リリアを見分けてみよう
さてなぜかリリアが増えている。
本物は察した。だがちょっと遊んでみよう。
庭へ移動。リリアを並べてみる。
「見た目的には変わらないな」
一番楽なのは九尾の力を出させること。
けどつまんないので却下だ。
「じゃあ簡単なのからいこう。昨日の夜何食った?」
「カニドリア」
声まで一緒だな。同時に言われるとよくわかる。
「……そういやそうだったな」
「なぜ本人が覚えておらんのじゃ」
「クイズ成立せんじゃろ」
同時に責められると傷つくぞこの野郎。
両方のリリアに紙とペンを渡す。
「こっちの世界で始めに戦った敵は?」
『青い龍』
同じ答えだ。書かせても同じ。
つまりカンニング手段があるか、余程こちらの事情に精通していなければならない。
頑張るねえ。まあ無駄なんですけれどね。
「イロハもなんか質問してみな」
「仕方がないわね。ここに青と黒の下着があります。昨日アジュが履いていたのはどっち?」
「なぜ持っているか聞いていいか?」
「青じゃな」
「しれっと答えてんじゃねえよ。それちゃんと洗濯機に入れておきなさい」
最近は大人しかったのに、油断したぜ。
しかしマジで俺たちを調べてきているっぽいな。
「これフウマの変装とかじゃないだろうな」
「しないわよ。敵対行為とみなされて死ぬかもしれないのよ」
まあリリアの姿で悪さなんぞすれば殺すけれど。
ということは何か別の手段で知らないやつがやっているわけだ。
「右リリア、今まで俺が使った鍵の名前を五個言ってみろ。鎧キー禁止」
「ミラージュ、ソード、エリアル、ガード、シャイニングブラスター」
「次、左リリア」
「ステルス、ポイズン、インクレース、リバイブ、シューティングスターナックル」
ほほう、かなり勉強熱心だな。
感心感心。この行いは褒められたもんじゃないけれどな。
「異世界あいうえお作文そのまんま書け」
いろんな女の子と!
せっせと仲良くなって!
かみさまさえもぶっ飛ばし!
いちゃいちゃらぶらぶ過ごしましょう! と書かれている。
「おーやるもんだな。かしこい」
「このくらい当然じゃ」
「うむ、普通じゃな」
そろそろ飽きてきた。元々クエスト終わりなんで疲れているわけだよ。
「いかんな。疲れで眠くなってきた。もう終わらせちまうか」
「最初っからわかっておるじゃろ?」
「そうだな。いいや面倒だ、次で終わりにしよう」
もう冬が近いのに庭にいるのしんどい。
屋内でやるべきだったかも。
いやでも暴れられると家壊れるし。うざい。
『ショット』
ショットキーで白くて装飾の入ったリボルバーを形成。
たまにはこういう演出も必要だ。
人生に潤いを付けていこう。
「俺から見て右側のリリアから答えろ。二章でノブナガがイマガワに勝った戦いの名前は?」
「順番に答えさせてどうするんじゃ、オケハザマじゃろ」
「次、左のリリア」
「先に正解言ってしまったら判別できんじゃろ。桶狭間じゃ」
左のリリアを撃つ。頭を狙ったが、ぎりっぎりでかわしやがった。
「くっ、偽物はあっちじゃ!」
「抵抗しても無駄だ。まず発音が違う。二章の桶狭間が何か理解していない。もしくは俺の世界の桶狭間じゃない」
「二章というのはゲームの話なんじゃよ。声優の発音がおかしくてネタになったのじゃ」
「それだけでは確定ではないのじゃ。そちらが偽物の可能性は消えぬ! 質問はすべて合っていたはずじゃ!」
質問はあくまでお遊び。そこがわかっていないのが偽物の愚かさである。
「俺がこの銃を造った時だ。お前は自分が撃たれるかも知れないと思ったろ?」
「それは二人とも同じはず!」
「そこからもう間違っとるんじゃよ」
「リリアはこの程度のおもちゃを頭にくらったぐらいじゃ死なない。そして俺になら撃たれようが構わないという想いがある」
「撃たれることに恐怖した時点で、論点がずれておるのじゃ」
偽物の抵抗が止まる。観念したようだな。
「それだけ……たったそれだけで?」
「違う。それは副産物さ。挙動からして別物だ。真似た程度ではたとえ記憶がコピーできたとしても、俺を考慮し、最大限俺といることに全力を出して動くことができない」
「わしの言動ではなく、アジュを不快にさせず、楽しませることを第一に考える思考が身についていなくては無意味なんじゃよ」
