第168話 食料調達とバトルのお誘い
パイモンとかいうゴスロリ魔王を連れて飯を調達しよう。
「んじゃ行きましょうか? 腹が減っているんで急ぎましょう」
「はいはーい。一緒に行きますよー」
「またアジュがどこか行くよ……」
「心配ない。パイモンさんは……」
マコ達がなにか話しているが、肉が食いたいのでスルー。
「肉を探しましょう」
「敬語はいいですよー。お肉お肉ー」
「ここ、ホテルの立食形式か? バイキングに近いな」
「かしこまっていると疲れるからですねー」
鉄板でステーキを焼いている場所を発見。焼いてくれるのか。いいなあれ。
「おお、おにくはっけーん」
「これはこれはパイモン様」
パイモンだとわかるらしい。有名なんだな。こいつマジで魔王か。半信半疑だったよ。
「お肉二人分お願いしますー」
「はい、焼き加減は?」
「強めで!」
「普通でお願いします」
肉ゲット。じゅうじゅう音たてやがって。さっさと食いたい。
「あとは……米がないな。麺類も見当たらないし……おかずをなにで食うんだ?」
「こっちにパンがありますよー」
「んじゃそれ確保だ。カロリー少なめの煮物とか持っていってやろう。こっちのは野菜炒めか?」
「さては高級品に縁がないですね?」
「うっさいわ。肉と野菜は俺が確保するから、別のもん頼む」
皿を両手に持って移動。その間も魔族の人に声をかけられているパイモン。
俺はマコの四天王ですと説明すんのがだるかった。
アモンさんの名前出してマコへ繋ぐ。
相手の表情の動きから、好意的なやつと、混血への見下しに別れていた。
「あいつ苦労人だな」
「ハーフだろうと強くて立派ならいいと思いますけどねー」
「まったくだ。さてパイモン隊員。飯調達部隊として足りないものはなにかね?」
「はい隊長、マコさん達にはフルーツがいいと思います」
「いい判断だ。ただしあくまでデザート。少なめにするように」
「了解です!」
パイモンが人懐っこいからか、適当に話している。雑に扱っているわけではない。
この方が話しやすいし、こいつも楽しそうだ。
「隊長、確保しました」
「ご苦労……誰? 知らない人連れてくるなよ」
女だ。かなり濃い黒髪をした二十代くらいの女。どうでもいいか。
「バティンさんでーす。お皿を運ぶメンバーとして呼びました」
「よろしくお願いします」
「人に迷惑をかけるなパイモン隊員」
「いえいえ、パイモン様が楽しそうでなによりです」
いいのか……わからんなあ。魔族は見た目で歳が想像できないのがめんどい。
この人はパイモンの部下か?
「じゃあよろしくお願いします。帰還するぞ」
「迅速にお届けしましょう」
「てっしゅー」
で、マコ達のところに戻る。なにやら女と話し込んでいるな。
「なにやってんだ?」
「あ、アジュおかえりー」
「遅いではないか。早く肉をよこすのじゃ」
「はいはい。並べるぞパイモン隊員」
「はい隊長」
テーブルに皿を乗せてなるべく静かに手をつけようとした。
「ちょっと……この男性は……パイモンさんのお連れの方ですか?」
ピンクの長髪美女がなにか困惑している。綺麗な青色の目だ。
そもそも腹が減っているので肉が食いたい。
「いえ、私の四天王です」
「マコさんの……なぜ隊長と?」
「ご飯調達部隊の隊長さんですよー」
「意味がわかりません。バティンさんまでなにを……」
「パイモン様が楽しそうでしたのでつい」
そこからまた無駄に長い自己紹介地獄である。飯食わせろや。
どうやらこの桃色女はアスモデウスさんというらしい。魔族って女が多いのか?
