5:証言②

 その日も最上は消火器を持って焼却炉に向かった。

 消火器で火を消し、中の燃えかすを掻き出す。これがいつもの通例行事だ。

 今はもう使われなくなった焼却炉は昔学校などに置かれていた程度の大きさのもので、以前は木材の破片や廃棄物を処理するのに使用していたが、今となっては、

不届き者の廃棄処理の一端を担っている。

 掻き出されるものはほとんどが消し炭になっており判断がつかないものばかりだったが、以前に猫が燃やされていたのには本当に参った。

 鉄パイプで触れているのに柔らかい感触が直に伝わり、悲鳴を堪えるのに一苦労だった。煙から漏れる生焼けの不快な異臭は、今でも鼻の奥にこびりついて忘れることは出来ない。

 そして、その時の異臭が今、この周囲にふわふわと漂っている。

 辺りを見回すが、人の気配はない。

 煙は細く立ち上っており、焼却の終了を示している。もう火をつけた当事者はどこかへ行ってしまったのだろうか。

 消火器の必要はなかったな。そう、最上は強がってみせた。

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