異世界美少女達よ、ぼっちだった俺を攻略できるもんならやってみろ～最強無敵の力はハーレムラブコメに使うらしい～

長巻と討伐クエスト

　フウマの武器を扱っていて、ホノリの知っている武器屋に到着。

　かなり大きな建物で、西洋風の白い壁と大きな赤い屋根だ。

「よくまあ都合のいい店があったな」

「フルムーン関係だよ。フウマは同盟国だから、特別にいいものが並ぶんだ」

「なるほどねえ」

　フルムーンの鍛冶技術は世界でも最上位クラスだ。

　鍛冶の神であるヘファイさんもいるし、独自技術に加えてフウマの武器も入る。

　改めて世界三大国家という規模のでかさを知るのであった。

「いらっしゃいませ。おや、リウス様」

　品のある笑顔で店員さんが迎えてくれる。

「今日はお客だよ。こいつの武器を探してる」

　内装も綺麗で、嫌味にならない程度に豪華だ。

　結構な高級店なのかも。

「リウス様が男性を……内緒にしておきますね」

「いやいや違うから。私とこいつはそういうんじゃないよ」

「ただの知り合いです」

　困っているみたいなので、しっかり否定しておく。

　ホノリにはこれから武器を選んでもらうのに、迷惑かけるべきではない。

「武器はこっちで見るからいいよ。私なら場所もわかる」

「失礼いたしました。ではごゆっくり」

　店員さんは去っていった。どうも知り合いっぽい対応だったな。

「知り合いか？」

「うちの武器を取り扱っている関係でね。まあ顔見知りさ。さあこっちだよ」

　広いスペースに武器がずらっと並んでいる。

「ここはフルムーンで広く流通しているものだね。スタンダードに強いものが多いよ」

「これはこれはシルフィ様。武具をお求めですか？」

　別の店員さんだ。ダンディなおじさま。

「わたしの武器ではありません。彼に合う剣を探しに来ました」

「かしこまりました」

「フウマの武器がわかる店員はいますか？」

「私にお任せください」

　さらにダンディズム溢れるおじさん登場。

　おじさんしか採用していないのかこの店。

「お初にお目にかかります、お館様」

「どうも、それ秘密にしといてください」

　やはり関係者と会ってしまう。

　王族と一緒にいると、このくだりをめっちゃやるのだ。

　仕方ないね。おとなしく武器選ぼう。

「失礼。本日はサカガミ様の武器ですな」

「ではまず普通の刀とロングソードからいくのじゃ」

　ごく普通のものから持ってみる。

　重くも軽くもない。普通だが、これならカトラスが上。

　というかあれ相当いい武器だったなあ。

「なんか違う……」

「次は短めの槍だよ。長過ぎなければいけない？」

　シルフィおすすめを持ってみる。

　取り回しは楽そう。けれど刃が先端にしか無いのが不安。

「やっぱり違うな」

「あの子たちがおすすめしていた、ショーテルとククリがこれよ」

　長くて曲がっていて、どうも力の入れどころがわからん。

　変に引っかかりそうで怖いな。

「ククリは……重心が偏っちまうな。これ独自の戦闘スタイルが必要だろ」

　取り回しは悪くないが、ちょっと先端に重さが偏る。均等だといいのかも。

「こちらが忍者刀。そして長巻です」

　忍者刀は刀身が四角に近い。弧を描く刀とは違う作りだ。

　長巻は刃と柄が長い。

「おー……結構長いな」

「長さの調節はできるわ」

「では試し斬りの場へどうぞ」

　広い場所に巻き藁や木人形。鉄板なんかが置いてある。

　遠くで丸太斬っている人がいるなあ。

「フウマ製の長巻は大太刀よりも短く、刀より長いものが普通よ。忍者刀は刃が太くて、折れにくく足場にもできる作りよ」

　長巻を剣のように構えてみた。

　重心のとり方が違うな。柄が長いから、正面に向けて構えると邪魔になる。

「柄を後ろに回す感じじゃ」

「片手で構えて、体ごと動くのよ」

　柄の中心くらいを掴み、横に一回転して巻き藁を切る。

　すんなり切れるが、動きが大きいし、隙もでかいな。

「次に両手持ちで振り下ろすのじゃ」

　言われるままにやってみる。勢いもつくけれど、これも大振りだ。

「持ち直すのに時間かかるな」

「カトラスも使ってみるのじゃ」

　言われて手渡されて即実行。長巻で一回振る間に三回は振れる。

「速度ではこっちが上か」

　だが手に馴染まない。今までできていた戦法が、ワンテンポ遅れる。

　これは致命的だ。悪い方に矯正される可能性もあるぞ。

「次は忍者刀よ」

　こっちは振りやすい。適度な重さ。切れ味もある。

　長巻の威力と忍者刀の振りやすさを、なんとか両立できんもんかね。

「悪くない。けどあのカトラスでいい」

「あれは自信作だよ。私だけで作ったわけでもないし」

「よし、とりあえず忍者刀とカトラスと長巻の安いやつ使いつつ、イメージを固める」

　俺の手持ちで買えるものを数本買おう。もちろん安物である。お金は節約しましょう。本命は作ってもらうし。

「アジュ、先に言っとく。私は長巻作れないぞ」

「…………ん？」

「いやいやフウマの技術は真似できないんだよ。無理。作業工程がデリケートかつ謎が多いんだ」

　そうだっけ。ならどうしようもない。つまり商品内で選ぶしか無いのか。

「サカガミ様、長巻はフウマであれば作れます。特別なオーダーも別料金で承っておりますので」

