よくわからん催しが開催されそうです

 バーベキューして数日後。

 領地から帰り、のんびりと学園で過ごしていた。

 魔法の研究もしたいし、そろそろ依頼も受けないとな。


「いいのあった?」


「数だけはあるが……」


 シルフィとクエスト見つけに来ているが、どうも俺に向いていない。

 依頼自体は多いし、クエストセンターには人も多い。

 ちまちま探せば見つかりそうだな。


「護衛とか、技術系が多いな」


「期末テスト対策じゃない?」


「なるほど。普通はこれからか」


 勇者科がアドリブで期末試験やっただけで、本来はこれからだったな。

 みんな素材集めや提出品作成とかで忙しいのね。


「興味ある科とかないの?」


「魔法科は今試験だし……もう三学期近いだろ。なら二年から改めて行けばいい」


 勇者科は別だが、普通はメイン登録する科を決めて、あとは時間調整さえすれば、高等部全部使って三科くらいは十分可能。

 達人は五科くらいマスターして、卒業したりする人もいたらしい。


「錬金とか来年はやってみるかな」


「勉強手伝うよー」


 錬金はポーションから、俺の知らない金属や魔道具まで幅広い。

 当然だが店で売るには許可証がいるし、作るにも試験を通らないとダメ。

 薬品作るんだから当然だな。


「初級試験は期末試験の後か、三学期にもあるよ」


「んじゃしばらく座学だな。本でも買って帰るか」


 学園は未知の分野が多くて面白い。なるべく興味があればやっていこう。


「お、アジュとシルフィじゃねえか」


「ヴァン? ソニアとクラリスも」


 最近三人揃っているところを見ていなかった三人組だ。


「久しぶり……ってわけでもないわね」


「ラグナロクおつかれさま~」


「そっちもな。あんなのはしばらく控えたい」


 こいつらも神だから、色々と後始末もあっただろう。

 普通に学園生活送っているのは、それも終わったからかね。


「ソニアたちも依頼?」


「いや、オレらはギルド戦の結果報告ついでに寄っただけだな」


「そういや、そんなもんあったな」


 ギルドVSギルドだ。個人戦もできるっちゃあできる。

 Dランクからの仕様で、同ランク以外との勝負はほぼ禁止。

 先生とかの特別な許可か、授業の一環でもなきゃ見かけない。


「ヴァンは今Dランクだったか?」


「ああ、もうちょいでCに上がるぜ」


「そりゃすごい。頑張れ」


「アジュもいけるだろ?」


「無駄に上げるとしんどい。今の討伐依頼とかが俺の適正なんだよ」


 FやEでもちまちま受けていたが、Cからは討伐依頼も難易度が高くなる。

 Dを単独で余裕持ってクリアできるようじゃなければ、まず試験も受からない仕様だ。


「そっちもやっちゃどうだ? 対人戦はまた違って面白えぞ」


「うちは一切断っている」


 ランク上がると設定できる。

 勝負一切お断りします。もしくは身内とだけやります。

 そんな感じにする場所が多い。


「たまーにわたしとイロハでアジュの相手はするんだけど」


「経験が偏るのね」


「そこはまあ……仕方がないというか」


 ミナさんにも教えてもらうことはある。それで足りているだろう。

 あの人も超人だし。教わるなら最適だと思う。


「教わるんじゃなくて、実戦で使うのさ」


「人間相手は殺しちまう気がしてな」


 罪のない人間を殺す必要がない。

 いざこざが面倒だし、殺して金もらえる魔物の方がお得だ。


「よし、オレらとやろうぜ」


「話聞いてましたヴァンさん?」


 対人戦はしたくねえって言っただろ。ラグナロクで戦ったろうが。


「共闘はしたが、ガチってねえだろ? またやろうぜ」


「面白そうじゃない。私たちなら、お互い事情も知ってるし、手加減もいらないでしょ?」


「いるに決まってんだろ。どこ見てそう思ったんだよ」


「前の試験で一回やったっきりだしな。どこまで強くなったか知りてえんだよ」


「知ってどうする」


「楽しくなる」


 戦闘大好き人間の考えることは理解できん。


「アジュは真面目にやれば、強いしかっこいいんだよ。いっつも心がストップかけるから、なんとかしてあげないとね」


「そうね~シルフィちゃんの言う通りだわ~」


「そこまで俺のこと把握していないだろ、クラリス」


「いっそ知り合い集めて模擬戦祭りにしねえか?」


「俺が死ぬわ!」


 話の流れが危険だ。これはいけません。これはいけませんよ。


「とりあえず場所変えるぞ。ここはクエスト見に来る場所だ」


 移動してごまかそう。外に出て、適当に座れる場所を見つける。

 室内の休憩スペースだ。全員座れるテーブル席確保。


「よし、本格的に考えてみっか。まずオレとソニアとクラリスで」


「わたしとアジュと、リリアかイロハだね?」


「別に四人相手でもいいぜ。こっちはオレ以外神だしな」


 話が変わらなかった。どんだけ戦いたいのさ。

 俺たちはそんなに興味持たれるほど、何か影響あるのか?


