買い物をしてクエスト探し
小腹を満たした俺たちは、道なりに進んで店を発見。
広くて品揃えのいい店内で、商品を吟味中。
「あったぞ爪とぎ」
「きゅ」
試供品があるので、クーに渡してみる。
「きゅっきゅっ」
かりかりしている。こいつかわいくない動きが存在しないな。
「きゅー……」
しょんぼりしている。お気に召さないらしい。
「こっちはどうかしら?」
木に似たやつから縄っぽい形のやつ。なんかでこぼこしたやつとか試してみる。
「きゅっ!!」
目がきらりと光った気がした。
「きゅっきゅっ!」
めっちゃかりかりしている。気に入ったみたいだな。
「それがいいのか?」
「きゅ!」
四角いけど丸太っぽいデザインで、クーより大きい。
材質はよくわからん。この世界の物質は特殊なものも多いからね。
「感触が住処の木に近いらしいデス」
「ほー……そういう選び方か」
「きゅきゅきゅ」
「丈夫だし、かりかりすると楽しいらしいデス」
手に馴染むというのは大きいな。
結局珍しさより実用性だろこういうのって。
「お気に入りが見つかってよかったわね」
「きゅっ」
俺の手を取り、爪とぎに当ててくる。
「やれというのか」
「きゅ」
よくわからんおすすめをされた。
これ善意なんだろうなあ。
仕方ないのでちょっと爪をこする。
「爪がかりかりする……いや人間はこういうのでとがないんだよ」
「きゅー」
へーそうなんだーみたいな声と顔だ。
完全に善意でやっているな。根がいい子だと伝わる。
「一応他のやつも試すぞ。もっと気に入るのがあるかもしれん」
「きゅっ」
そこからいくつか試すが、しっくりこないらしい。
「じゃあさっきのやつだな」
「家と別荘用に二個買っておきましょう」
「これで家の柱や壁をひっかかなくていいぞ」
「きゅっ」
ちゃんと家に来た時用の対策も練るのだ。
店の場所は覚えたので、また何かあったら来よう。
「クーちゃんに持たせるわけではないのデスね」
「そこは自然の中で適応して欲しいんだよ」
「そうね。人間の道具に頼りすぎるのはよくないわ」
そんなわけで人間のおうち専用です。
領地は自然が豊富だから、お気に入りの木もあるだろう。
「こっちでのお散歩道具も買いましょう」
「こっちに首輪とリードあるな。あんまり野生動物につけるもんじゃない気もするが……」
「こっちに来る時だけでいいのよ」
「あれこがクーちゃんにつけてあげるデスー」
不思議そうにしているクーに首輪をつけていく。
「きゅー?」
よくわかっていないようだ。リードは魔力で飼い主の手に吸着するらしい。
地味な部分に魔法使ってきやがるなこの世界。そういうの結構好きよ。
「こうして伸び縮みするリードが出るから、勝手にどっか行かないようにするんだよ」
「人間の世界は広いのデス。迷子ダメデスからね」
「クーは賢いから必要ないかもな。苦しかったり痛かったりしないか?」
「きゅ」
問題ないらしい。外して買っていこう。
あとはキアスのブラシだな。
「馬用で……また種類が多いな」
ブラシの硬さとか材質とか結構ある。
普通の馬もそうなのだろうか。
近くのやつを手に取り、軽く触れる。
「当然だがピンとこない」
「好みはわからないの?」
「硬さは普通。かけるとしなるくらいのやつで、ちょい長いやつだな」
流石に召喚獣やってる期間が長い。好みくらいはわかってくるさ。
俺がブラシかけてやる機会もあるし、嫌いじゃないよ。
自分の選んだ召喚獣で同志だからね。
「ならそれでいいんじゃないデスか?」
「でもわざわざ新商品頼むんだぞ。別ジャンルも試したいんだろう」
「難しいわね」
「きゅー」
ブラシ選びはクーには難しいようで、大人しくしていた。
俺がちゃんと抱きかかえている。どっか行かないように。
「とりあえずあいつの好きそうなやつはこれ。新品確保する。あとはそっちのセンスに任せる」
「あれこたちデスか?」
「俺だと先入観出るだろ。完全に知らんやつが選んだ方がいい。本命は確保した」
