第五章 想い出を始めよう
試験はプールで行われます
マコの依頼を完了した次の日。
試験のため、学園指定の水着もってこいという指示があった。
「今度学園に新しい屋内プール施設ができることになりました。訓練場ではなく完全なレジャー施設です。施設の耐久テストもかねて試験はそこでやります。全員学園指定の水着と装備を持って施設に集合してください。以上です」
教室でそんな話があってやってきましたでっかいプール。
遊園地レベルで広いぞここ。
「ウォータースライダーに流れるプールに滝……なんで滝? 死ぬほど種類があるな」
とりあえず更衣室から出て、一番近い案内板のある場所に集合することになっている。俺はトランクスタイプの水着着用。これが学校指定らしい。
「まだ五月だっつうのにプールて……いや暖かいけどさ」
「シーズン前に耐久テストが必要なんじゃろ」
「おーまたせー!」
「着替えるのが速いわね」
いつもの三人がやってくる。全員スクール水着だ。
学校指定なんだから当たり前だな。
シルフィはいつものベルト。イロハはパーカー。
リリアは扇子とリボンで水着である。
「男は準備が楽だからな」
「で、どうかしら私達の水着は?」
「さあ感想をどうぞ!」
なんつう答え辛いフリしてくれるんだシルフィ。
水着によって胸の大きさが更に強調されているのに、じっくり見るとかどんな羞恥プレイだ。元気っ子で胸が大きいためそれはもう揺れている。
「ほれほれどうじゃ? なにかあるじゃろ?」
水着を見せつけてくるリリアは平坦な身体だからか、ぴっちり水着が肌にくっついて身体のラインが見えている。むしろ貧乳が存分に活かされているという結果だ。
「こういう身体のラインが見えるの好きじゃろ?」
「…………いや……別に嫌いじゃ…………ないけどさ」
「間があったよ! 今すっごい悩んでた!!」
「なるほど、つまりスパッツとか好きなのね?」
「嫌いじゃないけど、スパッツは似合うやつとそうじゃない奴がいるから気をつけろ」
ぴっちりしてるの好きさ。好きだとも。悪いかちくしょう。
「私も水着だけになったほうがいいかしら?」
「いや装備は外すなよ。絶対戦闘あるだろ」
イロハも胸がないわけじゃない。むしろ全体のバランスで考えるなら全てが最高水準で整っていると言っていい。クール系美少女としてはピッタリだ。ド変態だと知る前ならイメージ通りだと思う。
しかしうちのギルドは大・中・小と揃っていて実にバランスがいいな。
「まあ……いいんじゃないか」
「絶対言うと思ってたよ……わたし達三人とも言うと思ってたよ……」
「奇妙な確信があったわね」
「いいんじゃないか禁止じゃな」
「水着ってどう褒めるんだよ? マジで水着の女と会話したことないぞ。おそらく一回もない。ガチで褒め方がわからん」
水着姿の女を褒める言葉をマジで、本気で真剣に考える。
綺麗・かわいいはいつもと同じだ。
水着装着時ならではの褒め方をしなければいけない。
で、なんて言うのさ。全員スクール水着だよ。
「わたし達が水着見せるのって初めてだよね?」
「そういやそうだな。似合ってる……って学校指定の水着に言っていいのかわからんけど嫌いじゃない」
「意外ね。水着姿を見せていなかったなんて」
「下着は一緒に買いに行って試着してるところを見せたじゃろ」
「順番ぐっちゃぐちゃじゃねえか。見せるにしてもムードとか段階を踏んでだな……」
あの時に買ったらしい下着はまだ見ていない。
もうちょいしっかり準備してからでないと決心がつかん。
「順序なんて気にしないでいいわよ。朝からディープキススタートで構わないわ」
「俺が構うわ!!」
「朝は優しく起こして欲しいな。王子様のキスって感じを希望します!」
「その希望には応えられんな」
シルフィの乙女チックさがちょっと出たな。
王子様とかに憧れがあるのだろうか。
「ディープも優しくもダメとは……どんなキスが好みじゃ?」
「キスから離れようぜ。俺がそんなことできるわけないだろ」
「希望を伝えてくれれば深夜にでも勝手にするわよ?」
「怖えよ。伝えないし希望もねえな」
「教えてくれないと嫌われない範囲で無理矢理するわ」
「無理矢理の時点で嫌うわ!!」
「キスはだめかー。急に進展したりはしないよねー」
「うむ、地道にいくのじゃ。地道にキスまでこう……囲みつつジワジワ追い詰めるのじゃ」
