3-2 ほんの一瞬の恋
あの女、ほんとうに徹底している。
可愛くない!!
怒り心頭、ここまでやられるとは。
二宮果樹園からの希望で、涼は担当から正式に外されてしまった。
課長から伝えられたのだが、果樹園主人である珠里からの申し出との報告。
さらに珠里がカメリアにクレームをつけたとのこと。
「あの島果樹園総出の企画、二宮さんも非常に期待していたようだ。『ここで投げ出されるとは思わなかった。遺憾だ』と――。あの寡黙そうなお嫁さんが珍しく憤っていてね」
しかしその怒りは、涼に対するものではなかった。涼が企画したものを始動させたくせに、いとも簡単に覆したカメリアの判断に対してだった。それは、まるで涼の無念を代弁でもしてくれるかのように思えた。
だが二宮側としてはこれで二度目ということになるのだろう。伊予柑チョコテリーヌも販売目前の急遽変更。ああいうやり方を何度もやるのならば『大手企業の体質に不信を抱く』と珠里なら言いそうだ。
それを何故、いままで言わなかったかと言えば。やはりそこは真鍋涼という営業担当を信頼してくれていたからなのだと。
その担当が異動することとなり、その担当がいなくなるのならば『もうカメリアさんのやり方は信じられません!』という珠里の、または二宮果樹園としての意向を、この際はっきりと伝えたのだろう。
「異動される方はお忙しいだろうから、今後は梶原を担当にして欲しいとのことだ。企画を無碍にした担当者には会いたくないと」
その手で来たか。涼はあっけにとられた。
あの同級生め。徹底的に俺を畑から締め出すつもりだな!
あの女、今度も涼がやろうとすること先回りして、先手をどんどん打って前を抜いていく気がする。
ほんとうに気が抜けない同級生。でも、そんな彼女と対等でいることが、また涼にとっては楽しくもあったのに。
敵に回ると、なんとも手強い同級生。
ふたりだけのささやかなひととき、穏やかに瀬戸内を眺める彼女との時間が欲しくて島に通っていたようなもの。いつしか彼女を愛しく思うようになって、でも彼女の中には永遠の夫がいるから遠慮していた。なのに、あんな時になってまさか彼女もあんなに泣いて俺のこと惜しんでくれるだなんて。俺のこと思ってくれていたなんて。やっとわかった『恋』は、とても短かった。レモンの花の香りにつつまれたあの日だけ。
また元の契約先の主人と営業マンに、そして『ただの同級生』に戻ってしまった。
◆・◆・◆
島に行く用事も、これから取り組む仕事も取り上げられ、悔しくて、密かに脳内でのたうちまわりながら、ついにデスクの整理を始めてしまう。
行く気がこれっぽっちも湧かないのに、行く準備をしている自分が滑稽すぎる。その末に『こんな会社辞めてやる!』という衝動に襲われる。そうだ、彼女と一緒にあの畑の仕事をしよう。俺が珠里も畑もおばあちゃんも紀江さんも守っていこう。直人さんの意志を俺が継ごう――とも思った。
だが、それをすると珠里がさらに逃げていく気がした。『そんなの、委員長がやりたいことではないでしょう』と。そんなことを涼が思いつくかもしれないと予測済みか。だから二度と畑にこないよう断固拒否を決めているに違いない。
メールも電話もまったくなし。こちらが『もう一度会えないか』と送っても反応なし。ほんとうに徹底していた。
「チーフ。これから、引き継ぎのご挨拶に二宮果樹園に行って来ます」
梶原が出かける報告へと、涼のデスクに来た。梶原も元気がない。
「梶原は特に、二宮果樹園が心許して信頼されているから、これからも頼むな。それから……」
なぜか、梶原の目に涙が光った。
「あの、でも、チーフは……。そのせっかく珠里さんと……」
同級生ってめんどくさいっすね。でも羨ましいな。十何年ぶりに会っても通じているのがわかるんっすよね――、そういって梶原も涼と珠里のざっくばらんな関係を見守ってくれていた。
