わくわく夏の虐殺祭り

 よりによってリリアに手を出す不届き者は、楽しくなぶって殺しましょう。


「隊長! 貴様よくも!」


「そのクソ女に味方したのが運のつき。同じ目にあわせてやるよ。親衛隊は、今日をもって解散だ」


「黙れ!」


 こちらに向かってくるカスども。やはり慈悲はいらないと見える。


「黙るのはお前らだよ。クズが」


 下顎を乱暴に掴んで引きちぎってやる。骨ごとがっさーっとね。


「あが!? ぎいいぃぃぃ!!」


 のたうち回るゴミクズさんたち。

 ペナルティとして右目をえぐっておきましょうねー。


「いぎい!? ああああぁぁぁ!!」


「なにやってるのよ! 早くその男を殺しなさいよ!!」


 クソ女さんが回復魔法で復活していらっしゃる。痛めつけて差し上げましょう。


「あーあ、始まってしまったのう」


「止めなくていいのか? アジュを止められるのはルーンだけだぞ」


「わしらには攻撃せんよ。死にたくなければ、わしの側を離れんことじゃ」


「そもそもプロ使って攻撃しちゃってるもんねえ。同情の余地なしだねこりゃ」


 手加減しないとすーぐ身体が飛んでいくなこいつら。

 殴った箇所は破裂するし、振り払えば千切れ飛ぶ。脆いね。

 これであんな粋がった台詞吐いてやがったのか。


「もうちょっとこう……弱らせるだけに留めるとかしてやれって」


「まだ誰も死んでないぜ。優しい方だろ」


 四肢がもげ、右目を潰されても、死人はゼロ。

 クズどもは俺の優しさに感謝して欲しいわ。


「忍者はもっと効率よく弱体化する方法を知ってたりするよー」


「こうか?」


「うぼえあ!?」


 親衛隊副長とかいうクズの胸に手を突っ込み、肺を片方もぎ取ってみる。


「げっ、うご……えああ……あ……ごばっ!?」


「弱体化って言っただろ!?」


「人間の肺って二個あるんだぜ。片方無くなっちまえば超弱体化だろ」


「余計なこと言わん方が良いのう。完全にキレておる」


 結構マジでイラついています。

 なんの罪もないリリアに攻撃しやがって。まだまだこんなもんじゃ終わらないぜ。


「忍者隊! グズグズしない! かかれ!!」


 プロは学生とは動きが違うね。格段に速い。

 でもイロハの方が百万倍速いな。


「こんなもんかい?」


 振られた刀を全て拳で砕いてやる。

 忍者さん一匹捕獲。背後から首根っこ掴んで持ち上げ、背中に掌底ぶちかます。


「忍法・血肉目潰しの術ってな」


 掌底の衝撃が体内を駆け巡った忍者の腹が爆裂。

 迫る親衛隊に向け、血と臓物の目潰しが降り注ぐ。


「う……うわああああああぁぁぁぁ!?」


「いやっ!? いやああぁぁ!?」


 敵さん大混乱。殴り飛ばして骨を砕き、倒れた雑魚は踏み砕く。

 さっきの忍者も最低限の回復はしてやったから死んじゃいない。

 死人ゼロさ。まともな生活が送れるかは知らんがね。


「いい悲鳴だ。謝罪なんてされても満足も信用もできん。その分たくさんの悲鳴を聞かせてくれ。千の謝罪の言葉より、一の絶叫こそが本物だ」


 忍者も数が減ったな。もちろんフウマがいないことを確認して攻撃している。

 どうやら別の里の忍者っぽいな。


「バカな……我らが手も足も出んとは」


「撤退する!」


「逃さんよ。そっちの連中もな」


 手刀の真空波で、逃げようとしたやつ全員の両足を切断した。

 逃げる足のなくなったやつに、雰囲気込めてゆっくり歩み寄る。


「あうっ!? うあ……やめ……来るな! やめっ……」


「ると思うか?」


 まとめて上空へ蹴り飛ばす。

 俺もその後を追いジャンプ。光速拳による連打で次々と地面へ戻してやる。


「ウオラアアァァァ!!」


「ぎゃばあ!?」


「べへえぇ!!?」


 地面に何度も叩きつけられ、バウンドしては血飛沫を撒き散らす雑魚ども。

 とりあえずプロの忍者さんは、お仕事でやっただけなので、端っこに寄せて回復しておこう。

 まだ足りんな。首謀者が残っている。


「さてどうする? もうお仲間は残り少ないぜ」


「いや! こっちこないで!」


「それこそ嫌だね」


 殺さないよう細心の注意を込めて、その綺麗でもない顔をぶん殴る。


「うあぁっ!?」


「お前のような女が大嫌いでね。殴ると心底スカっとするよ」


 立つこともできず、仰向けに倒れたクソ女の顔を踏みつけ、ツバを吐きかける。


「どうして……どうして女の子にこんなひどいことできるのよ……最低よあんた」


「うーわ……その言い草にはわしもどん引きじゃ。先に攻撃してきたじゃろ」


「ないな……それはないぞ。私も引いた。殺せと指示しておいてどうしてって……」


「あじゅにゃんの狂いっぷりを上回る人っているんだね」


 クソ女はクズ女でもあったようだ。