「そう、マコさんの……それはそれは」
とりあえず飯食いたいんだよ。さっさとどっか行けや。邪魔だよ。
「まあよろしくお願いしますよ」
「ええ、よろしくお願いします」
この女はどこか俺と距離がある。そうそう、女は俺から距離を取る。
これは仕方がないことだ。リリア達が異常なのである。
「…………ん? ああ、そういうことか」
「どうしたんです隊長?」
ようやくわかった。そういうことかよ。納得。
「なあパイモン」
「なんですか隊長?」
「お前男だろ」
「……ふえ?」
「ほう、やるなサカガミ。初見で見破ったのは、オレ様が知る限りお前だけだ」
「私も始めて見ました。マコさんの四天王は優秀ですね」
やはりか。どうせこんなことだろうと予想はしていたよ。
パイモンはなぜか俺との距離が近い。警戒心も嫌悪感もない。
それがおかしかったんだ。女特有の嫌な感じがしない。
「おおぉぉ……凄いですー! どこで気付いたんですかー?」
「違和感は初めからあったよ。原因がわからなくて困ったけどな」
ユニコーンと処女厨対決して勝った俺が判別できなかった。
俺じゃなくとも、初見で処女っぽいとか非処女だろうなーくらいは誰でも考えるはずだ。
それすら曖昧だった。つまり男だ。俺の目が曇ったわけじゃなくて安心したよ。
「ふふっ、マコさんの四天王は優秀ですわ」
「流石隊長です! 尊敬です!」
「そ、そうか? よくやったサカガミ?」
「そらどうも」
「そんなに優秀なんですもの、ぜひ私の四天王と戦わせてみたいですわ」
「それは無理です。俺は四天王最弱ですし、パーティーの場で騒ぐのは迷惑ですから」
いいから飯を食わせろよ。男だとわかって胸のつかえが取れたし、次は腹を満たす。
「そう、サカガミさんで最弱……凄く面白そう。ますます戦いたくなってきましたわ」
「お断りします」
「じゃあ隊長はボクと戦いましょう」
「仲間割れしてどうする。隊長に手間かけさせるんじゃないぞ」
「むうぅ、隊長が冷たいですー」
「俺は冷たいぞ。他人に優しくしても見返りがないと知っているからな」
もうめんどいからさっさと……取ってきた飯が六割くらい食われている。
「お前ら静かにしているなーと思ってたら自分達だけ食いやがって」
リリア達により食われているじゃありませんか。ってかマコも食ってやがる。
「大丈夫! ちゃんとアジュのお肉は確保してあるから!」
「野菜も魚もあるわよ」
「飲み物もあるのじゃ!」
ちゃーんと俺用の食事がある。別個に置かれているし、量もあるな。
「やるじゃないか。見直したぞ」
「なんでそんな上からなんじゃ」
「アジュに嫌われるようなことはしません!」
「さ、一緒に食べましょう」
「と、いうわけなんでバトルは無しで」
言っている間にアスモさんが俺の皿を持っている。
「ではこのお料理を賭けて勝負しましょう」
「俺が取ってきた料理です。負けてもそちらにリスクがない」
「ではこのパーティーが終わるまでエスコートいたします。なんでしたら一晩あなたのものにでも」
「いらないです」
なんというか……俺に色仕掛けとかバカじゃねえの。
「おい、デザート食べていていいのか? サカガミが誘惑されているぞ」
「問題ないのじゃ」
「あれは悪手よ」
「アジュのことがなーんにもわかってないねー」
やはり俺を理解してくれているのは三人だけか。
「しぶといですね。私の体ではご不満だと?」
「体は関係ないです。飯食ったら休んでさっさと寝たいんです。一晩お相手するのは、しんどいので嫌です」
「…………かつてない理由で断られましたわ」
俺の飯をパイモンがちらちら見ている。急がないと食われるだろこれ。
「ではじゃんけん一回勝負ということで。これで勝ったら俺は普通に飯を食います」
「ちゃんとした戦闘を……」
「いやです。じゃあ五回勝負です。俺が五回ストレートで勝てなければ受けましょう」
「おいおいサカガミ。いいのか?」
「ここまで譲歩したんだ。受けるか退くかしかないだろ」
しょうがないな……自分の運気だけでもちょこっと上げておくか。
鎧を着ている俺は、パワーも運も任意で上げることができる。
「いいでしょう。五回勝負で私が負けたら一晩だけあなたの」
「それはいりません。なんもせず帰ってください」
相手の運だけを殴り殺すことも可能だから、相手がどれだけ幸運に恵まれていても関係ない。
ただし、自分の運を調節して持続させるのは面倒なので、デフォルトにしていることが多い。
ぶっちゃけ鎧で殴る方が早いのだ。
「ここまで邪険にされたのは初めて……なんだか未知の感覚だわ……」
この人めんどい。ちゃっちゃと勝ってしまおう。
運の勝負なんだから、俺の実力を計ることなどできまい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます