王族の家族会議を見てみよう
スルトとかいう注射打ち込まれたアフロディーテがシリウスを取り込む。
ヒカルを連れて宇宙へ。よっしゃシリウスへ語りかけてもらおう。
「冷静に考えると意味わからんなこれ」
「どうした?」
「いやなんでも。トークの力は継続しているから、あいつに呼びかけろ。ここでいざこざを少しでも解消してくれ。俺には救うことはできん」
これは半分本当。
剣でシリウスだけを傷つけずに消滅させられる。
半分は家族間の問題なんて解決できないってことだ。
「どういう意味だ?」
「俺は殺すことならできる。王でも神でもいくらでも。それでなんとかやってきたが、人を救う方法は知らん。他人の気持ちってのがわからんし、説得や和解に向いていない。なんて声をかけるものかも知らん」
「そこで我か」
「ついでだ、王様にも手伝ってもらおう」
トークキーの範囲を広げ、王様にも繋ぐ。
未知の領域だからな家族愛。見せてもらおう。
「王様、聞こえますか?」
『サカガミ殿か? ヒカルは、シリウスはどうなった?』
「ここにいます。今からヒカルと一緒に説得してください。ヒカル、説明頼む」
「我がするのか……」
「悪い説明とか無理」
ぱぱっと説明してもらう。
演説とかで話すのには慣れているのだろう。わかりやすい。
「まあそういう感じです」
「アジュ、後ろだ!」
「知ってる」
アフロだったシリウスを取り込んだ何か。
面倒だからスルトでいいや。
スルトが火炎弾なんぞ飛ばしてくるのではたき落とす。
「いっちょまえに光速攻撃か」
「説得の間耐えられるのか?」
「問題ない。この程度なら潰せる。倒すだけなら一撃で消せるし、さっさとやれ」
ぶっちゃけザコの部類です。
アフロディーテが弱いのか、スルトってやつが弱いのか。
まあ都合がいい。茶番に付き合わせよう。
『では聞いてくれシリウス。本当に、本当に爆発も暗殺も知らぬ。王宮でのみ生活させてしまったことは悪いと思っている。お前にゲンジの分まで凶兆を押し付けたことも、二人を生かすためとはいえ、申し訳ないことをした』
「知らなかったとはいえ、そんな生活を家族にさせ、愛の使者などと名乗っていた我自身を恥じるばかりだ」
聞きたくないとばかりに火炎弾が飛ぶ。
まあ何発来ても適当に手を振れば全部消せる。
「お、なんか形が変わっていくぞ」
スルトの形が変わっていく。
上半身が黒い人の形で、下半身が巨大な火球だ。
ちなみにシリウスは火球の中にいる。
命に別状はないっぽいので放置。
「兄さん! まだ我らはやり直せる! 真実を明らかにしよう!!」
『全面的に協力する。だから帰ってきてくれ。そして話そう。普通の家族のように』
「お願いだ! あれが事故でなく故意であるのならば、その犯人を知らねばならぬ!」
ぶっちゃけスクルド出てきた時点であいつらのマッチポンプっぽいのよね。
どうせろくでもないだろう。
「何か口を動かしているっぽい? 中継繋ぎまーす」
トークキーの効果アップ。シリウスなんとか言え。
俺に家族愛という未知のエリアを見せろ。
「オレ……は……王家に殺されかけ……て……」
「違う! それは我々の知らぬことだ!」
『ならばシリウスよ、逃げ延びてどう生きてきた。師匠がいるのだろう?』
「師匠は……城から逃げ、行く宛もないオレを拾い、育て、助けてくれた」
そういやそっちノータッチだったな。
「師匠の名はなんという?」
「言えぬ……師匠はオレの恩人……スクルドとともに行くことすら反対していた……最早破門も同然だろう……これ以上……あの人に迷惑は……」
あれ? これ師匠はスクルド側じゃないのか?
