ベルリア魔鉱山採掘者ペイジの手記

不死身バンシィ

竜の月 十二日

 俺の名はペイジ。死を司る冥府の神オルカスを祖に頂く、誇り高き魔族だ。

 俺は今、魔界の最果てにあるベルリア山脈で採掘者をやっている。

 魔界の居住部で安穏暮らしを決め込んでいる腰抜けどもには到底務まらない、過酷な仕事だ。しかし、誰かがやらなければいけない事だ。ここに太古から眠る豊富な資源を採掘することは、魔族全体にとって大きな意味を持つ。魔族は今、不味い状況に直面している。つい先日も人間界に派遣されたエリート様がこっぴどく痛めつけられて這う這うの体で逃げ帰ってきたらしい。もう何度目だって話だが、このままでは

調子付いた人間どもがこちらに攻め込んできかねない。今の魔界には少しでも多くの力が必要なのだ。その一端を担えていることを俺は誇りに思う。環境が環境だけに、ここの飯場にいる奴らはどいつもこいつも脛に傷アリのロクデナシ、イカれている事だけが取り柄のクズ揃いだが俺は違う。俺はここの飯場で唯一読み書きができる。紙とペンの価値が分かるのは俺だけなのだ。大きな力を持つ者には相応の責任が伴うという。なので俺は今日から日記をつけようと思う。知恵ある者の務めというやつだ。また配給係の使い魔どもに嫌味を言われるが仕方あるまい。馬鹿に賢者の視点を持てと言っても無理な話なのだから。

 まずは今日の分だが、そうだな……相変わらずここの飯は不味い。用意されるのは小麦の練物とゴブリン豆だけだ。味付けなんてあったもんじゃない。それ以外の食糧が欲しければ自分で調達するしかないのだが、この辺りの獲物は食用にするには最悪だ。今日もコボルドのザッパがクモウサギを獲ってきて捌こうとしたんだが、腹の中にいたガキが大量に飛び出して、たかられてやがった。油断するからだ間抜けが。

 とにかく毎日がこんな調子だ。誇り高き魔族である俺としてはもう少し旨いものが食いたい。なんとかならないだろうか。

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