奉仕の心とでも言うべきか。敵が俺にその心を持って尽くすことはできない。
そこからじわじわと差異が生まれるのだ。
「まる狂信者だな」
「否定できんのう。にゅっふっふ。必要なのはわしの記憶や能力ではない。それではアジュを欺くことはできんのじゃ。勉強になったじゃろ?」
「無意識レベルでできなければ、必ず違和感を覚えるし、不快感が顔を出す。こちとら卑屈で性根の腐ったぼっち野郎なんでね」
「うぅぅ…………なんて気難しい人デスか……」
「お前金色のカニ呼んだやつだろ?」
声とデス口調が完全に同じだ。
目的がマジでわからん。俺達と敵対するつもりはないと言っていたが。
「なんじゃい金色のカニて」
「人に近い金色に光るカニが出た」
「それもうカニじゃないじゃろ」
「その話はもうしたわ」
やはり珍しいらしい。カニっていうのは赤くて水場にいるもんだよな。
「うぅ……リリアさんだけ調べればいけると思ったデス。こんな注意事項の多い困ったちゃんな人がいるとは……不覚デス」
「俺のめんどくささなめんなよ。理解者が三人いるだけで奇跡だからな」
「十代の少女より格段にナイーブなんじゃぞこやつ」
「常人が同居できると思わないことね」
「はいはいもう降参デス。自信が打ち砕かれたデスよ」
左リリアの顔が一瞬だけ蜃気楼のように揺れ、金髪ショートの女へと変わる。
次になんか半袖短パンの軍服みたいな白と青の服へ変更。
「ああいけない。制服がいいデスね」
そして学園の冬用制服へと変わる。
なんだこいつ。魔力が感じられない。
そういう特殊能力なんだろうか。
「いまさらデスが、なんで九尾のパワーを見せろって言わなかったデスか?」
「それやると決着ついちゃってつまんないだろ」
「まあコピーできないほどリリアさんは強いのデスが……最初っから遊ぶつもりデスか」
「そういうこと。そろそろ名乗れ……ん? 誰だ?」
来客を告げるベルが鳴る。タイミング悪いなおい。
「アジュ様の残り香と気配がしますわ! そこにいらっしゃいますわね!」
「うーわめんどくっさい時に……」
完全にヒメノですよ。お前いっつも変なタイミングで来るよな。
「今真面目にやばいんだ。ふざける気なら帰ってくれ。本当に遊んでいる場合じゃない」
「そちらにあれこちゃん来てませんこと?」
「誰だよ」
「今開けるから入るのじゃ」
リリアが鍵を開けている。正直入って欲しくないが、ちょっと関係者っぽいしな。
「おおう、先に名前を言われてしまうとは、礼節というものがなってないデス。こいつは失礼デスね」
「やっぱりここでしたわね」
「アマテラスに見つかったデス。もうちょっと遊びたかったデスね」
「ここではヒメノとお呼びなさいな」
あれこ、あれこ、どっかで聞いたな。
なんだっけ……昔の記憶がもううっすらとしておられる。
「結局この子は誰なのかしら?」
「はじめましてデス! オルイン担当アカシックレコードのあれこデス!! よろしくお願いするデス!!」
元気に敬礼なんぞしているが、アカシックレコードってことは。
「くれこの仲間か」
警戒対象である。面倒事を持ち込むなら始末せねば。
「違うデス。同族だけど違うデス」
「この子はちゃんとお仕事してくれる子ですわよ」
「くれこちゃんを倒せるスーパーなパワーの持ち主さん。いつかご挨拶したいと思っていたデス。力と賢さのチェックとかしたかったのデス」
カニも下手くそな変装もそういうことか。
邪魔くっさいことしやがって。
「二度とやるな。あとギルメンに化けるのも禁止。二度目はないぞ」
「二度やると本当に殺されますわよ」
「デンジャラスな人デスね。了解デス!」
「じゃあ帰れ」
「まだお話するデス!」
まだ余計なことする気かこいつは。
今日はもう疲れた。はよ帰れや。
「そうですわね。久しぶりに入れましたし、リビングでお話しましょう」
「なぜお前が決める」
既に椅子に座ってくつろぐ体勢に入っているヒメノ。
遠慮とかしろって。
「お菓子は簡単なものでいいですわ」
「デス!」
「帰れや!」
さっさと話をさせて急いで帰そう。
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