特殊鉱石とガーディアン

 剣に必要な特殊鉱石をゲットするため、学園内の古代遺跡へとやって来た。

 暑い中わざわざ徒歩ですよ。途中に何度も中間地点があり、通行人もそこそこいるため、迷子になることはないのが救いか。


「虫よけが存在するのが救いか」


 これが本当に助かる。やっぱ文明レベルが低いわけじゃないな。

 どう考えても中世ヨーロッパ風より断然上だ。

 和洋両方あるし、アラビアンな建物もあったし。


「ここだねー。すーいませーん」


「おう、採掘かい?」


「おうさー!」


 係の人に話しかけているももっち。

 遺跡やダンジョンには、大抵入り口で番をしている人がいる。

 採掘場なんかは、許可された量以上に持ち出すやつがいないように、出入り口でチェックされるわけだ。


「結構奥まで行くねえ」


 許可証を確認しているお兄さん。どうやら先は長いらしい。

 ついでにマップもらえた。ありがとうお兄さん。


「危険なんですか?」


「途中までは安全だよ。奥の方は魔物が湧き出すこともあるから、無理だと思ったら逃げなさい」


「はーい」


 俺・リリア・ホノリ・ももっちの四人パーティーだし、まあ死なないだろう。


「では出発じゃ」


 遺跡は石造りの小さな町といった感じ。

 川が流れており、その左右に森林に侵食された石の家みたいなものがある。


「よし、ちょっとは涼しくなるな」


「目的の石はこの先じゃ」


 なかなか景色が綺麗というか、古代遺跡ってちょっと面白い。


「無駄にロマンがあるな。嫌いじゃないぞ」


「悪くないのう」


「転ばないように気をつけるんだぞ。結構危険だからな」


「はいよ、目的の石ってどこにある?」


「ひとつは祭壇の間だな。もうひとつは鉄や銅の掘れる場所がある」


 しばらく歩くと、城というか神殿のようなものが見えてきた。

 当然昔のものなのでぼろぼろだが、それでもかなり大きい。


「おおー、誰かの城か?」


「特殊鉱石を作り出す神殿ってところらしい」


 なにやら壁画っぽいものや、独特の模様が柱に描かれている。


「遺跡から行くんだな。俺はこっちの方がいいけど」


「鉄は言ってみればどこでも手に入る。ガーディアンを倒すのが先さ」


「ガーディアン?」


 遺跡には不思議な力があるらしい。

 それが魔物を産んだり、それを倒すガーディアンを作ったりするんだと。


「なぜ学園が対処しておかない?」


「無限湧きじゃよ。それに貴重な鉱石じゃ。番人すら倒せぬ相手に渡っても、無意味だということじゃよ」


「遺跡の特殊性から、あまり人間が手を加えない方がいいんだよ」


 なんか事情があるらしいな。まあいい、出てきたら対処しよう。


「ストップ、出てくるよ。武器出して」


 ももっちの索敵能力は助かる。忍者とかレンジャー科の人間って凄いな。


「確かに。なんか物音がするな」


 曲がり角の先から音がする。

 少し離れて構えていると、黒い犬みたいな敵が壁に叩きつけられ、そこをレーザーっぽいもので焼き払われた。


「来るよ!」


 それはなんというか……生き物かどうかすら怪しかった。

 遺跡の壁や柱と同じ素材で作られた球体。

 それが宙に浮いて、真ん中の一つ目がこちらを見ていた。


「ゴーレム的なやつだと思ったら……」


「さ、戦ってみるのじゃ」


「俺が!?」


「がんばってあじゅにゃん!」


「いやいや、きっついだろ」


 言っているうちに目からビーム出しやがった。

 目そのものが小さいからか、よく見て避ければ当たりはしない。


「面倒な……サンダースマッシャー!」


 殻のような部分が開き、目玉の手前で壁になる。

 あの球体はいくつもの部品でできた、パズルっぽいものらしい。


「ザコにそんな創意工夫はいらん!」


 どう見ても硬いぞ。俺の技量でできるのかね。


「外壁ぶっ飛ばしてみるさ」


 ホノリのデカい手甲から炎が吹き出す。

 試験でも見たな。パイルバンカーと爆破の追い打ちもできるパワー型だ。


「せいやああぁぁ!」


 敵の盾をまとめてぶち抜いている。流石の威力だ。


「次はもうちょい柔らかい敵がよいのう」


 リリアのビームで目玉を焼き切って終わり。

 基本このチームは強いのだ。


「この調子でいってみよう!」


 順調に進み、次は二足歩行の木だ。

 人間に擬態しているつもりなのか、両手は枝やツルで構成されている。

 根っこが足なんだな。


「あれは燃やせそうだな」


「ついでに剣の練習もするのじゃ」


「接近戦したくないんだけどなあ。サンダーフロウ!」


 二匹の木人はゆっくりとこちらへ歩き、その腕を伸ばしてくる。


「伸びるのかよそれ」


「油断しなければ問題ないのじゃ」