 ここまでやっといて女だからで許されると思ってやがるのか。

 なぜそこまで反撃されないと確信しているのだろう。やはりメスはクソだな。


「この……ファイアランス!」


 クズ女の火炎槍をへし折り、その右手首を掴んで握り潰す。


「うあああぁぁ!?」


 手首の次は腕を掴み、同じく骨まで握り潰す。

 その次は肘を掴んで握り潰す。その次は肩。肩が終わったら左手首。

 両腕の骨を数回に分けて粉々に砕く。


「いひい!? いっ……やああぁぁ!? あぎっ!? あああぁぁぁ!?」


 鼻を削ぎ落とし、耳を引きちぎり、歯がなくなるまで何度でも殴る。

 途中からうめき声を上げるだけになった。


「つまらん」


 痙攣するだけになったクソ女に、もう興味はない。遊び飽きた。


「そこにいるやつ、出て来い。敵じゃなきゃ危害は加えない」


「お楽しみ中に失礼いたしました」


 紫と灰色の髪に真紅の眼。黒いスーツで長身の男。年上かな。

 二十代後半っぽいが、歪んで暗い魔力だ。普通じゃない。


「神か魔族だな?」


「正解です。アジュ・サカガミ様ですね? 私は冥王ハーデスの友人兼腹心、タナトスと申します。お見知りおきを」


「はあ……どうも。サカガミです」


 とりあえず敵意はないっぽいので。お辞儀にはお辞儀で返す。


「冥界の王とその友人か。いったい何の用じゃ?」


「本題の前に、その死にかけの魂、不要ならば頂いても?」


「突然人が消えると俺が怒られたりしそうですし」


「手続きはこちらと学園で終わらせておきますよ。先程からチラチラ見てらっしゃるフウマの皆様と一緒にね」


 フウマ忍軍が集まって来ているのに感づいていたか。

 こいつも強いんだな。面倒事じゃなきゃいいが。


「んじゃ差し上げます。お残しはいけませんよ」


「はっはっは、では平らげますか」


 タナトスの人差し指に、赤い飴玉のようなものが現れた。

 倒れているカスどもが、その球体へと飲み込まれていく。


「あ、倒れていない人間は無関係なので、あっちの連中とかダメですよ」


「承知にございますとも。敵対したくはありませんからねえ」


 やがて血肉の破片すらも飲み込み。飴玉掃除機は親衛隊を全て飲み込んだ。


「はい、いただきます」


 サイズの変わらぬ赤玉を口に入れ、かりかりと飴を噛み砕くような音がする。

 食い物なのかよ。見た目飴っぽいけどさ。


「ふう……まっずいお味だこと。魂が腐っていますねえ」


「しかもまずいんかい」


「ごちそうさまでした。さて綺麗になったところでサカガミ様。あなたを秋のラグナロクにご招待いたしとうございます」


 懐からチケットを出すタナトスさん。

 手触りはプラスチックみたいだ。結構硬い。

 チケットには『秋のラグナロク特別招待券』と書かれている。


「ラグナロク?」


「神々と魔王やらが集う超大規模な運動会じゃよ。人間もゲスト参加できるものじゃが、それは観戦チケットじゃな」


「お詳しいのですね。サカガミ様のご活躍、私共にも伝わっておりまして、是非にと」


「あんまり物騒なのはなあ……」


 神との戦いは面倒だ。こっちは夏休みなんだよ。のんびりさせろ。


「観戦だけなら安全でございますよ。同郷である問題児エリスを始末していただいたお礼に、楽しんで欲しいと」


「まずアジュの話をどこで聞いたのじゃ」


「ポセイドンより酒の席で。ポセイドンもハーデスもクロノスの血縁でございます」


 あいつなにやってんだよ。詳しく聞く気が起きん。どうせアホな話だ。


「そちらの方々もいかがです?」


「え、いやうちらは遠慮しときます」


「触れてはいけない領域ってやつだね!」


 ホノリとももっちを勧誘するのはやめてあげて。普通の人間だから。


「そう……ですか。おかしいですねえ。神の血族だと思ったのですが。あなた、遠縁に神族がいたりは?」


「ちょっとよくわかりません」


 ホノリも神族の血が入っている可能性ありか。

 俺のまわりはそんなんばっかりだな。


「まあ予定がなかったら考えます。こっちも色々忙しいもので」


「はい。私の仕事はチケットを差し上げるところまで。ですが、お暇でしたらぜひ。おいしいお料理も用意しておきます。それではごきげんよう」


「うむ、さらばじゃ」


 黒い霧に包まれて、次の瞬間には消えていた。

 謎多き人だなタナトスさん。


「まあいいや。武器屋いこうぜ」


「いいのか!?」


「運動会は秋だろ? まだ遠いし。あと外が暑い。室内に行きたい」


「やれやれじゃな」


 無駄な邪魔も入ったが、鎧を解除して四人で武器屋へ向かう。

 異世界のお買い物は楽しみだ。今日は何が見つかるかな。

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