「話が逸れまくってるけど水着の話だろ」
話題を変えよう。水着の話もきついけど、このままだとキスされる。
ロマンの欠片もないファーストキスはしんどいです。
「似合っているとしか言ってないわよね」
「似合ってるのは本当だ。お前らは普通にしてればなに着ても似合うだろ。そんだけ元が良ければなんでも似合うさ」
水着の感想なんて、ぴっちり身体のラインが出ててエロいですとか、胸が揺れてエロいですとかだろ。エロ方面への感想なんてこいつらに言ったらどうなるか……考えただけで頭痛くなる。
「ふむ、反応を見るにギリギリ思春期の男子としてエロい気持ちも持ち合わせているようじゃな。多少は興奮しておるはずじゃ」
「そう、それにしては変化がないわね」
「イロハさん。股間をガン見するのはやめてマジで。慎みを持て。あとシルフィ、イロハにつられてチラチラ見てるの気づいてるからな」
「うえぇ!? なんでそういうとこだけ鋭いのさ!?」
「女の子の気持ちには鈍感なくせにのう」
「なんとなく視線には気付くっていうかそんなに見られりゃわかるわい」
うだうだやっているうちに、俺達以外にも勇者科の生徒が集まってくる。
女ばっかりだ。この時点でちょっと帰りたい。
リリア達以外の女っていうか人間なんてどうでもいいけど、俺がエロい目で見ていると思われたらイラつく。
「ほれ、人が来たからこの話おしまいだ。流石に他人がいるとこではしんどいぞ」
「これで終わったと思わないことね」
「わしらはまたいずれ、おぬしの前に立ちはだかる」
「その時までつかの間の平穏を満喫しているといいよ!」
「お前らは大魔王かなんかなのか」
アホなことやりながら全員整列完了。試験監督がやってくる。
「監督官のドーガだ。早速説明を始める」
マコの時の試験官とそっくりだ。双子かなんかだろう。
「全員に腕輪を配る。これに各地に散らばっている魔力のこもった石をくっつけろ。腕輪に吸収される。、腕輪が虹色になれば合格だ。生徒同士の妨害行為は重症を負わない程度にしろ。武器の使用は人間に対しては禁止だ。期限は今日一日とする」
透明度の高い腕輪だ。指で軽くノックしてみる。ガラスでもプラスチックでもない感触と軽い音だ。つけていても軽いためじゃまにならない。ルールはプールの授業でやる石拾いを過激にしたようなもんか。
「それと昼食は売店エリアで好きに取れ。売店エリアでの戦闘は禁止されている。石の奪い合いも禁止。完全な休息のためのエリアだ。なにか質問は?」
生徒たちが手を挙げる。やはり武器持ちが多い。
剣やら槍やらトゲ付きグローブつけてる奴もいるな。
「はい! 戦闘ではめ込んだ石が砕けてしまったらどうすればいいですか?」
「ふむ、良い質問だ。石は砕けても腕輪の色は変わったままだ。問題ない。腕輪は鍛冶科が試験で作ったものだ。壊れる心配はない。壊れてもこちらで記録もとっている」
「石は全員分あるんですか?」
「ある。今回は一年の初試験だからな。はめる前に壊れてしまうことも想定しかなり多めにある。ただし隠されていたりトラップやボスも設置されているので油断しないように。おっと地図を配っておこう。赤い星マークの場所は危険だが石も多い。黄色は普通。青は簡単だが石も少ない。もしかしたらゼロかもな」
施設の耐久テストも兼ねているってことで、各所を回って欲しいんだろう。
最初は青に行ってみようかな。
「ちなみに体に薄く弱い防御の魔法がかかるようになっている。大怪我防止のためで、普通に剣で切られれば怪我するので過信しないように。では解散!!」
よく知らん連中が移動を始める。
個人で動くものも、ある程度まとまっているのもいるな。
「さて、それじゃあ俺達も行くか。できれば青に」
「この試験がどの程度のレベルか見極めるのにはよいじゃろ」
「でも青方面にダッシュしていった人達がいたよ?」
「急げば間に合うかしら?」
「ダメなら黄色行こう。近場から回ってもいいけど赤は行かない。行きたくない」
とりあえず一番近い青を目指す。
途中で簡単そうな黄色があったら行く。という方針で決定した。
「さ、ちゃっちゃと終わらせて飯行こうか」
何事もなければいいけどな。
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