敵に知り合いがいるとめんどい

 ゴーレム補充完了。別グループは中央の拠点へ攻め込んでいった。

 ついでにクラリスもついていったので、ここには四人とゴーレムさんだけ。


「さーてどうしてくれようか」


「クラリスさんが抜けたのが痛いねー」


「つってもヴァンとソニア止めるなら必須だろ」


「勝手を知っておるものが必要じゃからのう」


 ヴァンが中央拠点から他へ行かないよう、足止めしていて貰おう。

 その間に楽して時間を稼いで終わらせることが目的だ。


「ここを無人にすると厳しい」


「かといって四人一緒じゃないと意味がない。難しいわね」


「正直さ、中央がどっちのものでもないってことはだ。左右に人員振れる余裕とかないんじゃないか?」


 ヴァン相手に粘っているということは、かなりの人数を割いているか、もしくは匹敵するほど強いやつがいるかだ。


「拠点の強化連結も一役買っておるのう」


「なんだそりゃ?」


「さっきから追加された要素じゃ。本拠点からの道が青いじゃろ? これでゴーレムが強化されておる」


「より少ない魔力で動いてくれるみたいね」


 試しに数体動かしてみると、なるほど確かに魔力消費量に差が出ている。

 省エネは素直にありがたい。

 中央への道と、別グループが進んでいった道へ続く門の防衛を増やしておこう。


「進んでいった連中次第だなこれ」


「次の拠点は赤のまま。中央はまだどっちのものでもない……難しいね」


「何処かで一斉に攻撃してくるはずじゃ」


「なぜ言い切れる?」


「本拠点を除けば拠点は九個。戦闘中が二個。青軍が四個。赤軍が三個。このままでは赤の負けじゃ」


 当然だが負ければポイントは低いはず。

 時間無制限でもないだろうから、必然的にどこかで突撃かけるしかない。


「警戒強めて待機だな」


「罠も仕掛けておきましょうか」


「それがよい。ではしばし罠満載拠点の作成といくのじゃ」


 簡単な罠の作り方をイロハに、魔法トラップをリリアに教わる。

 四人の知識向上に繋がるのでちゃんと聞く。


「サンダーシードやスプラッシュに似ているんだな」


「近いというか、おぬしは罠や小細工に発想が行きがちじゃろ」


 知らず知らずに俺が罠に寄せているのか。

 正面から戦うタイプじゃないからな。納得。


「頭に浮かばないってことは、この魔法を使える段階じゃないんだな」


「そのうち思いつくじゃろ。気長にやればよい」


「あれ? 誰か走ってくるよ!」


 シルフィの声に一斉にそちらを見る。

 先の拠点に進んだ連中っぽい。遠目だが青色が確認できた。


「鎧は青か」


「偽装は禁止。味方じゃな」


「お、まだいた。おーい敵が追ってきてる! 拠点に入れてくれ!」


 大声出しながら、こっちへ全力疾走してくる。

 戦闘の痕跡もあるな。そしてどうやら敵も来ているらしい。


「さっき見た顔じゃな。念のため援護射撃用意じゃ」


「はいよ。ゴーレムどけるか」


 拠点入り口をがっちりガードしているので、ちょっと横にどかす。

 遅れて赤軍が追ってきている。攻撃魔法撃ってきやがった。


「これたどり着けるのかな?」


「厳しいわね。壁にするゴーレムも無いみたいだし」


「しょうがないな……」


『エリアル』


 エリアルで上空へ飛ぶ。

 地上からじゃ味方とゴーレムが邪魔だ。


『ショット』


 ショットキーでアサルトライフルもどきを二個出しまして。


「ほーれほれほれ」


 両脇に抱えて乱射する。弾丸は俺の魔力だし、大した威力はない。

 だが問題ないのさ。敵が足止めできりゃいいからな。


「うおお!? なんか撃ってきたぞ!?」


「ゴーレムで防御を!」


「上からの攻撃は無理よ!」


 敵さん大混乱である。

 上空を飛び回る俺に魔法を当てようとすれば、立ち止まるか狙いをつける、つまり追っている敵を逃がすことになる。

 だが無視して追おうにも、人間だけを狙い撃ちして飛び回ればいいわけで。


「誰かあそこまでジャンプで届く?」


「やってみる!」


 おっと、超人が混ざっているか。結構高く飛んでいるのにいけるらしい。

 そんなことは想定内だけれどな。


「リリア」


「もうやっておる」


 リリアの作り出した魔法陣が壁に浮かぶ。

 赤軍を感知し、一定の距離まで下がらないと攻撃魔法を乱れ撃つ素敵仕様。


「ナーイス」


 ジャンプってのは足場がないとな。さらに俺も距離を取って乱れ撃つ。

 地味にガードキーも発動しているので、まず落とされないだろう。


「ええい一回下がるわよ! 追うの中止! こっから先に行かなきゃいいわ!」


 俺も深追いはできないことを読まれる。だがそれでいい。

 敵の足が止まってくれりゃいいんだから。

 この間に味方は無事拠点内へ。俺も中に入って魔法を解除。


「は……はっ……はあぁ……助かったわ……」


「わりい、あんがとよ」


「駄目かと思ったよおぉぉ……」


 肩で息をしたり、その場にへたり込んだり、水分補給していたりと多彩な生き残りさん達。合計七人か。半分くらい減っているな。


