ……」
祭壇から離れ、天井から陽の光が差し込む、開けた場所へ移動。
「よし、ここなら作りが違う」
そしてどばーっと床に泥がぶちまけられ、そこからぞろぞろ湧いてくるゴーレム。
「人海戦術というものだな」
「あるのかどうかもわからん頭使いやがって」
一斉にロケットパンチ開始。いやだからそれロボがやることだよね。
「お前ら手伝え! ライトニングフラッシュ!」
「うむ、さくさくいくのじゃ」
「火遁、フレイム炎蛇!」
「ラブサイクロン!」
数だけなら蹴散らせる。それほどの驚異ではない。
「オレも少しは働くか」
独特の流れるような歩法により、残像を作りながらゴーレムを殴り抜けていく。
シリウスは武術寄りなんだっけか。かなりの練度だ。
「そろそろ学習し始める頃合いだ。気をつけなよ」
「学習?」
ゴーレムの形が変わっていく。2メートルほどの人型に近く、腕を武器に変えている。
ブリキのおもちゃから、近代的なスタイルのロボに変わった感じ。
「より人間に適応した個体になる」
「どこまでも面倒な……」
スピードも上がっているようだ。対応できないレベルではないことが救いか。
「雷光一閃!」
ぶった切ればいいだけだ。だが予想に反して硬い。泥のようなのに。
っていうか普通のカトラス欠けたぞ。
「硬度が変わらんまま、泥に変えて、それを人型にしておるのじゃな」
「可能なのか?」
「いまさらじゃろ。そういうことができる世界なんじゃよ」
オルインだし、異世界だし、しょうがないね。
むしろその程度はしてくるか。
考えていたら、少し先に大きな壁が出現。
そこから巨大な手がどんどん飛んでくる。
「爆砕!」
「ラブブレイク!!」
ホノリとヒカルの火力で押していくが、これ数が多すぎるだろ。
「戦闘しつつスタミナも鍛えるのじゃ」
「それが狙いか」
こんなところで時間を使いすぎるのも気に入らない。
なんとか手早く終わらせよう。
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