「人数合わせる方がいいよ。アジュがさぼりそう」


「俺参加確定しているのな……」


「ほう、興味深い話をしているな。我が友よ」


 愛の使者ことゲンジ・ヒカルとその執事ベルさんがいた。

 これはいけませんぜ。厄介事がさらに厄介になる。


「切磋琢磨する友人。なんとも貴重で青春ではないか」


「その通りです、坊っちゃん」


「まさか混ざる気か」


「うむ、どうだ? 我もそれなりに強いぞ?」


「いいわね~楽しそうよ~」


 賛成する流れがまずおかしい。いや、ソニアとクラリスだからか。

 どんなやつが来ても、ある程度戦えるという自信があるのだろう。


「あのな、神や魔王が参加したら、そいつらが蹂躙して終わるだけだろ。実戦経験も訓練もぜーんぶ無意味になる。趣旨がぶれる」


「あー……確かもそうかも」


「一理あるではないか」


 ぶっちゃけ鎧使わなかったら、この場で一番強いのはソニアかクラリスだ。

 こいつらは純正の神だからな。太刀打ちできん。

 3VS3の戦闘は別として、人間混ざるなら、神は強すぎる。


「つまり知り合いの中で人間最強決定戦だな」


「待て待て待て。わけわからん。なんでそうなる」


「同級生限定としてはどうだ? 知り合いだと超人の大人が最強になるぞ」


 物凄い建設的に、苦行への提案がされていきますよ。

 なんですかねこれは。俺なんか悪いことしたっけ。


「まとめましょ。3VS3はやる。その後で人間最強決定戦もやる」


「それだな」


「それかよ……きっついなあ……」


「メンバーどうするの?」


「オレとアジュとギルメン三人にヒカルだろ」


「知り合いで出たいやつでも探してみっかねえ」


 こんな地獄祭りに参加したいやつって誰だろう。

 まったく知らんやつが来ても困るな。


「共通の知り合いにしてくれ。初対面の人間とどうこうするのしんどい」


「いいぜ。身内でやろう」


「我も異論はない」


「おぉ、あじゅにゃんはっけーん!」


 ももっちだ。今日は知り合いによく会う日だな。


「おうももっち。ちょうどいいや。混ざっていけ」


「んんん? あじゅにゃんがお誘い? あじゅにゃんなのに?」


 不穏な空気を感じてやがる。勘のいいやつめ。さすがは忍者といったところか。


「知り合いの人間だけを集めて、最強決定戦をやろうという話をしていてな」


「じゃ、忙しいから!」


「待ちなももっち」


 行く手を阻んでやる。ベルさんも一緒だから、やすやすと突破はできんぞ。


「ちょっとあじゅにゃん! 無理だって! 死んじゃうよ!」


「うっせえ! こうなりゃ犠牲者を増やしてやる!」


「犠牲者って言った!? あじゅにゃんがやればいいじゃん! ほんとは強いくせに!」


「俺は鎧なかったら弱いの!」


「ももっちー。うちらと買い物行く約束……何だこの状況」


 勇者科で鍛冶屋のホノリ・リウスさん登場。

 なんだ今日身内が集まってくる呪いでもかかってんのか。


「ほのちゃんが来た!」


「よーし追加してやるか」


「…………よくわからないけど、遠慮しとくよ」


「そうか。それは仕方がないな」


「なんであっさりなのさー!!」


「リウスには世話になっているからな。邪険にはできんさ」


 カトラス作ってもらったりした恩がある。

 恩は返したつもりだが、それでも気がひけるのだ。

 ホノリは一般人枠に近いからな。


「他にも来たいやつを、スケジュール合わせて誘おうぜ」


「照らし合わせた結果、三日後ならばいけそうだな」


「んじゃ暫定三日後だ」


 そんな感じで、よくわからないイベントが始まりそうなのであった。

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