突入天空学院
リリアを連れ去った奴らを潰すため、エリュシオン天空学院へと急ぐ。
あいつの魔力はどこであろうと感じる。
ならばその場所へ向かえばいい。光速の三千倍で飛べば、一瞬で見えてくる。
「見つけた」
それは確かに空に浮く島だった。
豪華で白メインの学び舎と、高層ビルのようなものが立ち並ぶ場所。
建物はすべてファンタジーなデザインなのに、それをビルにしているという、なんとも歪でアンバランスなもの。
「誰のセンスなんだか」
『ガード ハイパー ダイナミック アルティメット』
久しぶりに強化版を使う。
今回は完全な円球。透明なそれは、学園をすっぽり覆った。
これで大暴れしても学院外に被害は出ない。
そして誰も、どんな魔法であろうとも外には通じない。
「誰一人として逃さない」
とりあえず学院の最上階へ、壁を蹴り壊して入ってみる。
リリアの気配はもう少し奥だな。移動している。連れて行かれる途中なのだろう。
「誰だ!!」
男の声。生物の反応は二個。その片方だな。
豪勢な甲冑着てやがる。
「さーて誰だろうな。地獄でゆっくり考えな」
「無礼な……どこの誰とも知れんものが。私を学院長と知っての振る舞いか?」
ヒゲの年寄りだ。豪華な服を着ている。まあ今からボロ布になるわけだが。
院長室にふさわしい豪華なイスとでかい木製のテーブル。
鹿の剥製とか、金の鎧とか、まあ成金だこと。顔もよく見りゃ下品だ。
「ほうほう、んじゃ殺しておかねえとなあ」
「誰に喧嘩を売っているのかすら理解できんのか? エリュシオン天空学院といえば、それこそ一国に匹敵する存在。つまり王の御前だ」
「狐の面をしたやつが、ここに女の子をさらって来たはずだ。答えろ」
肩書も地位もどうでもいい。どうせ全員殺す。
そこで背後から豪勢な槍による刺突。適当に掴んでみると甲冑男だ。
「我はエリュシオン天空学院騎士団長。貴様の狼藉、断じて許さん。正義の名のもとに、我が騎士道を……」
「邪魔」
裏拳で破裂させる。騎士道なんぞどうでもいい。勝手な自分ルールだろ。
「誰か! 侵入者だ!!」
誰かと連絡をとっているヒゲの顔に膝蹴りをかます。
「うぎぃ!? あ……うああぁぁぁがはっ!?」
叫び声が不快だったので喉を踏む。
そのまま部屋の中央に蹴り飛ばした。
「お前らの目的と、狐面のやつ、あと女の子をさらった理由を言え。いいか『言います』とかそんな言葉はいらねえ。事実だけを言え」
「どこの平民だ貴様……わかっているのか? 貴様は一国を敵に回しているのだぞ!」
「ならその国を消せばいい」
「不可能だ! 仮に消せば各国から狙われる!」
「ならその国も消す。そもそもお前ら機関だろ? 消されるのはそっちさ」
どの面下げて脅しかけてんだよこいつ。
まあいい。王様ってのも殺せる機会は少ないだろうし、記念にちゃちゃっと潰しとこう。
「地位だろうが名誉だろうが、目の前の暴力には無力だなあ王様よ?」
リリアはここではない。学院の奥にいる。それは掴んだが、なにか妙だ。
プロテクトが掛かっている場所がある。撹乱させる意図もあるだろう。
危険が迫っているわけではないと、あいつの指輪を通じてわかる。
ここでちゃんと情報を集めるか。
「思い上がりもそこまでだ、侵入者よ」
ぞろぞろと入ってくるザコ。もう隠す気もないのか、普通にアーマードール出しやがって。俺を始末できるという自信の現れかな。
「早くそいつを殺せ!」
「はいはい。こうですかい?」
学院長の命令に従ってみる。俺が。
手刀で先頭の偉そうなおっさん以外を全員殺す。
誰も俺の攻撃が見えていない。やはり弱すぎる。
「なっ……よくも仲間を! 許さんぞ!!」
「ヒゲが殺せって言ったし」
「誰がお前のような平民に命令するか!!」
「あーらら。そりゃ勘違いだったわ。悪い悪い」
まあ言われなくても殺るつもりだったしな。
さらに豪華な鎧を来ている連中が増えた。
「ここにいるのは学院最高戦力だ。全騎士団長がここにいる」
色とりどりの鎧が五人。軽、重の差はあれど、デザインは同じか。
