パーティー組めとかいう最難関ミッション

 どうやら勇者の能力は、ほぼ女性にしか無い素質らしい。

 話をまとめてみよう。


 ・複数存在する座学を自由に受けたり、クエストをこなして生活する。

 ・何度か試験があり、ぶっちゃけそこさえきっちりクリアできれば落第はない。

 ・授業は騎士科・魔法科・鍛冶科・調理科等の自分に合った科を探すとよい。


「みなさんにはまず、クエストを一つクリアして頂きます」


 解説を続ける先生。勇者科一年全体で行う最初のクエスト。

 全体に同じクエストが来ることは余程の非常時か、テストの時くらいらしい。

 チュートリアル的なやつだな。


「達成条件は『学園付近の森林最奥にいる教員の元で試練を受けること』です」


 拠点付近の森林とか最初のステージとしては最適だな。

 敵も出ないし、トラップも解除してあるとか。解除ってことは普段はあるのか。

 とりあえず簡単な場所に遠足行かせて交流を深めろということみたいだ。

 これが戦士科だと指定の魔物十匹狩ってこいとかになるらしい。


「誰とパーティーを組むかは自由です」


 自由とか困るわ。こちとらリリア以外の知り合いいないんだぞ。

 最悪俺とリリアで何とかするしか無いな。


「もう時間ですね。説明は以上です。自由に仲良く切磋琢磨して下さい」


 授業終了の鐘がなる。マジで自由行動だよ。やめろよ二人組作って的なやつ。

 余るに決まってんだろ、俺が。


「シルフィ、当然私と行くわよ」


「うん、よろしく!」


 青髪さんとシルフィは仲がいいみたいだ。

 さっきはフード被っててわからなかったけど白い獣耳生えてらっしゃる。

 友達にケモミミ美少女いるとか凄いぜシルフィ。

 そういやリリアどこ行った?


「わしを呼ぶ心の声が聞こえた気がするのじゃ」


 いつの間にか横に立っているリリア。

 いいタイミングだ。俺がネガティブにならないギリギリのタイミングだぜ。


「お、ちょうどいいところに来たな。俺が色々限界だぞ」


「限界が早すぎるじゃろ……」


 実際にはそこまでじゃない。この程度予測済みだ。でもやっぱりちょっと愚痴りたい。


「で、どうするつもりじゃ?」


「どうもクソも無いだろ。最悪俺達だけでなんとかするぞ」


 リリアは魔法が使えるっぽいから、そこを頼るしか無いか。

 そもそも素の俺は戦闘できるのか? 聞かなきゃいけないことが多いんだよな。


「その子、アジュの知り合い?」


 シルフィが声をかけてくる。

 青髪さんはまだ俺を警戒しているな。


「え、ああ……まあな」


 また声をかけられると思っていなかったので、咄嗟に反応できなかった。

 なぜにこの娘さんはこんなにフレンドリーかね。


「うむ、よろしく頼むのじゃ」


「確かリリアさん……だったよね?」


 自己紹介の時に覚えたのか。

 正直自分の番にボロを出さないように全神経を使っていて、青髪さんの名前すら思い出せない。


「正解じゃ。リリアでよい。シルフィ・フルムーン殿。そちらがイロハ・フウマ殿じゃな」


「シルフィでいいよー。よろしくね」


 青髪さんの名前判明。忘れると何されるかわからないから覚えよう。


「よろしく。イロハでいいわ。遠くから来たって言っていたけれど、知り合いがいたのね」


「奇跡的にな」


 適当ぶっこいたせいで、俺の怪しさすごいなと再確認する。

 だがちょっと安心もした。女は基本的に、こんな感じで俺を疑うはずだ。

 シルフィの異常さに勘違いしないためにも、過剰に干渉しないでくれたら助かる。


「丁度四人揃ったね!」


「いやいやシルフィ、パーティーはちゃんと決めないと危ないわよ」


 シルフィを止めに入るイロハ。

 ヘタすりゃ死ぬかもしれないわけだからな。

 なるべく強い奴と組んだほうが得だ。イロハの言うことは間違っちゃいない。


「いよーし! やるぞー!」


 シルフィは聞いていないけどな。


「いいのか? 正直力になれるか怪しいけど」


 もめるのも嫌なので確認とっておこう。

 うだうだ言われるなら最初に断っておいた方がいい。

 男手ゼロで大丈夫なのかね。もちろん俺自身はカウントしていない。


「シルフィは決めたら突っ走るだけよ。私がフォローするしか無いの」


 溜息からいつも苦労しているのだろうと伺える。


「だからまあ……危なくなったらすぐに逃げなさい。逃げても怒らないわ。引き際がわかるというのは大切よ」


「そいつは助かるよ。何とか逃げ切ってみせる」


「逃げる前提で考えるのはやめるのじゃ」


 やれやれといった表情のリリア。

 それに比べてイロハは特別馬鹿にした雰囲気はない。

 シルフィはそもそも話を聞いていない。


「それと……あの時はありがとう。いつか必ず借りは返すわ」


「気にするな。俺にはなんのことかわからないからな」


「そう……それじゃあ、改めてよろしくお願いするわね」


「よろしく頼むのじゃ」


「ああ……その……よろしく」


「よろしくね!」


 こうして奇跡的に四人組を作ることに成功した。

 女に話しかけるなんてできない俺がだ。


「それじゃあ、私達も準備があるから、森の入口に集合でいいかしら?」


「うむ、それでいくのじゃ」


 これから冒険に出る事になるわけだけど。俺は前衛なのか後衛なのかすらわからない。

 そんなあやふやなままで、冒険は始まるのだった。

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