まーたややこしくなるのかよ。
「スクルドとの関係も聞いてくれ」
「わかった。兄さん! スクルドとはどこで知り合った!」
「師匠の言いつけで、街へ買い物に出たオレは……独自に王家の調査をしているという、スクルドと出会った……一年前だ。それからは街に行くと言ってはスクルドと計画を練り……今回の計画を……」
「やっぱりかあの野郎」
どうもアフロとベレトは手駒としてスクルドに貰ったものらしい。
本当に手広く色々やってんのね。
「オオオオオオォォォォォォ!!」
上半身のアフロだったスルトがめっちゃ叫んでいる。
うるさい。とりあえず黙らせよう。
その辺の隕石に蹴り込んで埋めておいた。
「じっとしていろ」
『どうした!? シリウス! ゲンジ!』
「問題ありません。無事か兄さん!」
「アアアァァァァ!!」
ダメだな。完全に意識が眠りに入ったみたいだ。
上のアフロが本格始動しちゃった。
隕石破壊して出てきちゃったよ。
「こりゃダメだな。まあそこそこ聞けたか」
「説得には何かが足りないのか? アジュはどう思う?」
「ん? さあ? そっちに任せるわ」
ぶっちゃけいつでも救出できるし。
助けてまた戦闘されると面倒だからね。
ここで和解させたかったんだよ。
なんか無理くさいけど。
「こういうことは身内だけでは見えぬこともある。客観的な視点が足りないのかも知れん。アジュ、そちらの忌憚なき意見を聞きたいのだ! 今何を思い、何を感じている! 本音で話してくれ!」
「飽きたんで帰りたい」
「誰がそこまで本音で話せと言った!?」
「焼きそば買ってからくりゃよかったな」
「王家崩壊の危機に焼きそば食うんじゃない!!」
まあ大団円とかそういうの予定していますんで、そちらが頑張ってください。
「あのチャウミン? っていうの美味いよな。スパイスがほどよく効いているし、ヤマトは食い物が特に新鮮で質がいい」
「ありがとう。水の国でもあるからな。作物が豊作であり……って違う!」
ヤマトの王子様はノリツッコミができます。
やったね。何がやったねか知らんけどね。
「ほら攻撃が激しくなってんぞ。急げ」
全方位からホーミング火炎弾とか飛んでくる。
まあ別に拳圧で全部壊せるけどさ。
「ちょっと減らすか」
人差し指を上下に軽く振る。
その真空波でスルトの体積をがんがん減らす作業開始。
「ケバブってこんな感じで作られてるよな。くるくるーっと」
魔力で軌道を変え、大根のかつら剥きみたいに切っていく。
ちょっとおもしろいので飽きるまでやろう。
血とかでないタイプの敵っぽいので、視界も塞がれないし。
「父上、アジュが飽きて遊び始めています。急いで説得しましょう!」
『それはシリウスをか? サカガミ殿をか?』
「シリウスをです」
「こっちにケバブってあるか? 本格的なやつ食ってみたいんだけどさ」
「ええいなぜリリア殿をつれてこなかった!」
「危ないだろ。宇宙で神と戦うんだぞ。置いてきて正解だ」
こんな状況に同行させてはいけない。
まあリリアでも楽勝で勝てるだろうけど。
「我は確か護衛対象でヤマトの王子だった気がするぞ」
「だから守ってるだろ」
「納得いかんぞ!?」
まーたなんか体積増えちゃってますよスルトさん。
なんかやっぱり不死身だったりするのかなあ。
まあ殴れば殺せるけどさ。
『戻って来てくれシリウス!!』
「アジュも一緒に呼びかけてくれないか?」
「は? 思い入れゼロだぞ?」
何を言い出しましたかこの王子様は。
映画の応援上映とかそんな感じか?
「案外身内以外が大切かもしれないだろう」
『失われた時間を埋めよう!』
「そうだそうだー」
こっちはスルトの攻撃に全部対処しなきゃいけないのに。
もう適当に合わせておこうか。
「兄さん! 家族の絆は、親子の愛は、きっと今からでも積み上げていける!」
「そうだぞー」
『我々は家族だ! 共に暮らし、共に歩もう!』
「そうだー」
「もう少しやる気を出してくれ!!」
だってどういう気持ちで声かければいいのよ。
俺にそういうの無理よ。
『ゲンジよ、その……サカガミ殿の協力がなくては……救出は無理か?』
「本当に残念でなりませんが……アジュでなければ解決できませぬ」
『そうか……それは……残念だな』
なんか効果あったみたいで、スルトの動きが止まる。
シリウスが苦しんでいるようにも見えた。
「あ、取り込まれるかも」
「なにぃ!? どういうことだ!!」
「どうもシリウスを捕獲して、敵を殲滅して戻ってこいって命令でも組み込まれていたっぽいな。それができないもんで、取り込んで力を上げようとしている」
『なんと!? しっかりしろシリウス!!』
必死の呼びかけが効いたのか、シリウスの目が開き、こちらへと手を伸ばしている。
闇の火球からは出られないのか、苦しそうに呻き、なんとか家族の名前を呼ぶ。
「ゲンジ……」
「兄さん!!」
『シリウス!』
「父……上……」
父上と呼んだし、まあある程度和解の可能性は高まったな。
「んじゃそろそろ助けるか」
「できるのか?」
「おう」
『ソード』
いつもの剣を出しまして、光速の五十倍で移動。
スルトとシリウスを繋ぐ魔力だけを切断。
この剣は切りたいものだけ切れる。
あとは適当にスルトの火球を何度か切って、シリウスを引っ張り出す。
「ほれ、捕まえとけ」
ヒカルに向けて軽く押せば、無重力のおかげでシリウスが流れていく。
兄弟がしっかりと手を繋いだことを見届け、必殺技キーを使う。
『シャイニングブラスター!!』
「なんだか妙な一日だったが、まあこれで終わりだ」
『ゴゥ! トゥ! ヘエェェェル!!』
左手より放たれる閃光の波は、スルト本体など容易に飲み込み消し飛ばす。
宇宙に一筋の閃光が現れ、流星のように消えていく様は、ちょっと綺麗だなーと思う。
「よし、んじゃ帰るぞ」
「こんなにあっさりと……アジュは恐ろしいほどに強いな」
「別に俺だけの力ってわけじゃないさ」
ヒカル兄弟を抱えて城へ帰還。
途中で別れておく。鎧を解除し、しれっと元の席に戻れば任務完了。
「戻ったぞ」
「おかえり。早かったね」
「そうか?」
「もう少しかかると思っておったのじゃ」
飽きちゃったからね。しょうがないね。
「いつまでもここにいてもしょうがないな」
「ならお祭りに戻りましょうか」
そんなわけで後始末を王家の皆様が収めてくれるように祈りながら、祭りの中へと四人で消えていった。
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