プールとスク水のあれこれ
豪華なプールで遊ぶ。そこだけ聞けば楽しそうだ。
俺とスク水の三人というシュールな状況であってもな。
「さて、今回はこういう攻め方をしたわけじゃ。褒めるがよい」
「どこをだよ。学校指定のやつじゃないか」
「それを着ているわたしたちを見てどうですか?」
「…………水着を着ているなあ……」
ごめん、なーんも出てこない。
全員同じだと褒め方も似るだろうし、まず可愛いとか綺麗とかそういう感想もスク水のインパクトにかき消される。
「反応が薄いわね」
「そこはしっかり褒めておくところじゃろ」
「いやちょっと笑い取りにいっただろ。それを褒めるのは違う気がするぞ」
別に変でも嫌いでもない。
こいつらは何を着ても似合うし、着こなせるほど素材がいい。そこは認める。
「やっぱり全員一緒でこの水着は、アジュも困るんじゃないかな?」
「ううむ作戦ミスか。こういうピッチリ感あるの嫌いではないじゃろ?」
「多分な。けれどもう授業っぽい感じ出ちゃってるし」
水泳の授業感が滲み出てしまったのだ。
豪華なプールであることも手伝ってよくわからん。
「授業でもないのにスク水を着せているという背徳感と、非日常な感じに欲情すればよい」
「また異次元な注文しやがって」
「意識改革じゃ。まずここに、スク水でより強調されたシルフィのおっぱいがあるじゃろ?」
どこからか扇子を取り出し、シルフィの胸をくいっと持ち上げている。
手が若干ぷるぷるしているのは、なんかきっと重いんだろう。
「これほど自己主張の激しい胸があるのじゃ。これを見てどう思うか、一度しっかり考えるのじゃ」
「完全にセクハラだな」
「頑張ってアジュ。ちゃんと考えてみよう!」
「応援するな!」
なんで肯定的なんだよ。ピュア枠なんだから恥じらえ。
いや顔が赤いのは気づいていますが。だったら止める側に回ってくれよ。
「大国フルムーンが生んだ気品ある大きなおっぱい。王族ゆえにいいものを食べて育っておる」
「国の豊かさも察することができる。そのうえで自分だけのものにできる。それがシルフィの胸から感じ取れるわね?」
「同意を求めないでもらえますかね?」
なんかイロハまで乗ってきたよ。
もう死ぬほど面倒なことになりそうで不安ですね。
「軽くつついただけでわかる重量感と柔らかさ。揉んだら柔らかいことくらいわかるじゃろ?」
「だろうな。だからといって手は出さんぞ」
「ふっ、その答えは想定済みじゃ」
やれやれみたいな顔をされています。その顔をしたいのは俺だよ。
よくわからんので、とりあえずプールに入ってみる。
「揉む、舐める、しゃぶる、挟むと用途は多彩じゃ。そのイメージだけはしておくのじゃ」
「どんなアドバイスされてんだよ俺」
流れないプールがほどよく冷たくて、より冷静になれる。
つられて三人も入ってきて、適当に水面を漂っているだけの状態へ。
「そうすることで、少しずつでも欲情できるようになりなさい」
「アジュは女の子をこう……どうにかしたいっていう気持ちが薄すぎます!」
健全でいいと思うよ。むしろそこまでがっついているやつって気持ち悪いだろう。
学園でもあんまり見ないしさ。割と普通なんじゃないかな。
「健全でいいとか考えとるじゃろ。健全な高等部男子はもっと女体に興味があるものじゃ」
「そういう発想で生きているやつ、猿みたいで嫌いなんだよ」
「物事には限度と相手があるわ。アジュは反応してもいいのよ」
「そうだそうだー」
よくわからんなあ……自制できない育ちの悪いやつってイメージしかない。
だから自然と考えなくなる。女にもだが、エロ男への嫌悪感もあるのだ。
「仲良くなってるんだから、ちょっとくらいいいと思うけどなー」
「うむ、家でのおさわり解禁でよいじゃろ」
「触ってどうするんだよ?」
「胸とか柔らかいわよ」
「んなもん見ればわかるだろ」
他人の体に触るのは失礼なんだよ。
べたべたひっつくのも好きじゃないし、欲情したから触るとかゲスにも程ってものがある。
