2-8 チョコテリーヌ

 梶原氏は、ヴァレンタインのギフトボックスを担当。そしてメインともいえるグランカフェで出す限定品、それを今度は涼が担当する。

 候補はいくつかあって、どれもヴァレンタインにふさわしい、ショコラ系スイーツが涼の提案だった。

 その中で、二宮果樹園と話し合った上で決定したのが『チョコテリーヌ』。

  

 ヴァレンタインの菓子を仕上げて持ってくる。その約束で、カメリア珈琲企画室の青年二人が今日も二宮のキッチンを訪ねてきた。

「チョコテリーヌ、持ってきました」

 おばあちゃんのアイディアから、パティシエがレシピとデザインを整えてくれた。試食前の出来上がり画像を見せてもらった時から、『これこそヴァレンタイン』とカネコおばあちゃんと一緒にときめいた。

 涼がテストキッチンから持ってきたのは、伊予柑ピールを使った『生食感のガトーショコラ』。

 それをショコラ生地と伊予柑ピールの層に分けテリーヌ型で焼く。本当にフランス料理のテリーヌのように造られている、とても手が込んだものだった。

 いつものように手慣れている涼がケーキナイフ片手に、さっそくカメリア流の美しい小皿に盛りつけてくれた。

 カネコおばあちゃんと一口、そっと静かに口に運んだ。

「さすが、カメリアさん。盛りつけもさることながら、お菓子自体もとっても綺麗やし、美味しい」

 おばあちゃんは綺麗な盛りつけを何度も眺め、二口、三口と続けて頬張っている。

 だけど、カメリアの青年ふたりは何を思っているのか、顔を見合わせ喜びの顔を見せなかった。

 そして珠里も――。一口二口、じっくり味わいながら、ふと首を傾げてしまう。

 本当はとても美味しかった。しっとり濃厚な生地がガトーショコラの特徴ではあるが、さらにとろっとした生チョコのような食感があり新しいと思った。

 だけど、それをあの白いカフェで食べている女性達の幸せそうな顔を思い浮かべた時……。珠里の心に、あの新春のざわめきが何故か生まれなかった。

「うーん。美味しいんだけど……」

 このうえない極上の飾り付けを眺めながら、珠里はその違和感が何であるのか探した。

 そして涼は、もう気がついているようで、悔しそうに大きな溜め息を吐いていた。

「そういう顔をすると思った。俺だって、これを作りたかったんだけど、失敗したと思っているんだ」

 『伊予柑チョコテリーヌ』という名前まで付けていたそのスイーツは、珠里が感じたとおり『生チョコ食感』を売りにするつもりだったとのこと。

 社内でも『美味しい!』と評判だったらしい。だが一方、上層部では。

「俺も危ないかなと思ってはいたんだよ」

 そして涼は残念そうに、珠里とおばあちゃんに報告する。

「新春のクラシック・ショコラと似た商品になるとのことで、レシピの大々的変更をするように指示された。つまりいま食べて頂いたものは『没』ということです」

 『ええっ』と、珠里とカネコおばあちゃんは、今更何事かと驚き引いた。

「しかも。梶原の二番煎じとまで言われた」

 そこは流石に、涼は苦々しい顔で悔しがっている。

 そんな先輩を見ていられないのか、梶原氏が声を張り上げ割って入ってくる。

「全然、二番煎じなんかじゃないっすよ。ただショコラ系のスイーツというところが重なっただけなのに」

「でも、そう見られるんだ! 前後が見えていない俺が馬鹿だった」

「ヴァレンタイン直前の限定品にショコラを出してしまったから。俺のショコラをヴァレンタイン用に期間をずらせば良かったんだ」

「いや。クラシック・ショコラはヴァレンタインだったら、他社との競合であんなに売れなかった。しかも新春の販促で、真田と張り合うには梶原のショコラしか対立できる企画は残っていなかった」

