三国転生〜張飛に転生したから無双する⁈〜

@kaede08

第1話 桃園の誓い⁈

「え? 」


 目を覚ました彼の目の前にあったのは満開の桜の花をつける大きな木と二人の男であった。


「急にどうしたんだ、翼徳よくとく


 突然声を上げた彼に驚いたのか不思議そうな顔をしてそう聞いたのは大きな耳が特徴的な青年である。

 慌てて彼は何でもない、と答えるが自分が置かれている状況を全く理解できていない。


(ここどこ? 昨日はいつもどおり仕事して寝たんだけど……)


 などと寝る前のことを思い出していると長身の男が


「儀式の準備は整った。さぁ、二人とも盃を」


 そう言って差し出された盃を戸惑いながらも受け取る。そうして、全員に盃が行き渡ると大きな耳をした青年が前に進み出て


「我ら三人、生まれし日、時は違えども兄弟の契りを結びしからは、心を同じくして……


 と言葉を述べ始めた。どこで聞いたんだろうかと彼は少しばかり悩むとすぐに答えにたどり着いた。

 三国志。彼は小学生の頃、このゲームをほんの少しだけしたことがあった。


(夢? にしては感覚がリアルすぎる。もしかしてタイムトリップ的なやつなのかな、某漫画のお医者さんみたいに……)


 と彼が目の前の非現実的な光景から目を背けている間に誓いの言葉を言い終え二人は酒を飲み終えていた。


「はやく酒を飲まんか、翼徳」


 長身の男にそう言われ、彼は酒を一気に飲み干した。


(どうやら今の俺は三国志の張飛らしい。夢でも何でもいい、社畜よりつれぇことなんてないんだ、この世界、この張飛様が暴れてやるぜ! )


 はやくも酒が回った張飛? はそう決意する。

 こうして儀式は終わり、年齢の順に

 大きな耳をした青年 劉備りゅうびを長兄、長身の青年 関羽かんうを次兄、そして現代の社畜の魂を受け継いだ張飛ちょうひを末弟として三人は義兄弟となったのである。



 このころの中国の世は荒れていた。

 漢王朝に対する農民の反乱が各地でおこり、張飛たちが暮らしている幽州ゆうしゅうの地にも広がっていた。張角という男を首領とする反乱で、黄色い布を印としていたため黄巾の乱と呼ばれている。

 漢の悪政を正すといえば聞こえはいいが、反乱軍は略奪や暴行を働くばかりで、山賊と何ら変わりはしなかったのだ。

 そうした黄巾賊を討伐するため朝廷は義勇軍を募っており、張飛、劉備、関羽の三人は義兄弟となり、これに志願することにしたのだ。

 関羽が自分の財産を使い、屈強な男たちを集め、自分たちの手勢とし義勇軍としての体裁を整えた。

 武器はそれぞれ自分にあったものを選び腕のいいと評判の鍛冶屋に作らせた。

 関羽の武器は「青龍偃月刀せいりゅうえんげつとう」といい長い柄の先に太い刃をつけ、竜の意匠をほどこした立派なものである。

 劉備は長さの違う二振りの剣をしつらえ、「雌雄一対の剣」と名付けた。

 そして鍛冶屋で散々悩んだ挙句選んだ張飛の武器は「蛇矛だぼう」、形は槍に似たものだが穂先が太くて蛇のようにまがりくねっている。

 プロレスラー体型である張飛の体でなければ持ち上げることすらできないな、というのが少し前までヒョロガリのサラリーマンであった男の感想である。

 準備を終えた三人は、義勇軍に志願するため、街へ向かって旅立つのであった。


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