「あなた飛べるのね。飛行魔法?」


「まあな。限定的だけどできるんだよ」


「それで偵察とかできる?」


「無理。撃ち落とされたらフォローできんだろ。魔力消費して飛んでいるから、あんまり長時間できないんだよ」


 これ無制限じゃないんだよ。鎧着ていけば別だけど。

 しかも目立ちまくるので嫌です。知らない人の提案は却下。


「とりあえずこのゴーレムの数だ。数人で突撃してくることもあるまい。我々は少し態勢を整える必要が……」


 相談中に突然の爆発音。まーた面倒事ですよ。


「爆発!?」


「壁に攻撃魔法ぶちかましておるようじゃな」


「魔法陣ごとぶっ壊すつもりか」


 強硬策に出やがった。悪い手段じゃないな。

 近づけないなら、遠くから壊せばいい。


「上だ!!」


 拠点の壁を登って入ってきやがった。

 ジャンプで届くと言っていたやつもいるし、学園は常識通用しないな。

 敵は十人くらい。とりあえず迎撃にゴーレム発進。


「ちょっと下がるか」


 敵の攻撃魔法が入口付近に飛び続けている。

 あれじゃ本隊も入ってこられないだろ。どういうつもりなんだか。


「注意して。爆風に紛れて入ってきているわ」


「そりゃしんどい。おっと、なんか飛んできたな」


 待機させておいたガードキーの結界を発動。

 その直後、二本のクナイが結界に当たって弾かれた。


「お命頂戴! って……うっげあじゅにゃん!? リリアちゃんは!? リリアちゃんはいるの?」


 ももっちだ。見かけなかったし、やはり敵軍か。

 投げられたクナイはイロハによってほぼ撃ち落とされていた模様。


「わしがどうしたのじゃ?」


「おぉ! よかった……あじゅにゃんがフリーだったらどうしようかと」


「どういう意味だ」


「いーいあじゅにゃん。この戦闘は人殺しとか駄目なんだよ?」


 物凄く優しく懇願するように言われる。

 何だよ俺はどういうイメージなのさ。


「わかっとるわ。なんだそのリアクションは。俺を何だと思ってやがる」


「ここは私に任せて」


「フウマが相手かー。忍者スキルで負ける気はないんだよーい」


 高速忍者大戦が始まったので退避。

 任せておいていいだろう。下手に加勢しない方が無難だ。

 離れようとした瞬間、入り口のゴーレムをふっ飛ばしてなだれ込む敵軍。


「突撃だ! このまま押し切って……うわアジュ!? シルフィ達は?」


 今度はホノリだ。やはり友人だからか、ももっちとホノリはセットで行動しているのだろう。


「いるよー! 簡単に拠点は渡さないよ!」


「そうか、いてくれてよかったよ。アジュが野放しかと……」


「ちょっと待て共通認識なのかそれ?」


 俺の知らないところで危険人物認定されている気がする。


「最初に言っておくよ。殺さなきゃ何をしてもいいわけじゃない。足を打ち抜いておこうとか、念のため両腕を切り落とすとかもダメだから」


「知っている。リリアにも言われた」


「ルール無用の残虐ファイトは控えるようにと言ってあるのじゃ」


 んなこと言っている間にも着々と敵さんは侵攻しているわけで。

 それなりに罠で数が減るも、ゴーレム犠牲にすりゃ強行突破できなくもない。

 そこでちょっとアイデアが浮かぶ。


「敵軍を爆弾に変えて送り返すのはセーフか?」


「私はアウトだと思うぞ」


「おそらくダメじゃな」


「そうか……結構厳しいな」


 戦場で敵のガキとか女を爆弾化して帰すって、物凄く効率いいと思うんだけどなあ……うまくいけば敵陣に大ダメージだし。


「やっぱり危険人物じゃないか……普通に戦ってもらおうか」


「ああ戦ってやるよ。シルフィがな」


「いざ勝負! いいとこ見せるよ!」


 乱入してホノリのパイルバンカーと鍔迫り合いを始めてくれるシルフィ。

 近くに待機させておいてよかった。


「手加減をしてくれると嬉しい。私はサイクロプスほど強くはないからな」


「やれるだけやってみる!」


「頑張れ」


「ならば加勢しよう、リウスよ」


「うげ、ファーレンスそっちかよ」


 マオリ・ファーレンスさん乱入。これはめんどい。両方近接型だ。

 俺との相性が悪すぎる。


「ではわしが入ろうかの」


 リリア乱入。いかんぞ、もう手持ちのメンバーがいない。

 俺は戦いたくないっていうか勝てないだろ。


「気をつけろよマオリ。見た目に反してリリアが一番強いよ」


「ほう、やはり只者ではないか」


「うむ、存分に味わうとよいのじゃ」


 高速移動で背後に回り、敵二人を俺から遠ざけるため蹴り飛ばすリリア。


「やっぱ接近戦もできるのか……」


「槍で防いだというのに手が痺れている……その体でどうやって……」


「たまには運動もよいじゃろ。かかってくるがよいぞ」


 こうしてゴーレムを操作しながら、ギルメンの戦いを見守ることにした。

 いいんだよザコゴーレムの駆除は続けているから。

 役に立っていないわけじゃない。応援してやろうじゃないか。

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