「すみません。俺の企画をあんなに成功させてくれたのはチーフなのに。まるで俺の真似みたいに言われているのを聞いた時、悔しかったです」

 社の成功の裏で、光と影に苛む社員がいる。珠里もおばあちゃんも、会社組織の現実を目の当たりにし、何も言えず立ちつくすだけ。

 しかも梶原氏、本当に涙を滲ませていた。新春の企画で、先輩後輩の絆が強くなっていることを感じさせる。それを見たカネコおばあちゃんもじっとしていられなくなったのか、彼のそばに行き『大変やったんやね』と背中をさすっていた。

 そして珠里も、密かに唇を噛みしめた。

「残念。このテリーヌで充分なものだと思っていたのに」

 珠里の中でなにかが渦巻き始める。腹の底からムカムカするものが。

 もう最終決定をだしていなくてはならない時期になって、どうしてこのカメリア珈琲という大手企業の上層部は確実性のない無理難題を部下に申しつけるのか。

 もともと、ヴァレンタインの企画は夏ぐらいには社内で方針を決め企画をあげ、着々と日数をかけてやっていくもの。カメリアと素材提供と商品開発提携の契約をしたのは晩秋、本来なら今年度のヴァレンタインは二宮果樹園は無関係のはずだった。

 それを、カネコおばあちゃんの島レモンはいま旬だから是非にと、短期間のスケジュールでねじ込んできたのはカメリア側。

 珠里は思いきって、同級生の彼に言い放つ。

「納得ができない。こういうときは、真鍋君じゃなくて、もっと上の方がこちら果樹園に変更の知らせをしてくれるものじゃないの」

 場の雰囲気が一気に凍った。珠里も重々承知の上。

「珠里ちゃん、ええやないの。レシピの変更ぐらい……」

 珠里もわかっている。涼と梶原氏が苦労していることぐらい。大企業の『頭の中で考えたことだけ簡単に指示する上層部』に振りまわされていることくらい。

「こんなことが何回も続くようなら、真鍋君は信頼できても、本体のカメリアを信用できなくなるから」

 眼鏡の同級生の表情が堅い。梶原氏に至ってはどうしようと真っ白な顔になっている。

「申し訳ない。チョコテリーヌのレシピアイディアもカネコさんが一生懸命考えてくれたのに」

「おなじものが重なることぐらい承知だったのでしょう。企画の段階ではっきりと違いが際だつよう、もっと早くに気がついて、もっと早い時期にダメ出ししてよ」

「わかってる……」

 涼が深々と頭を下げてくれた。先輩に続いて梶原氏まで。珠里だって……彼等に頭を下げて欲しいわけじゃない。彼等をこんなふうに追い込む上司に腹を立てている。

「真鍋君と梶原さんがこんなに一生懸命にやってくれているのに。なに会社の椅子に座ってだめだこれではと言葉だけの上司なの?」

「珠里ちゃん、そんなわけないやろ、やめとき……」

「だって、おばあちゃん! なんで真鍋君と梶原さんがこんな追いつめられて、カメリアのパティシエだってこれからまだやらなくちゃいけないんだよ!」

 いつにない珠里の憤りに、おばあちゃんも、涼も梶原氏も唖然としていた。

 そこで珠里も我に返る。こんなに怒る自分を表に出したのなんて滅多にない。私、どうしちゃったんだろう? とやっと怒りを収められた。

「ご、ごめんなさい。だって……」

 うつむいた珠里のそばに、そっと同級生の彼が寄り添ってくれた。

「びっくりした。珠里がそんな怒ってくれるなんて」

 そっと珠里の肩を撫でてくれる。梶原氏も珠里に向かってくれる。

「珠里さんのその気持ちで充分です。俺、嬉しいです」

「そやそや、ほなら上の人達を一発で納得させるレシピ、考えなおそう。ばあちゃん、まだこれどうやろかと思っているレシピがあるんよ」

「マジですか。やりましょう!」

 梶原氏とおばあちゃんがまず気を取り直して、調理器具を揃え始めた。カネコおばあちゃんも、険悪になった空気を変えようと誰よりも元気に動き始める。

 そして梶原氏も、おばあちゃんと一緒になって冷蔵庫を開け、材料を揃え、持ってきた黒いエプロンまで身につけた。

 おばあちゃんと梶原氏の息は日に日に合っている。ほんとうの祖母と孫のよう。おばあちゃんが調理する傍らで、梶原氏が道具を揃えたり、チョコレートを湯煎で溶かしたり。珠里もそれを見て、今日のアシスタントは彼に任せる。