 それほど速くはない。横にずれて切ってみる。

 ちょっと抵抗があるけれど、電撃で焼ききった。


「やっぱ便利だな魔法」


 怯んでいるので隙を突こう。

 サンダードライブで敵を足元から焼く。

 同時にダッシュ。剣に伝わる魔力を操作し、純度を上げる。


「雷光一閃!!」


 すれ違いざまに斬りつけ、見事木人二匹は真っ二つに弾け飛んだ。

 剣と一緒に。寿命だったのだろう。刃が砕けてしまった。


「うーわ壊れやがった」


「寿命だな。よくもった方だよ」


「電撃の刃とかできないの?」


「サンダーソー……無理。きつい。鍔迫り合いとかできないし」


 魔力を刃にする。言葉にするのは簡単だが、刃に流せばいいのと、ゼロから形を作って維持するのは手間と労力が違う。しんどい。


「さっさと鉱石取って帰るぞ。まだあの剣とクナイで立ち回れる」


「ついたのじゃ」


 そこは大きな祭壇のある場所だった。

 ピラミッドの先端がなくて、祭壇が生えているといえばいいだろうか。


「あれか。綺麗だな」


 祭壇中央では、青く光る特大の結晶が、丸い器に入っている。


「ゆで卵置いておくやつみたい」


「やめろロマンが消える」


「こいつは特殊な鉱石で、遺跡そのものから流れる魔力や、祭壇の特殊な構造によって蓄積され続ける。多少削っても増えるのさ」


「なーるほど。それを守ってるのがあいつなわけか」


 高い高い天井に張り付くガーディアン。

 今回のは長い六本の腕が付いている。


「降りてくるぞ!」


 祭壇から離れ、開けた場所で戦闘態勢に入る。

 いやこれ勝てるのか? 十メートルくらいあるぞこいつ。


「当たりの部類だね」


「マジか」


「もっと大きくて強烈なのが出る場合もあるのじゃ」


 どうやら運のいい方だったようで。やるっきゃないか。


「よし、任せたぞ!」


「いや戦えよ!? アジュの剣探しだろ!」


「それを言われると痛いね」


 アホなこと言ってたら、でかい腕の一本からビームが飛んでくる。


「あれビーム出んの!?」


「水遁、氷結疾走!」


 敵までの地面が恐ろしいスピードで凍りついていく。

 動きを封じるつもりだろう。


「よっしゃ一斉攻撃だ」


 敵の腕、それも肘にあたる部分から蒸気が吹き出し、その巨体が赤く染まる。

 同時に氷がどんどん溶け始めた。


「えぇ……その対応力はなんだよ」


 しかも結構速い。こっちにがっしゃがっしゃ音を立てて迫る。


「ほいほいっと」


 クナイに電撃を流して投げてみる。

 まあ当然ながら弾かれた。硬いボディをお持ちですね。


「サンダースマッシャー!」


 これもちょっと怯ませて終わり。ううむ相性悪いのかも。


「もっと熱くしてみよう! 火遁、業火絢爛!」


 敵の足元から火柱があがる。炎が渦巻き、飲み込んでいった。


「おお、これはいけるんじゃね?」


 熱が限界を超えたのか、体に空いた穴からも煙が吹き出している。


「効いたみたいじゃのう。しかし、ちょいと熱すぎるのじゃ。ほいっと」


 リリアが扇子を開き、炎ごと氷漬けにする。


「これで脆くなっておるじゃろ」


 それでもまだわずかに動いている。これはめんどいな。

 氷から足だけ出ているのが、マヌケっぽくもキモくもある。


「んじゃもっと脆くしてやる。リベリオントリガー!!」


 最近ちょっと安定したリベリオントリガー。

 集中して一気に肉薄。脆そうな足から蹴り飛ばす。


「おおおおおりゃあ!!」


 人体からの雷撃放射で敵の傷口を更に広げ、全ての足を蹴り壊した。

 やはりパワーもスピードも格段に跳ね上がる。要練習だな。


「おおー! あじゅにゃんきれーい!」


「なんだあれ……かなり高度な魔法だぞ。いつの間に……」


「あやつも成長しておるのじゃよ」


 この状態はあまりもたない。これで充分だろう。

 急いでみんなのもとへ戻り、魔法を解除。


「あだだだ……まだ安定しきってないな。んじゃホノリ、後はよろしく」


「任されてやろうじゃないか。はあああぁぁぁ!!」


 外装を剥ぎ取られ、無防備な目玉に向け、ホノリのパイルバンカーが突き刺さる。


「爆砕!!」


 ど派手な爆発音を響かせて、爆裂魔法の追い打ち。

 ガーディアンは見事粉々に砕け散った。


「よーしナイスだ」


「うむチームワークの勝利じゃな」


「やったね!」


「おつかれ。あとは鉱石をちょっとだけ失敬して帰るだけだぞ」


 今回で砕けてくれて助かったかもな。次で剣がないと困るし。

 ホノリの作業を手伝い、比較的安全な道から退散した。

 あとは武器屋へ戻るだけ。どうなるのか楽しみだ。

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