リリアとソニアの恋愛相談
「回復魔法の講座は行ったし、もうちょい特殊な科に行きたい」
今日もFランククエを終えて昼下がり。
適当なベンチでリリアと一緒に魔法関係の科へ行く相談をしている。
「シルフィおるし騎士科とかどうじゃ?」
「俺に体育会系のノリは無理。きつい」
「別に魔法科の生徒もおるのじゃ」
「魔法使いなのに?」
「接近戦とかある程度の護身術でもできんと不利じゃろ。距離詰められた時のことも想定するのじゃ」
なるほどな。騎士様は回復魔法も達者らしい。
攻撃魔法や強化魔法の扱いまで色々習うんだとか。
「まあやりたい科からでよい」
「攻撃魔法も興味あるけどううむ、ショットとかストリングに使えるかね?」
「いけるじゃろ。ソードにも火を付けて魔法剣じゃ」
「おお、かっこいいなそれ。魔法科で攻撃魔法もいいな」
回復魔法はまだ練習している途中だけど、普通に傷を治すくらいはできる。
ここで攻撃魔法も覚えれば無茶な接近戦の必要がなくなるな。
「なに、二人して魔法の話?」
話に入ってきたのはソニア。今日もツインテールっすね。リリアの隣に腰掛けるソニア。
俺・リリア・ソニアで並んで座ってだらだらしゃべることにする。
「魔法科ちゃんと行ってみようかなーという話。ソニア一人か? 珍しいな」
「いつもあの二人の相手じゃ疲れるからね。別の友達と行動してたのよ」
「なんとなくヴァンといるイメージじゃな」
「確かに。あの二人に振り回されてるかハリセンで叩いてるかだな」
「あぁ……やっぱそういうイメージになっちゃうのね……っていうかアジュくんだっていつもギルメンといるじゃない」
「そらギルメン以外に知り合いいないしな」
ヴァンのギルドと調理科のリック達くらいかな。交友関係なんて広がりませんとも。
広げても会う人間増えると自分の時間とか作れなくてダルいし。
「触れちゃいけない話だった?」
「触れて笑ってやるのが一番の供養じゃ」
「供養てお前な。まあ気にすんな」
「そ、わかったわ。でもそっちのギルドはまともそうだし、いいじゃない。交流は大事よ。ギルマスなんだから」
「まあ三人ともいいやつで助かってるよ。ギルマスってなんか特別な仕事あったりするのか?」
今の会話からギルマスのお仕事って大変よねー的なニュアンスを感じましたよ。
「ギルドによるんじゃない? うちは私が会計、家計簿つけたりお小遣い渡したりね。で、ヴァンが自由気ままに戦う。クラリスが依頼の裏をとったり戦闘や会計の補佐よ」
「とてもよいバランスじゃな」
「担当とか決めてないよな俺達」
依頼はみんなで見に行ってるし。生活費除いた金は四等分してるから誰かが多めに持ってるわけじゃない。全員戦闘できるし。
「俺だけの仕事って無いな。俺もしかして役に立ってない?」
「おぬしの仕事はいちゃいちゃすることじゃろ」
「だからそれ仕事じゃねえよ」
ハーレム無理。俺の何がいいのかわからんもん。
俺に何かいいところとか、好かれる要素があるかと聞かれればノーだ。
あるわけないだろ。なので無理。
「屋上での一件見る限り戦えるんだからいいんじゃない? ヴァンだって戦ってるか甘いもの食べてるか寝てるかよ」
「そもそもおぬしのギルドなんじゃから好きにすれば良い」
「俺のやりたいことなあ。とりあえず知らないものが多いからな。魔法も含めて見ていきたい」
「リリアちゃんなら魔法使えるでしょ? 教わったらいいのに」
「いやあ魔法の授業ってのがどんなか興味もあるしな」
こっちの授業は受けた分だけ役に立つからな。面白いし俺には合っているんだろう。
「ああそうだ。例の黒い奴事件だけどさ。アイドルのグッズとして売ってたらしいわよ」
「だから会場に居た奴が黒くなったのか。出処は?」
「教師とそっち系の科が調査中。気になるの?」
「一応な。専門家がいるなら俺が首を突っ込むことじゃないけど、知っとけば気をつけることはできる」
「それとなくシルフィたちから遠ざけるつもりじゃろ? 仲間外れにされていると勘違いされぬように注意じゃな」
「されるとしたら俺の方さ」
残念だけど、それでシルフィ達が無事ならまあ仕方ない。
「だめよそういうの。シルフィ達はアジュくんが好きなんでしょ? 自分達のせいで好きな人が傷ついたら自分を責めるわよ。シルフィはいい子だから」
「ソニアもヴァンがそれで傷ついたらショックじゃろ」
「そうね、私も話してくれない方が寂しいかな、って私は別にヴァンにそういうんじゃないって」
「全然隠せてないぞ」
「うそぉ!?」