 そんなキビキビしている後輩とは裏腹に、珠里の側にいた涼がふうと重い息を漏らし、ぐったりと椅子に腰を落とした。

 いつも凛と背筋を伸ばして、皆の前を行く委員長、チーフの颯爽とした空気が彼から薄れている。あきらかに疲れ果てた様子で、彼は両手で顔を覆い項垂れている。

「真鍋君、大丈夫」

「眠っていないんだ。それだけ」

 今朝方までギリギリ、シャツも着替えないで伊予柑チョコテリーヌを仕上げてきた。ぐったりした姿はそれを物語っていた。

 そして珠里はさらに気がついた。明るい顔をしていたけれど、『天気が良いからふらっとフェリーに乗った』とやってきたあの日、彼は既になにか思い詰めて島に、果樹園にきてしまっていたのではなかったのか。珠里とふざけて、ホットワインを飲んで、そうして気分転換をして街へ戻った。努力した梶原氏が成功して当たり前。自分はなんの実力もないんだと、言い聞かせるよう海に呟いていた涼。あれも『成功した後輩の真似』と言われた後だったのかもしれない。

「少し眠っていけば」

 ふいに話しかけた珠里を、涼が見上げる。眼鏡の奥の目が、わずかに赤くなっている。

「おばあちゃんと梶原さんが仕上げる間、うちの居間で休んでいけば」

「いや。それなら車で寝てくる」

「いいじゃない。すぐ隣がおばあちゃんの部屋なの。少しでも休んで会社に戻った方がいいと思う」

 それを聞いていたのか。ポイッパーで生クリームを泡立てているおばあちゃんも叫んだ。

「それがええよ。真鍋君、ばあちゃんも心配やけん。ちょっとだけでも横になっていきなさいや。出来上がったら呼ぶけん、ここは任せてや」

 梶原氏も。

「チーフ、そうしてくださいよ。ここのところ、ずっとテストキッチンに籠もって、昨夜も徹夜だったんでしょ。ここはおばあちゃんとやっておきますから。会社に戻ったら、休めませんよ」

 会社に戻ったら、また戦いが待っている。そう思い描いたのだろうか。涼がそこで立ち上がった。

「じゃあ。お言葉に甘えて」

 とても申し訳ない顔をしていた。本来なら、取引先で一休みなんてあってはいけない行為だろう。

「誰にも言わないわよ。同級生のよしみ」

 少し前に、このひと言で喧嘩した。そのお返しをここでするからね。珠里はそんな意味で笑ってみせた。

「嫌味だな。俺に恩をきせるのか」

「恩を最初にきせようとしたのはそっちでしょ。はい、あの時のお返し、これでお終い。こっちに来て」

 やっと涼がいつものように笑ってくれる。その背を珠里も笑って押した。


 


 ◆・◆・◆


 


 菓子作り好きな祖母と妻のために、夫が建ててくれたプレハブの二宮キッチンと、自宅を繋げるドアを開ける。

 昔の母屋と繋がっていて、土間から木の廊下にあがって突き当たりがおばあちゃんのお部屋。障子を開けると、暖が整っているコタツ部屋。珠里もスイーツキッチンであれこれするときの休憩は、この部屋でさせてもらうことが多い。