「あのな、梶原……」
「はい」
「俺な、中学の時から、あいつと張り合ってきたんだよ。真っ向勝負、勝ったり負けたり」
梶原がきょとんと首を傾げた。
「あの、それって、成績のことですか」
「まあ、その他諸々も。意地の張り合いで、とことんすれ違ったまま、ついこの間、再会したんだよ。だから、もう、俺が元クラスメイトの委員長だと知った時の珠里の目つきが凄いのなんの」
ついに梶原がふっと笑いをこぼした。涼と珠里が常にケンケン言い合っている様を何度も見てきたからだろう。あの女の目つきが悪い顔もすぐに思い浮かべられたようだ。
「俺、今回も負けたくないんだよな。あっちがなんか知らないけれど、『喧嘩を売ってきたから』、俺、買うことにした」
眼鏡をきちんと正し、涼は梶原に向かう。
「今日、俺が行く。引き継ぎは、明日以降でもいいか」
締め出されて、行っても追い返されるか、会ってくれないとわかっていても。このままではいけない。いいわけがない。
「はい! 是非、そうしてください」
やっと梶原が明るく笑ってくれる。
椅子の背に掛けていた紺色のジャケットを片手に、涼はついに動き出す。
前の担当さんが来たら、カメリアさんとの契約は破棄する――だと?
やれるもんなら、やってみろ。いざ、そうなって困るのは、心根優しい朱里のほうだろ。おばあちゃんがお気に入りの梶原まで放ることが出来るのか?
買ってやる、おまえが売った喧嘩、買ってやる。絶対に負けない。今回も!
勇んで企画室を出ると、梶原が後を追って出てきて、エレベーターに乗ろうとしている涼に叫んだ。
「チーフ! ここで負けたら、一生尻に敷かれますよ!」
なんだかほんとうにそうなりそうで、涼は思わず苦笑いを浮かべた。
「行ってくる」
「いってらっしゃい!」
梶原の力強い声が通路に響いた。
◆・◆・◆
メールも電話も反応してくれない。畑に行けば契約を破棄すると言われ、涼も今後の後輩の企画のために足踏みをしていた。
その間、十日ほど。ついに島に上陸。それまで通り、アウディで海沿いの国道を走り、果樹園の丘をあがり、小坂の前に駐車する。小坂をあがり、涼は果樹園の畑に入る小径の前に立った。
心構えを整え、その畑に一歩踏みいる。彼女を探した。
だけれど、気配がどこにもない。砂利を歩くゴム長靴の足音とか、鋏で枝を整えている音とか、軍手で土を手入れしている音とか。なにも聞こえない。
やがて奥のハウスがあるあたりで、やっとごそごそ作業をする気配を感じた。
すぐに逃げられないよう、こちらの気配はそっと殺し、温室をのぞいた。
「涼君! 来てくれたの!」
だがそこにいたのは、カネコおばあちゃんだった。
しかも涼の顔を見るなり、おばあちゃんが転ぶような勢いでやってきて、涼に泣きついてきた。
「待ってたんよ。今日、梶原君が来るなら、涼君になにがなんでもうちに来るように言ってもらおうと決めておったんよ。待ってたんよ、ばあちゃん」
「カネコさん。あの、俺……」
なにか、涼の中で大きな不安が襲ってきた。いまこの奥まで歩いてきて、果樹園の空気がいつもと違うと肌で感じていたからだ。
静かで。そしてレモンや伊予柑の樹々が元気がないように感じたのだ。空気が動いていない。風が弱々しく、樹が息をしていないような……。そんな空気。
急く胸を抑えられず、涼はハウスを飛び出して畑を見渡した。
「おばあちゃん。今日、彼女は……?」
なにも返事がない。また胸に暗雲がたちこめる。果樹園の上に得体の知れない靄がかかり始めたようにも見えた。
ハウスへと振り返ると、おばあちゃんが小さく縮こまって泣いていた。
「カネコさん?」
「珠里ちゃん。いま、東京におってん」
どうしてそうなったのか、訳がわからず、涼は絶句し目を見開くだけ。
「ど、どうして」
俺が行きたくないと拒否していた場所に、何故、彼女が先に行ってしまったのか?