「おぉ、それはありがたい」

　希望が見えてきた。さらに長巻をお試しで使わせてもらい、感覚を掴む。

「よっ、は、せい！」

　近距離での乱打についていけるくらいがいいか。

　長すぎると懐に潜り込まれての対処が遅れる。

「刃は普通の刀よりちょい長めでお願いします。柄は普通の倍くらいか？」

「なるほど。スロットはどこにつけるつもりじゃ？」

　刀は細身だからな。ちょい太くしても、そこにつけたら強度が落ちそう。

「いっそ鍔の部分か柄の後ろにつけるか？」

「いいかもしれないわ」

「おぬしの好きそうなギミック入れておくのじゃ」

「強度が減るだろ」

「そこはフウマの技術と素材次第ですな」

　いいね。凄いやつができそうだ。今のうちに感覚をものにしよう。

「ホノリ、カトラスの素材で刀作れるか」

「そこもフウマと相談だね」

「わかった」

　試し切り終わり。あとは具体的な構造の相談に入る。

「とりあえず安物でよいから、長巻何本か買っておくのじゃ」

「本物ができるまで、それで練習しようね」

「鞘も別のものになるわね」

「そうか、こいつはずっと一緒だったからなあ……」

　さすがに愛着も湧く。何かで使ってやりゃいいのかもしれないが。

「普通に改良カトラスの鞘にすりゃいいんじゃないかい？」

「獲物が一本しかないのが欠点じゃ。予備くらいあってもよいじゃろ」

「それもそうか」

　そんなわけで買い物終わり。

　フウマの職人さんとホノリで、材料や製造について話し合う。

　俺とリリアの意見も入れてもらった。

「そういやももっちどこ行った？」

　店に入った時点でどっかいなくなったな。

「刀の修復を相談してる。往生際の悪いやつだ」

「折った俺が言うのもなんだが、よく妖刀が折れたな」

「元々の手入れ不足と、年季が入った使い込みっぷりだったからね。ありゃ放置してたね」

「そんな理由かい」

「それでも折れるだけ凄いと思うよ」

　成長しているってことなんだろうか。

　実感がわかない環境だな……素直に喜んでおけばいいのかな。

「おぬしの第一課題は武器に慣れることじゃ」

「よーし、これから討伐クエスト行ってみよう！」

「マジか。新武器どうすんだよ」

「悪い。数日で完成するものじゃない」

「こればかりは慎重になりませんと。ちなみにお値段こちらでございます」

　結構な値段だな。カジノの貯金がなくても、ドラゴングッズ売れば余裕で買える額だが、そうかもうそういう値段のものになるのか。

「数百万とかじゃなくて助かった……」

「お館様割引でも作りますか？」

「そういうのは結構です。しこりが残りそうだし、なんか嫌なんで」

「かしこまりました。ではフウマの鍛冶屋と相談し、具体的な図面を作ります」

「材料とか雷を通す技術はこっちでやっておくよ。技術提携は面白そうだし」

「頼むよ。正直俺にはさっぱりだ」

　そうなると、俺の課題は武器に慣れること一本だな。

「ご武運、お祈りしております」

「さっさと慣れてきな。せっかく作ったのに使えませんじゃ、うちらもがっかりだ」

「わかったよ。そっちもよろしくな」

　そして適当な討伐クエストを探し、現地へと向かった俺たち四人。

「はい、船の上に来ました！」

「どうして？」

　率直な疑問が口から飛び出した。なんで海？　俺にどうしろと？

　なんか大きな船の甲板にいる。他にも離れた位置に生徒がいるよ。

　人数多めのクエだからねこれ。

「これからの季節に発生する、魚介系の敵を倒してもらうのじゃ」

「まず普通の敵で慣らさないか？」

　俺は普通の長巻装備だ。そんな特殊なやつが倒せるのかね。

「試し切りで止まったものを切る練習はしたじゃろ」

「次は素早く動くものを捉える練習よ」

「どうしても攻撃が大振りになっちゃうからねー。ぱぱっと取り回せる訓練です！」

　一応コンセプトがあってのことらしい。でもかなり暴挙じゃないかな。

「今回倒すのは、ダツ三身じゃ」

「だつさんしん？」

　また聞いたことのない敵だよ。

「ダツという海から飛び出す、先端の尖った危険な魚がおる。漁師さんとかが本当に危険な目にあうやつじゃ」

「それが大きくなり、魔に魅入られてしまい、猛烈な速さで左右に動くの。まるで三匹に分身しているかのようだから、ダツ三身よ」

「コメントができねえよ」

「まず奴らが寄ってくる光を、この玉から出す」

　甲板から浮いて光る玉を持ってきた。魔力を流すと光るらしい。

「魔力でオンオフができるのじゃ。あとは船のはじっこから少し離れておぬしらが待機。その後ろで光らせる。念の為結界を張って、後方で戦っている者には届かないようにしてじゃ」

　逆側では別のチームが準備している。

　俺たちとは二十メートル以上は距離があるな。

「三人一組くらいで、三匹を分身ごと切るのが確実じゃ」

「なるほど。やってみるか」

「水場じゃから魔法は禁止。欲しければ少し食材として分けてもらえるのじゃ」

「晩飯も確保できるな」

『それではみなさん、作業開始してください！！』

　監督官から合図が出た。一斉に玉を光らせ武器を構える。

「よし、なんとかやってやろう」

　実戦でどこまでできるか試してやるぜ。