「うわー、コタツがある。マジでばあちゃんの部屋ってかんじじゃないか」

 しかも昔ながらの座布団に、お祖母ちゃん愛用の座椅子に、そしてお決まりのコタツの上には籠に盛られた蜜柑に伊予柑。

「でも。和むでしょう。ほんとうにお祖母ちゃんの部屋なの」

「お邪魔します」

 和むと言っても初めての部屋。緊張している涼を横に、珠里はコタツの側に座布団で枕を作り、そこへ促す。

「ここで横になって。コタツ、温まっているから足を伸ばして休んでね。温かいミルクをつくってくる。ハチミツもいる?」

「うん。じゃあ、ハチミツ入りで」

「わかった。すぐに持ってくるから。休んでいて」

 スイーツキッチンではなく、おばあちゃんが使っている古い台所で珠里はホットミルクをつくる。

 それを持っていくと、もう涼は横になって眠っていた。やはり疲れていたのだろう。

 微かな寝息を耳に、珠里は冷めてしまうだろうミルクをそっとコタツの上に置いた。物音を立てないよう、静かに出て行こうとする。

 その時、ふと振り返り、疲れ果てて眠る同級生をもう一度確かめた。眼鏡をかけたまま、ネクタイもきっちり襟元まで締めたまま。

 踵を返し、静かに忍び寄る。座布団を枕に力尽きている涼へと、そっと手を伸ばす。眼鏡を静かに手に取り外す、それをコタツの上に置く。その次は襟元。そっとネクタイを手に、ゆっくり緩める。そして最後、首元のボタンをひとつだけ外しておく。

 それを終え、ほっとして立ち上がろうとすると急に手首を掴まれた。彼が起きていたことを知った珠里は驚き、心臓が止まりそうになる。

「なんだよ。孤独な未亡人に襲われるのかと思った」

 かあっと珠里の頬が熱くなる。

「そ、そんなわけないじゃないっ。それでは、くつろげないだろうと思って……」

 眼鏡をかけていない同級生が、静かに笑った。

「ありがとう」

 珠里は首を振る。

「大変だったんでしょう。なにも知らなくて」

 今度は彼が寝たまま首を振った。

「でも。充実している。企画が通らなかった時より、ずっと」

 全ての苦しさは、いま充実しているからこそ。そう言える同級生に胸打たれ、珠里の目が少し熱くなる。

「やっぱり委員長は、すごいね」

 珠里があれこれ考えて案じるているだけの間に、彼はどんどん動いてその不安を打ち破っていく。でも時々、疲れる。いま彼は休息をとるビジネス戦士と言いたい。

「真鍋君が自分のためだけではなく、美味しいお菓子のために、誰よりも前へ行こうとしているって。私には、ちゃんと見えているから」

 そして涼は、目元を優しく緩め珠里を見上げている。

 掴まれていた手首にぐっと力がこもり、大きな手がさらに珠里を握りしめた。

「珠里は、いい奥さんだったんだな。旦那さんは、幸せだっただろ」

 彼が緩めたネクタイに触れた。

「どうかな。私、すっかり甘えていたから」

 七つも年上で大人で、男らしい人。その胸に包まれていた三年間は本当に幸せだった。

 そうしたら、涼が笑う。

「良かった。ちゃんと甘えられた時もあったんだな。だって、中学の時。本当は辛かったんだろ」

 珠里は黙る。唇を噛みしめている。悔しさじゃない。誰もわかってくれないと思っていたはずのこと、まさか、気の合わないと思っていた同級生がちゃんと思っていてくれたことに。ついにうっすら涙が浮かんだ。