もしや、俺が行けるように先に行ったのか? それなら畑はどうして置いていってしまった?
混乱する涼の手を、なにもかも解ってくれるように、おばあちゃんが優しく握ってくれた。
「涼君、よう聞いてや。珠里ちゃんな、涼君が栄転するとわかってから毎日泣いておったよ。ほんまは涼君のこと、もうずっと前から好きで好きで堪らんのよ、あの子。涼君が畑にきてくれるの心待ちにしていたんよ。来ない日は寂しそうにして、小坂の下に黒い外車がきたんじゃないかと確かめに行ったり。今日は来るかもしれないと、お菓子を焼いて待っていたりね。直人と過ごしていた時が蘇ったようやねと紀江ちゃんと言うていたところやったんよ。ただ涼君のためを思うて、突き放しただけなんよ。よその営業さんや真田さんの目の前では気丈に振る舞って、知られないように笑顔で堪えておったわいね。でも、なんや思うことあったんやろな。あの子、自分から東京の実家に連絡したんよ。すごいやろ」
珠里から実家に? 俺の転属とそれがどう繋がってしまい、彼女をそうさせたのかまったく解らない。やはり混乱するばかり。
だがカネコおばあちゃんが泣くほどのこと、涼に来て欲しい来て欲しいと、この数日どうしようかと思い悩んでいたのは何故か。それを告げてくれる。
「そしたらな。三枝のお母さん、倒れて入院していたことがわかったんよ。三月に倒れていたんやって。やっぱりあのお母さん、娘には連絡するなと意地張っていたらしい」
「お母さんが……? 三月に? だいぶ前ではないですか!」
これにも涼は驚きを隠せなかった。さらに娘に心配を掛けまいと意地を張っていた彼女の母親の気持ちもすぐに理解できた。
そして……、初めて思った。『母と娘、そっくりじゃないか』と。
不器用すぎる。相手のためと思って、相手に酷い態度を取るところが。泣きたいほど寂しいくせに、意地を張って、独りぼっちの道を選ぶところが。
「どうしたことか、お父さんがお母さんをひとり病院に預けたまま、面倒をみていないことがわかったんよ」
「ですが。確か、彼女よりも弟さんのほうが、お母さんも頼りにしていたはずでは」
カネコおばあちゃんが不本意そうに首を振った。
「いきなり母親の面倒を見るとしても、まだ若いわ。実家に電話が通じんけん、珠里ちゃんが不審に思って弟さんに連絡してやっとお母さんのことわかったらしいんよ。それがな。弟さん、結婚したい女の人がおるとかで、お母さんに紹介したらしいんやけどな……。上手くいかなかったらしい。でも弟さんも彼女さんもめげずにお母さんの看病をしようとしたらな、これまた大喧嘩になって決裂したらしいんよ」
それが最近のことだと、おばあちゃんが教えてくれる。
その弟も決裂したことは、あの母親だから覚悟はしていたらしいが、それでも母親を放っておくことが出来ずに、心苦しいが姉に頼もうかどうか迷っていたところに、虫の知らせのように姉から連絡があったことで、弟が泣きついたらしい。
「珠里ちゃん、すっとんで行ったわ。あんなにお母ちゃんのこと嫌やとゆうていたのに」
「そうでしたか。では、帰ってくる目処がたっていないんですね」
涼はため息をついた。が。やはり何かを感じてしまう。事情はわかったが、実家に連絡をしたというところがどうもひっかかる。
たまたま実家で大変なことが起きていたけれど、そうでなくても、珠里は東京に行こうと思っていたのではないのだろうか。
でも。畑は? 東京に行こうと思うことは、畑を離れてしまうことになってしまうのに。いったいなにを考えていた?