「なぜおぬしは他人の色恋ならちゃんと認識できるんじゃ」
「俺にそういう機会なんてなかったからな。他人のことを見るばかりだったし。アニメとかによくある展開だからな」
ツインテールさんはツンデレ率が極めて高い気がする。
それが俺の漫画やアニメで学んだ傾向だ。
「よくわからないけど、もっと隠せるようにするわ。ひた隠しにして生きていくわ」
「いやそこまでしなくていいだろ」
「いっそ打ち明けてはどうじゃ?」
「そうだな。ヴァンならあっさり受け入れる気がする」
「だめよ。それは恥ずかしいし。男の人から言って欲しいものよ。アジュくんはできるの? そういうこと」
「絶対に無理。俺は告白とか罰ゲームとしか思えない」
間違いなくバカにされているととらえるだろう。この世界に来る前の俺ならな。
「自分から告白するって発想はないの?」
「無い。笑われて次の日から全員にコケにされるイメージ強すぎる」
「シルフィそんな子じゃないでしょうに。イロハさんも悪い子じゃないでしょう?」
悪い子じゃないな二人とも。
寝ようとしたらベッドに入ってたり。下着盗もうとしたりするけどね。
「知ってる。ある程度好意とかあるんだろうなってのもわかるんだけど、俺には難しい事実なわけさ。学園で強くなれば変わるかもしれないけどな」
「この女性への不信感を取り除くために、わしらは日々努力しておるわけじゃ」
「そっちはそっちで大変ね。応援してあげるわ」
「うむ、そっちも頑張るのじゃ」
「おう、応援してるぞ」
「アジュくんは自分の問題をなんとかしなさい」
「そうじゃそうじゃ。わしら三人がかりで攻略してキスどころか自分からデートも誘わんとはどういうことじゃ」
女を誘うのってハードル高くないかね。キスとデートは難易度的にはキスが上だけどデートってどうするんだろう。想像ができないって点ではデートが上だ。
「デートって言われても俺は何処に何があるか半分も知らないし、女が喜ぶものもわからないさ」
「知らないなら一緒に探しに行けばよいじゃろ」
「いつもどこにでかけてるのよ?」
「行き先は任せたり、家から出ずにごろごろするとか」
「ひょっとしてクエストと授業以外でほぼ家から出てないの?」
「大正解じゃ」
だって居心地がいいんだもの。飯食いに行ったりはしてるし。
まだ学園来て一ヶ月経ってないしさ。行った場所少なくてもいいじゃん。これからさ。
「外に誘ってあげればいいのに。シルフィ達は待ってると思うわよ」
「誘うって言ってもなあ……俺の部屋でだらだらごろごろして、眠くなったらそのまま寝ちまおうぜーとか誘ったらダメだろ? 女ってもっと接待しないといけないんじゃね?」
「イロハが超喜びそうじゃな。シルフィも毎回それでなければよいじゃろ」
「インドア派なのね。まあ『誘う』ってことをしてみるのはいいんじゃないかな。何も言ってくれないのは寂しいと思うわよ」
「似たようなこと言われた」
「言わせる前に誘うのじゃ」
それが難易度高いんだっつの。まあちょっと部屋で遊ぶくらいいいか。
「もしかして、俺の部屋にちょくちょく遊びに来るのは寂しいからか?」
「おおぅ……まさか今気がついたのか……おぬしちょっとどうかと思うのじゃ」
「誘ってあげなさい。せめて部屋に戻るけど一緒に来るかーとかそんな風にでいいから。さり気なくやればいいわ」
「それでいいのか?」
「その程度から慣らさねばどうにもならんじゃろ」
「いい機会だから今日誘ってあげなさい。今帰れば夕方よ。夕飯まで時間あるでしょ」
あるけど急だな。なんて言えばいいんだよ。まず声のかけ方からわからないぞ。
部屋戻るのに声を掛けるってどうするんだ。
女の子だと意識するとどう接していいかわからないな。
「今日はシルフィもイロハも先に帰っておるはずじゃ」
何処に行くかなんかの予定を書く掲示板が家にある。
今日は二人で新しく出来た小物だか服だかの店に行って、もう帰ってるはずだ。
「うまくわしがアシストするからやってみるのじゃ」
「わかった。やるだけやる」
せっかくの異世界だ。できることからやっていこう。
「応援してるわ。それじゃ、またね」
「おう、色々助かった。そっちも頑張ってな」
「応援してるのじゃー」
ソニアと別れて家路を急ぐ。さて、飯食ってからかな。ちょっとリリアと相談しよう。
今日の目標は同居してる女の子に遊ぼうと誘うこと。順序逆じゃねえかなこれ。
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