「大丈夫……、ちゃんと……」

 涙声にならないよう、声を抑えた。寝ている涼が座布団枕の上で首を傾げている。

「眼鏡がなくて見えないんだけれど。また、泣いているのか」

 首を振る。ぼんやりとしか見えないなら、そう思っておいてほしい。なのに、涼の手が珠里の目元に伸びてきた。涙に触れようとしている。

「いつも素っ気ない顔をしているくせに、案外涙もろいんだな」

 そっと珠里は顔を背ける。涼の手先は、珠里の黒髪に辿り着いただけだった。涙には触れなくとも、珠里がその手を避けたのは何故か。同級生は知ってしまっただろう。

「私、行くね。おばあちゃんと梶原さんを手伝ってくる」

「わかった。俺も甘えて、休ませてもらうよ。梶原に、午後、会社に戻ると伝えておいてくれるかな。ここ二日、自宅にも帰っていないから、上司もわかってくれると思う」

 そんなに詰めていたのかと、苦労を垣間見せなかった同級生の影ながらの努力に珠里は感嘆する。

「うん。伝えておくね」

 ふたたび目を閉じた涼を置いて、珠里は立ち上がる。

 障子を開けて出て行こうとした時だった。

「こんな島、早く出て市街に戻りたい。中学の時、そう思っていた。でも、なんだろう。今は、この島が俺を優しく迎えてくれる気がしている」

 その気持ち。珠里も良くわかる。そして涼もいま、ここで休息を取っている。

「私もよ」

 わかってくれる人間がいた。彼はそう言いたそうな顔で微笑むと、静かに目を閉じ何も言わなくなった。


 


 ◆・◆・◆


 


 キッチンに戻った珠里も、おばあちゃん流チョコテリーヌの調理を手伝った。

 カメリアのパティシエがそうしたように、果樹園キッチンでもおなじようにテリーヌ型にショコラ生地を流し込むところまできた。梶原氏が手伝いながら教えてくれる。

「本当にチーフは根を詰めていたんですよ。出来るだけ休ませてあげてください。今度は俺がチーフを助けたいんです」

 梶原氏が先輩を気遣う提案には、珠里もカネコおばあちゃんも、同じくそのつもりで頷いた。

「まったく。これだけ上等な菓子なんやから、おなじショコラが続いてもええとはおもうんやけどね。上の人もこの時期になってダメにするなんてどういうことなん」

 おばあちゃんはチョコテリーヌを見つめながら『無茶を言う』と、ここにきてようやっと怒り顔だった。

「その無茶を、チーフならやってくれると思っているんですよ。確かにクラシック・ショコラは俺の考案でしたけれど、数字を叩き出したのは真鍋チーフの運び方、売り方だったことはちゃんと評価されているんです」

 梶原氏から社内の様子を聞いて、珠里は内心ほっとした。真鍋君のしたことがなにもかも無に見られていたわけではないと。

「だけど。そのせいで、チーフはまたプレッシャーをかけられているんですよ。いままでベテランチーフの無難な企画ばかり通してきたけれど、若手のチーフに企画を任せた途端にクラシック・ショコラが成功して、その上、チーフは東京本社時代に全国ヒットを経歴に持っているから。またなにかやってくれると、上層部が欲張り始めてるんですよ。だから、似たような商品を作り出すだなんて、期待はずれだと――」

 また東京での経歴が涼を苦しめているのかと、珠里も顔をしかめた。

 だけどそこでおばあちゃんが首を傾げている。

「真鍋君、全国ヒットをだしてたん? そうやったん? カメリアさんのなんの商品?」

 そうだ。おばあちゃんは知らなかったんだと、梶原氏と珠里は顔を見合わせた。

「おばあちゃん。柚子胡椒シフォンを考案して企画したのは真鍋君だったのよ」

 それを聞いたおばあちゃんはとても驚いた顔をした。

「ええっ。あの柚子胡椒シフォン、真鍋君が生みの親なん!」

「そうなんですよ。だけれど新人でいきなりヒットを飛ばしたから、その後、経験不足……ってことで、こちらの四国支店に転属になってしまったんです。でもチーフはやっぱりここでもヒットを出した。ただ、プレッシャーはハンパじゃないと思います」

 事情をやっと察したおばあちゃんは驚いたまま言葉を失っていた。

「そんなに次々とヒットは出せないと思いますけど、少しでも売り上げを打ち出すよう、俺もサポートするつもりです」

 すっかり涼の相棒となっている梶原氏は『いまのおばあちゃんのレシピをテストキッチンにあげてみます』とできあがったばかりの試作品を片手に、そのまま足早に帰っていった。

 


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