そう考えていると、カネコおばあちゃんが涼の目の前、土の上に正座をした。
「涼君、このとおりやけん」
途端に頭を下げられ、涼は困惑する。
「珠里ちゃんを、もろうてくれんかね。東京に連れて行ってあげてくれんかね」
「え、あの、やめてください。おばあちゃん」
涼も跪いて、土下座をするおばあちゃんの背を起こしあげる。それでもカネコおばあちゃんは涼にすがってくる。
「あの子の意地っ張り、涼君ならわかるやろ。あの子の意地なんかはね除けて連れて行ってしまって」
「だけど、彼女は畑が……」
「戻ってきたらいかん!! もう、あの子に充分してもろた。ばあちゃん、いい夢を見させてもろた。あんな出来る孫嫁のおかげで、こんな年寄りの夢が叶うたんよ。畑を愛してくれること、有り難とう思てる。そやけど、あの子にも幸せになってほしいんよ。直人もきっと同じことをいうわ。畑なんかより、自分のことしいって。ここで涼君と離れたら、もうあの子、誰とも一緒になれんような気がするんよ!」
そしてこのおばあちゃんも、とんでもないことを言い出した。
「もう充分じゃけん。ばあちゃん、畑をやめよ思うてるんよ」
それにも涼は衝撃を受けた。
この畑がなくなる? この畑で息を吹き返したのに。俺も珠里も。なのに俺達に幸せになって欲しいから、この瀬戸内から出て行けと皆がいう!
「カネコさん、おばあちゃん。それは違いますよ!」
「どうしてやの。そしたら、どうすればええの。せっかくの本社への栄転やないの。元の花形さんに戻れるんやろ。東京のエリートさんになるんやろ。そんな涼君やったら、珠里ちゃん預けて安心やとばあちゃん思っているんよ。お願いじゃけん、もう老い先短いばあちゃんの最後のお願いやと思うて、なあ、涼君!」
涼もショックが大きくかなり動揺しているが、このおばあちゃんの方がかなり取り乱していると気がついた。
いつもニコニコ、皆に優しいおばあちゃん。哀しい時も嬉しい時も、スイーツキッチンに行けば、おばあちゃんが変わらぬ笑顔で待っていてくれて、困っている時はどんと受け止めてくれた。
そのおばあちゃんがこれだけ取り乱すのだから、よほどに心配していたのだろう。ずうっと心の奥底で『このままではいけない。孫嫁をこのまま畑にいさせてはいけない』と、もしかすると、いちばん心を痛めていたのは、この畑を誰よりも守ってきたおばあちゃんだったのかもしれない。
涼は、今日は小さく感じるおばあちゃんの丸い身体をそっと抱きしめた。
だけど、涼も譲れないものがある。
「やっぱり違うと思います」
とうとうおばあちゃんが、涼に抱きついて泣き崩れてしまった。
「珠里さんと連絡が取れなくなったと思ったら。そういうことでしたか」
レモンの葉が夕風にさざめくそこに、白いジャケット姿の真田社長がたたずんでいた。
「失礼ですが、聞こえてしまいました」
おばあちゃんが真田社長に背を向けてしまう。それでも割烹着の裾で目尻を押さえ、涙声を堪えていた。
だが、そんな真田社長の険しい目線は、真っ直ぐに涼へと向けられていた。涼は久しぶりに狼社長の眼差しにぞくりとしてしまう。
「真鍋君、折り入って話がある。少々、かまわないかね」
この社長がすくなからず珠里に好意を抱いていることは、涼も男としてわかっていた。
中途半端につきあうなら、もう珠里さんには近づかないでくれ。そういわれるのだろうか。涼と珠里が離ればなれになったら、この社長が今度は、珠里を全力で迎えに行くような気がした。
「よろしいですよ」
涼も頷く。男と男の話し合いになるようだ。
二宮のキッチンを借りて、真田社長と向き合った。
気持ちが落ち着いたことと、男同士の成り行きを見守るためか、カネコおばあちゃんが紅茶を入れてくれている。
「東京本社へ、ついに凱旋ですか」
おめでとう。祝福してくれたが、どことなく社長も不満げな顔であるのは気のせいなのか。
「いえ。ふいに湧いた話で、まだ実感が湧きません」