「なら少し柔らかめで、撫でるような感じのこれはどうかしら」
毛先も短め。どうもブラッシングというよりマッサージに近いな。
本能的に撫でられるのが好きなイロハらしいチョイス。
「ではあれこはこれデス! データによると馬に一番好かれるっぽいデスよ」
毛先硬め。長さ普通。値段もそれなり。なるほど無難に優秀だ。
「きゅっ!」
クーが右手で指し示すのは、ちょい硬めで毛先が太め。
持つ部分が白くてもこもこした飾りつき。おそらくそこで判断したな。
触れてみるとふわっとしていて、意外と毛先もいい感触。
「センスあるな。じゃあ四本とも買っていくぞ」
会計済ませて外に出ると、そこそこいい時間である。
「夕方だけど、晩飯にはちょっと早いな」
「クエストでも見ていきましょう」
「きゅー?」
「クーを連れて行くわけにもいかんか」
「そろそろおうち帰る時間デスね」
夜までには親に返す。でないと心配するのだろう。
漫画とかで親心ってそういうものじゃないかと思った。
「家族の元へ帰る時間だ。また遊ぼうな」
「きゅー……きゅっ!」
ちょと残念そうだけど納得してくれた。
「また遊ぶデスよ!」
「きゅ!」
「ばいばいクーちゃん」
親の位置を確認。状況を聞き出し、問題なさそうなので送る。
「またな」
「きゅー!」
手を振って領地へ逆召喚。
実に充実した時間だった。
最早心のオアシスとなっている。
「あれこも帰るデス。ヒマしてたらまた遊んで欲しいデス」
「気が向いたらな」
「毎日はダメよ」
「わかってるデス。それじゃあまた来るデスー!」
そんなわけであれこも帰った。
なんとも騒がしいやつだ。悪いやつではないのかも知れないが、あのテンションが毎日はしんどいものがある。
「行くぞ。さっさと見てこよう」
「そうね。何かあればいいけれど」
そしてクエストカウンターまでやってきたわけだ。
人も依頼もやたら多いぞ。
「依頼が多いな」
「そろそろ中間試験よ。必要なものが増えるのでしょう」
勇者科は最速で終わったからな。
そうかみんなはこの時期か。
「簡単な採集の依頼とかがいいな」
「アジュとイロハじゃないか。そっちも試験か?」
「マコ?」
魔王マコだ。また微妙に髪の毛を縛る位置とか変えているっぽい。
なので理解するのが一拍遅れた。けどマコだな。
「久しぶりね」
「会ったの結構前だよな」
「覚えていたのか。正直不安だったが、マコ様だぞ」
「髪型変えるから一瞬迷ったぞ」
「えぇ……お前なあ……」
どうやら魔王科も試験があるらしい。
魔王の試験ってなんだろうか。勇者倒せとかじゃないだろうな。
「こっちはクエスト見に来ただけさ。そっちは?」
「同じさ。試験のために強くならんとな。アジュは準備しなくていいのか?」
「勇者科は二学期初日に試験終わったんだよ」
「なんだそれ……」
「俺もわからん」
やはり異例らしい。学園長が関係しているのは間違いないだろう。
あの人も読めない人だからなあ。
「マコは依頼とか無いのか?」
「何だ困っていたら助けてくれるのか?」
「単位と金と恩次第だな。恩や借りはできる限り等価で最速で返す」
他人に借りを作るというのは、本来弱みを握られるも同じ。
さっさと返しましょう。恩はお礼とかしておこうね。
「マコの依頼なら信用できるから、私も協力するわ」
「アジュが一緒に来るならか?」
「そこは都合次第ね。あなたに敵意はないわ」
「悪いな。だがこちらからの依頼はない」
外れか。こういう時はたいてい誰かが依頼をしてくるか、厄介事が来るもんだが、珍しいこともあるもんだ。
「おや、ちょうどフリーですか。それはいいことを聞きましたね」
「……ラウル先生?」
声をかけてきたのは、前に別件で出会った医学と薬学のプロ、ラウル先生だった。
「お仕事、お願いできませんか? ジョークジョーカーさん」
その手には、裏の仕事を示すカードがあった。
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