「ある地点を越えると、攻略難易度が劇的に上がるわね」
「そこまでたどり着けたことが奇跡じゃからのう……ゆっくりやっていくしかないじゃろ」
「うーん……そうだ! せっかく水着なんだから、それを押していこうよ!」
なーんか悪巧みが始まりましたよ。
俺をプールに放置して、ひそひそ会議を始める三人。
「まず私がいやらしさ無しでやってみるわ」
イロハだけがプールから上がり、俺を呼ぶ。
「アジュは上がらずにそこから見るの」
このプールは水が俺の胸にギリギリ届くくらいまである。
必然的にプールサイドに立っているイロハを見上げる形になるわけだが。
「胸が大きいシルフィや、あまりにも小さいわしにはできぬ、ほどほどにあるイロハだからこそ可能な芸当じゃ」
水に濡れたままのイロハがこちらを向く。
やっていることはただそれだけ。
「濡れたスク水と、滴る水と、完璧なスタイルの女体というものを鑑賞するのじゃ」
どうやらエロ無しで女体を鑑賞させるという試みらしい。
なるほど。光が身体を照らし、水が反射させ、そこに佇むイロハは綺麗だ。
これも素体が圧倒的美少女であることが強い。こいつら本当にスペック高いな。
「おー……確かに綺麗というか、美術品みたいな感じになるな」
「そういう褒め方ができるのね」
染みのない滑らかな肌で、戦闘もするからか、引き締まっていてだらしない部分がない。
かといって筋肉ムキムキでもないところが、この世界の不思議なところだな。
「成功かしら」
「うむ。上出来じゃな。で、次はわしじゃ」
リリアがプールサイドに座り、足を膝まで水に浸けている。
イロハはプールに沈む。恥ずかしかったのか、少し顔が赤い。
「ほれほれ、もっと近くに寄るのじゃ」
「うお、っと……急に引っ張るなよ」
首にリリアの両足が巻き付き、腹のあたりに顔を埋めることになる。
「この水着独特の肌触りと、胸がなくとも柔らかいということを認識するのじゃ」
言う通り奇妙な感覚だ。そして胸がないくせに妙に柔らかい。
完全に硬いと思っていたが、こういうものなのだろうか。
「いいなーあれ」
「ここは我慢よ。まずは慣らす必要があるわ」
水の冷たさと、体温の暖かさが不思議なものだ。
悪いもんじゃない。相手がリリアだからだろうけれど。
「はい終わり。いつまでもくっついていられるか」
長くくっついているのが性に合わない。引き剥がして距離を取る。
俺がここまで嫌悪感も抵抗もなく他人とくっつけるとは、本当に攻略が進んでいるのか。
「ふむ、まあこんなもんじゃろ。では普通に遊ぶのじゃ!」
そして本当に普通に遊んで、飯食って、風呂入って寝る時間。
今日は誰も部屋に来ない。プールで遊んだことを思い出すように言われた。
なんか妙に疲れたし、もうさっさと寝てしまおう。
『マスター、今お時間よろしいですか?」
寝る前にアスモさんから通信が入る。
召喚獣と通話できるようにしておいたっけ。
「……切り忘れたか。なんです?」
普段は余程のことがない限り連絡しないように言ってある。
別世界の技術であり、おおっぴらに使うもんでもないからだ。
『そちらにいる、神に詳しい魔王か、マスターのお知り合いで神様がいたら、今から送る似顔絵を見せてください』
「今から送る?」
召喚獣とマスターが許可して、ある程度の魔法知識と魔力があれば可能らしい。
なにやらトラブルの予感だな。
『妙なんです。神格を持った人間を複数見ましたわ。嫌な感じ……』
「とりあえず送るだけ送ってください」
『ありがとうございます、マスター。明日また同じ時間に連絡いたしますわ』
魔王の勘というものがどの程度なのか、興味本位で送ってもらう。
その一枚目を見て、俺は今日一番驚いたかもしれない。
「………………ゲル?」
間違いない。かつて俺が殺した、ヴァルキリーゲルそのものだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます