一章 始まりは突然にⅤ

トランプゲーム。

それは、トランプを使った遊びならば、どんなことでも含まれるもの、なんだとか。

そのトランプゲームを使って日本国内に限らず、異世界人の全てと争いその全てに勝利すれば、「頂点を取った」ことになるんだとか。

そして、頂点を取れば、異世界の国の王的存在の者が何でも一つ願いを叶えられる力を与えてくれるんだとかで。

その願いで「地球に日本を返すこと」を願えば、地球に帰れるんだとか。

それが、炉さんの言う、「地球に帰る方法」であった。

でも、何故頂点を取るものが「トランプゲーム」なのだろうか。

それを言ってしまえば御仕舞いだ、と炉さんは言っていたが、まぁどうせ、ふざけた意味があるのだろう。

と、私が心底呆れているのとは正反対に。

初は何やら、嬉々として目を輝かせていた。

「何がそんなに楽しいの?初」

私が聞くと初は、少し頬に手を当てて悩ませ

「色々っ」

と笑顔で応えた。

っていうか、もう機嫌直しちゃったんだね、初。

いや、怒らせた私がいうのもなんだけど────こういうのを「チョロい」というのではないだろうか。

と、そんなことを考えながら私は、一人でに立ち上がった。

「?何立ってるんだ?アヤ。何処か行くの?」

聞いてきた炉さんに私は、当たり前でしょ?とでも言っているような表情で言い放った。




「帰るんですよ、元の惑星に」





言い放った私に。

「無理だよ、そんなこと。アヤが現実を受け入れられない気持ちも分からないではないけど────でも、ここは本当に、異世界なんだから」

炉さんが、私の服の袖を引っ張りながら言った。

私はその手を払い除け。

「ここが本当に異世界ちがうわくせいなのかどうか何てそんなの、分かってないんでしょ?だったら、今から確認してくる。確認して、ここが本当に異世界ちがうわくせいだったら、その時は、海にでも飛び込んで地球に帰ってやる」

「それは──────無謀なことだよ」

強い意思を見せる私に。

必死に止めようとする炉さん。

心配そうに見つめてくる初。

暫く、長い沈黙が流れて。

「アヤ‼」

朝日塔の扉が開かれ、中に入ってきたのは、見慣れない女性。

そして、その女性の腕には誰かが抱かれている。

それは────────

「お姉………ちゃん?」

一人、呟いた。

そう。

それは、紛れもなく。

同じ血を分けあった、姉妹の────────




───────死体、だった。

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