一章 始まりは突然にⅥ

姉の死体。

というか、肉親の死体。

そんなものを見せられた家族は、どんな反応をすれば良いのだろうか。

─────否、とる反応というものは大抵1つに決まっているではないか。

よっぽど歪み合い、憎しみ合っていなければ、の話だが。

家の姉妹仲は然程悪くもなく、他に比べれば結構良い方だった。

だから。

私のとる反応は、もう1つに決まっていて。

気付いた時には───────


「お姉、ちゃん………?」



私の頬には、涙が伝っていた。

「ごめんね、妹さん。私も、止めはしたんだけど………」

姉─────綾瀬彩菜のことを抱えていた姉と同い年くらいの女性が、涙ながらにそう言った。

「止めた、って?何………を………?」

私はタジタジしながらも言った。

何故か、今までにないほど涙が湧いてきている。

その涙は行き場を失い、次々と頬を伝っていっていた。

そこまできて。

──────ああ、そうか。

私は、自覚した。

─────私は、思っていたよりも姉のことが好きだったらしい。

憎たらしくて傲慢で。

何でも見透かしたような顔をして、茶化してきて。

でも時々、優しくて。

本当に、頼れる姉という感じがして。

そんな。

そんな、姉でも。

私は、大好きだったのである。

─────と、私が涙しているところを見て、炉さんが、言った。

「死にたくなければ、その子の話を聞くと良いよ」

姉のことを抱えた少女の方を酒瓶で指差しながら。



☆☆☆☆☆



「今から話すことは、全部本当のことだよ」

姉のことを、膝に抱えたまま。

姉と同い年くらいの女性が、語り始めた。

姉の死んでしまった経緯というやつを。

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異世界ゲーム クロマメ @88541mame

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