殺人鬼Fの転生

プラム博士

プロローグ「悪魔の死」

ドタバタと、騒がしい足音が聞こえてきます。


「そっちにいるかー!?」

「いや、いないぞー!探せー!」


全く五月蝿い人たちですねぇ。礼儀がなっていません。


しかし、参りました。今回ばかりは年貢の納めどきでしょうか?

苦心してターゲットのお家に侵入したのまでは良かったのですが、ここまで厳重な警備がされていたとは...

情報が漏れていたのでしょうか?


私は音をたてないように細心の注意を払いながら、しかし決して追いつかれることのないようなスピードで、真っ暗な夜道を走って行きます。

まあ、また今度お邪魔するとしましょう。


ーーーまんまとやってきたな!!

そんなことを考えておりますと、いきなり私を無数の光が照らしたのです。

「おや、これはこれは......」


周囲を見渡しますと様々な武器なり灯りやらを持った黒スーツの軍団が私を囲んでおりました。


「お前の命も、今日で終わりだ!!」

私の前方におります、小柄なスーツの男がそういきりたっております。


これはなかなかに厄介な状況です。

私の背後には海があるのみ、前も右も左も凶悪そうな男達が私を睨みながら立っております。おお怖い。


しかし、まあ、この程度なら5秒あれば皆殺しにできるでしょうか。


私が懐からナイフを取り出し飛び上がり、男達が拳銃を構えたその時ーーー


ああなんということでしょう、私の飛びかかった右前方、男達の隙間から可愛らしい子犬が顔を覗かせ、私の方へヨタヨタと歩いてくるではありませんか。


わたくしは猟奇的殺人鬼などと呼ばれてはおりますが、罪なき命を奪うような真似は好みません。


私は咄嗟の判断で、犬の右にいた男の首をササッと斬り、犬の左にいた男の左足をぶった斬りました。


「がァァ!」「ぐハァォ!」

全く耳障りな悲鳴です。


そうして生まれた隙を狙い、わたくしは子犬ちゃんを抱えて走り出しました。ヒヤヒヤしました。


「駄目ですよ、こんな危ないところに来てしまっては。」

「クゥン...」

子犬ちゃんは怯えたように鼻を鳴らしております。


「安全なところに連れて行ってあげま...」


ーーーダァン!


その時、けたたましい銃声が響き、わたくしの背中に激痛が走りました。

「うっ...」


あまりの痛さについ手を離してしまいました。

子犬は優しい目をして私を見ています。

「......行きなさい、早く!!」

私が叫ぶと、犬は名残惜しそうなーー私の身勝手なかんちがいかもしれませんがーー表情をした後、素早く夜の闇に溶け込むように去っていきました。


ーーーダァン!ダァン!ダァンダァン!

「ぐっ...がっ、はぁ!!」

その間にもわたくし目がけて銃弾は飛んできます。


足を動かしどうにか逃げようとしますが、うまく動いてくれません。

わたくしはバランスを崩し、そのまま海へと落ちてしまいました。港だったのが災いしたのか幸いしたのか...


「おい、落ちたぞ!追うか?」

「いやあくまで目的は殺すこと、もういいだろう。」

わたくしは海の中だというのに、そんな声が響いてきます。

死亡確認を怠るとは、やはりまだまだ未熟ですねぇ...


わたくしは...ここで死ぬのでしょうか......?


身体は重く、動きません。瞼も鉛のように重いです。



残念...もっと....もっと........



殺し...た......かった............



さ...よう...な...ら.........

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