話したいけれど話せない

 その後、教室に戻った将は男子の輪にもみくちゃにされた。そこで


「おっす!どこ行ってたんだよ!背が伸びる薬でも買いにいったのか?」「バカいえ!背が伸びる幻覚作用がある薬じゃ…」「こえーよ!将がそんなのかえるはずねーよ!」「そりゃそうか!」


 などと言うばか騒ぎが行われていた。だけど、将はそのばか騒ぎに妙な安堵の気持ちになった


「大丈夫!なんでもないよ」


 そう断りを告げ、自席に戻っていく。美恵はまだ帰ってきていない。担任が教室に入ってくる


「永田が体調不良で帰ることになった。保健係は……。田中と三上だったな…。荷物を保健室へ運んどいてやれ」


「「はい」」


「それじゃあ授業を始める。___」


 将と同じ保健係なのが、三上菜衣子みかみなえこ。おさげのかわいらしい清楚なイメージの女の子だ。美恵とはかなり仲が良く、恋愛相談もしているという噂がある


「________じゃあ、今日はここまで。号令!」「規律。気お付け、礼」

「「「「「ありがとうございました」」」」」


 授業が終わるとすぐ、将は菜衣子のところへいった。菜衣子は次の授業の準備をしていた


「三上さん、保健室、行く?」

「………あぁ、田中くん。私が行くからへいきよ」

「いや、女の子にだけ持たせるなんて…」

「じゃあ…………半分持ってくれる?」


 そうして、二人で廊下を歩き出した


「………………あのさぁ」

「!! うん、どうしたの?」

「田中くんって、美恵のこと、どう思ってるの?」

「ふぇ?」


 急な質問にビックリして変な声を出す将。だけど、菜衣子はそんなことを気にせず、言葉を続ける


「前から美恵に田中くんのこと聞いていたけど、あなたは美恵のことどう思っているのかって聞いてるの!」

「ぼ、僕は…」

「はっきりしなさいよ!」


 菜衣子のその口調はどこか委員長を浮かべさせる


「………………」

「………ついたわね」


 コンコンとドアをノックする。中から「はーい」と女の人の声が聞こえる。菜衣子がドアを開ける


「失礼します」

「どうぞどうぞ」


 回転椅子に座り、カチャカチャと音をならしているのは保健の先生の水城由香みずきゆか先生だ。美人で有名だ


 美恵は一番奥のベットで寝ていた


「美恵、荷物おいておくわね」


 スヤスヤと寝息をたてる美恵のそばに荷物を置くと、菜衣子はすたすたとそこから出ていってしまった


 僕も……と思い、将が荷物をおこうとすると後ろから声をかけられた


「おい、田中…だっけな。ちょっとこい」



 将は由香先生から呼ばれ、真ん前の椅子に座る。将の座高だと、丁度豊満な胸が真っ正面に来てドキドキしてしまう


「それで…お話って?」

「あぁ……特になんもない」


 将は脳天をハンマーで叩かれたような気になった。視線が胸に向かう


「嘘だ嘘。それで、お前に話すことは……。口で説明するのめんどいな……。おい、ちょっと真ん中のベットで横になってくれ」


 将が言われた通りに横になると、急に電気が落とされた。パニックになる


「な、なに………。うひゃっ!」


 横から、触られた感触がある。消毒液の匂いが回りに漂う。変な気分になってくる


「な、なんですか………」


 くすぐるような感触が下半身に降りてくる


 次の瞬間


「ひゃっ!」


 将の体が宙に浮いた。抵抗しようとも抵抗することができない。将は早くこのときが終わるのを切実に待った


「うひゃゃゃゃ!はは!あーーーー!お腹がいたい!くすぐったいよーー!あはははははは!」


 足の裏がくすぐったい。多分、いや、絶対先生だろう。そう思ってはいるが、足の裏をくすぐるのをやめ

 ようとはしない


 電気がつく。


「悪かったな!急にして…」

「本当ですよ!」


 そうして僕は教室に帰ってきた


その夜、ベットに入り、将は(明日、永田さんが来たら、あの事を聞こう)と心に決めていた

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その背中を追い越したくて 美織 @days

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