心の中は無念でいっぱいで、ちっとも嬉しくなんかない。それが顔に出てしまう。
「嬉しそうではありませんね。まあ、そうだろうね。せっかく気持ちが通じあった同級生の彼女との仕事にやり甲斐を感じていたところだっただろう? どうして良いのかと思い悩むのも当然。しかも君が転属することで、この果樹園がこんなになっているとは、私もさすがに思わなかった」
すべて、君のせいだよ。そう言われているような気になって、涼は思わず眼鏡の奥から、あの狼社長の目を見てしまう。
彼がそこで、残念そうにため息をついた。だが、途端にあの鋭い眼差しに変貌する。それが涼を射ぬく。
「だけれど、私は嬉しいね。まさか、現実になろうとはね。駄目だろうと諦めていたことがあるのだよ」
珠里のことだろうか? 涼もこの社長が珠里に仕事以上の感情を持って、男として接していると感じたことがある。ほら、おまえさんが捕まえにいかないなら、私が珠里さんを捕まえにいってしまうよ。私のチャンスだよ。嬉しいね。そういいたいのか。
どいつもこいつも俺を追いつめる。嫌気がさす。
だが、真田社長はまったく違うことを、面と向かい涼に言い放った。
「これを君に見てもらいたかったんだ」
「……は、い?」
戸惑う涼の目の前に、真田社長は急に……、ビジネスバッグから様々なパッケージを並べた。
「夏向けにだそうとしている二宮スイーツ。これが珠里さんと途中まで話していた企画なんだがね」
惜しげもなく、企画書まで差し出してくれる。
「あの、俺はカメリアの人間ですよ」
真田社長は悠然とそれを差し出したまま。涼が受け取るまで、その手を引かない。
「君に見て欲しいのだよ。これを見てどう思うかね」
そこまで言われ、涼は差し出されているものを手に取り、早速めくって内容を確かめる。
その内容、そして、目の前に並べられたサンプルパッケージ……。何かがあっという間に一致した衝撃が走った。
「こういうパッケージになるんですか! これが……」
まったく違う知らない内容の企画と商品だった。だけれど、やろうとしていることが涼がこれからやりたい、こうしたいという思い描いていたそのものだった。コンセプトまで!
だが、流石、真田社長。涼が思い付かなかったイメージを叩きつけてくれる。一枚も二枚も上手。
「コンセプトは私だが、このイメージは『伊予ジェンヌ』のデザイナーが描いてくれたのだよ。カネコさんのご指名でね。ヴァレンタインのデザインがとても良かったから、それなら新しい商品も彼にデザインをして欲しいと頼まれた。つまりだね。その若手のデザイナーを私より先に見つけた、真鍋君と梶原君、君たちが彼と先に作り出していたイメージということにもなるんだよ」
あのデザイナーが、伊予ジェンヌの心意気を引き継いで描き出したもの。これが『生み出す』ということなのか。そして涼はもうそのイメージの虜になった。
――『真鍋君と真田さんも、いきつくところ一緒なのかなあって』。
いつか彼女がそういっていたのを思い出す。言葉がすぐに思い浮かんだ。こういうことだったのかと!
さらに不敵に笑む真田社長が言った。
「確信しているよ。島果樹園の企画を耳にした時から気になっていたのだよ。真鍋君、君は変わった。君はもうカメリアらしい仕事が出来なくなっている。上司と噛み合わなくなっていないかね? どうだろう私に君の企画をくれないかね」
もう開いた口がふさがらない。彼女は東京に行ってしまい帰ってこないし、おばあちゃんは畑をやめると言い出すし。そしてこの狼社長は、放り投げるならその仕事をくれという……。だが涼もわかっている。
「生きる道を分かつ時、ということですか」
「そう。君次第だ。いまもこれからも」
男としても、同業者としても、試されていると思った。
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