5:証言②
その日も最上は消火器を持って焼却炉に向かった。
消火器で火を消し、中の燃えかすを掻き出す。これがいつもの通例行事だ。
今はもう使われなくなった焼却炉は昔学校などに置かれていた程度の大きさのもので、以前は木材の破片や廃棄物を処理するのに使用していたが、今となっては、
不届き者の廃棄処理の一端を担っている。
掻き出されるものはほとんどが消し炭になっており判断がつかないものばかりだったが、以前に猫が燃やされていたのには本当に参った。
鉄パイプで触れているのに柔らかい感触が直に伝わり、悲鳴を堪えるのに一苦労だった。煙から漏れる生焼けの不快な異臭は、今でも鼻の奥にこびりついて忘れることは出来ない。
そして、その時の異臭が今、この周囲にふわふわと漂っている。
辺りを見回すが、人の気配はない。
煙は細く立ち上っており、焼却の終了を示している。もう火をつけた当事者はどこかへ行ってしまったのだろうか。
消火器の必要はなかったな。そう、最上は強がってみせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます