竜の月 十三日

 俺たちは働き者だ。

 朱の月は未だ登らず、蒼の月がようやく薄れだしたかという頃にはもう起き出し

鉱山に出かける。どうせ洞穴の中だから月が何色だろうと関係ないのだが、もう少し休息が許されても良いのではなかろうか。しかしそんな愚痴を溢すわけにはいかない。いつ誰に密告されるとも限らないからだ。ここを取り仕切るのはかの悪名高い「ヘルモンの黒翼」の一人だ。聞かれたらどんな目に合うか知れたもんじゃない。「口に蠅を、肺腑に巨獣ベヒモスを飼え」だ。早々本心なんざ漏らすもんじゃない。

 今日は新入りが入ってきた。ギャリーとかいう、ブラックゴブリンだ。なんでも

リリス草にのめりこみ過ぎて、ヤバい所に借金を重ねてどうにもならなくなり逃げてきたという。まあここでは珍しくもない話だ。「俺はここで一発当てる、そして札束を奴らの顔面に叩きつけてやるんだ。奴らの尻尾でケツを拭いてやるぜ」とか息巻いていたが、すぐに居なくなるだろう。俺はベテランだ。そういうのはすぐに分かる。クズにはクズの重みってもんがある。クズになる理由すら軽い奴は、この山の嵐に

吹かれて消えるだけだ。

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