「そりゃちょうどいいや。そろそろ答えろ。答えたやつから地獄に送ってやる」
敵全員の四肢を切断し、拳圧で一箇所にまとめる。
『ソード』
魔力による黄金剣を複数作り出し、クズどもを壁に縫い付けたら準備完了。
「うげえ!?」
「あぐっ!?」
「ぎゃあああぁぁぁ!!」
「まず狐面のあいつは誰だ?」
「誰が答えるものか!!」
まあそう来ますよね。なので床に転がしておいたヒゲの頭を踏みつけます。
「ぐあああぁぁぁ!?」
はいヒゲの頭がみしみし悲鳴をあげております。案外頑丈ね。
偉いやつって頑固で頭硬そうだもんなあ。それが身体にも現れるのか。
「ほーれ学院長が死ぬぜ」
「そんなことをすれば、誰も話さないと気づかんのか!!」
「ならやってみようか?」
一気に頭を踏み潰した。そして鍵発動。
『リバイブ』
絶句しているアホどもをよそに、頭がみるみる復元されていく。
「はっ!? 私は……」
「おかえり。地獄の入口は見えたかい?」
目を見開き、さっきまでの偉そうな態度が完全に消えている学院長。
青ざめた顔も、小刻みに震える体も、それだけで少し気分が晴れる。
「言ったよな? 話したやつから地獄に落とすと」
こいつらの一番の幸せは地獄に落ちること。
話すまで、永遠に死ぬことは許さない。
「さ、話せ。誰からでもいいぞ。学院は何のためにある? 狐は何者だ?」
「ア……アテナだ……」
「アテナ?」
意外にも最初に音を上げたのは学院長だ。
一度殺され、もう一度死を味わうということが心を開かせたのだろう。
「アテナとあの妙な面をつけた男が現れ、学院を改造していった。機関の隠れ家としても使っていることを公表すると脅されてな」
もとから機関は関わっていたのね。
そして男であるらしい。首謀者はアテナ。
「あいつなんだ? 男なのか?」
「最初は男の声だった。誰も面を外したところを見たものはいない」
「ヴァルキリーは?」
「アテナの元へ送る事になっている。ラグナロクでの戦闘を想定しているとしか聞いていない」
アテナによるヴァルキリー工場か。計画の全容が見えてきた。
「お面の男は?」
「知らん」
ザコの頭を一個吹っ飛ばす。
「うひい!? 本当に知らぬ!」
「他のやつは?」
「同族を探していると言っていた」
どうやら観念したようだな。テンポが良くて助かるぜ。
「神と並び立ち、神を超える存在となると」
「それ以外には?」
「何も。何も話さぬ男だ」
「今回女の子がさらわれた。仲間だ。同族だとして心当たりは? なんのために連れ去った?」
「学院が各地を訪問するのも、強者から同族を探す手段だと言っていた。それだけしか聞かされておらん」
ううむ、本当に知らないようだな。
こいつらに話したところで役には立たないだろう。
ならあとは証拠だな。
「お前らの悪行の証拠とかないか? この棚あたりに」
そのへんに散らばった書類やらを、適当に召喚機のスロットにぶち込む。
「…………ん」
学院に来て十分未満。リリアと、あの妙な気配だけの男の動きが止まった。
「頃合いか」
「なっ、なに?」
「ご褒美だ。一瞬であの世に送ってやる」
『ガード』
ガードキーで結界を張り、学院のリリアがいる一階と大地を残し、すべての建物を消し飛ばした。
神格も結界も弱い建造物なんぞ、軽く魔力を開放すれば消せる。
「さーてご対面といこうか」
ソードキーからいつもの豪華な剣を取り出し、二人の魔力を感じる場所を感知。
天井を切り取って侵入。既に防御結界もプロテクトも壊した。
「見つけたぜ。リリアを帰してもらう」
そこには忘れもしない、狐面の男とリリアが立っていた。
『まさかこれほどの強さとは』
「やれやれ、遅いではないか。自力で逃げるか迷ったのじゃ」
「悪いな。これでも結構急いで来たんだよ」
リリアに外傷はない。洗脳されているわけでもないな。
きっちり間に合った。
あとはこいつを殺し、学院をこの世界から消せばいい。
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