第7話 A.I.とフェアリーモデルと

 防衛省の一室にて、男性官僚を前に1人の老練な気風を纏った男が椅子に深く座り、一冊の資料を手にして徐に口を開いていた。


「《A.I.》単体としてではなく、

あくまでも《A.I.》と《ロボット》をセットとして、売り出さなくては意味がない。

しかも、国内限定萌え♪モデルとして──ということだ」

「は?」


「先月、君が質問した内容に対する内閣府からの回答だよ」

 そう言い捨て、資料を男性官僚の前に放りやる。

 男性官僚はそれを手に取り、直ぐに内容を確かめ始めた。


「A.I.単体であれば、既存の《スマートフォンハードウェア》を利用することにより、低価格帯での早期供給が可能ではないか──と、先月君は言ったね?」

「は、はい。何も無理に、ロボットのような大型の開発投資などしなくとも、既に市場で大量に出回っているスマホと、現在開発試験中のA.I.を上手くマッチングすることで。擬似的、体験型サービスは十分に可能ではないかと思ったもので……」


「……確かに。A.I.ソフト産業をただ広めるだけなら、それでも良い。

現に、限定的ではあるが、その方向で世の中が大きく進んでいるのも確かだ。更に、今の政府方針とも合致する。

しかし、それでは意味がない、というのが内閣府の見解だ。

なぜなら、そうしたものは僅か数年のうちに国内を問わず国外にまで流出するだろう。

違うかね?」

「はぁ、確かに。中国が開発中の《次世代型A.I.藍姫アイリン》の噂も、既にネット上で賑わっているほどですから……」


「だからこそだ。他国が簡単に真似することの出来ない、ジャパン オンリーワンのフェアリータイプA.I.萌え♪モデルロボットを開発することで、それが新たな中長期的国内産業の基礎となり、同時ににも寄与するのだ!」

「……いや。わたくしには、どうも最後の辺りにあるの意味が皆目不明なのですが…?」


「まあ、気にするな」

「大いに、気になりますけど…」


「前にも言った通り、時期に君にも解ることだ。だから、安心したまえ」

「そうですか? 今は不安ばかりが日々募るばかりですけど……」


「何はともあれ試作機01メイが、先進のA.I.として、人を大事に想う感情……または、愛情が芽生え育むことを期待しようじゃないか。私は、そんな電脳A.I.彼女が是非にも欲しい」

「はぁ、そんなことが本当に可能だと良いのですが……」


 そんなことが話し合われているとは梅雨知らず、この日もステファは居間にあるテレビを眺めては呑気にケタケタと笑っていた。


  ◇ ◇ ◇

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メイロボっ みゃも @myamo2016

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