ボーナスステージ

愛しています

「好きだよ」

思ったのと同じく、声にも出ていたらしい。分かりやすく顔を真っ赤にさせていく小林君につられて、自らの顔も赤くなっていくのが分かる。あつい。今まではさんざん、好きだとか愛しているだとか、軽口として言い合ってきたというのに。きちんと想い合ってから口にする言葉には、未だに慣れていないのだ。

「そろそろ慣れてよ」

「先輩こそ、顔真っ赤ですよ」

「小林君につられたんじゃん」

「次こそつられないって先輩、この前豪語したばっかりじゃないですか」

「小林君こそ、今度は照れませんって言ってました!」

……なんで2人とも、幼い子どもみたいな言い分なんだろう。そう思ったら面白くて、思わず笑ってしまった。彼も同じ思いだったのか、まったくとか言いながらも口元は笑っている。

「不意打ちは駄目ですって」

「言うつもりはなかったんだよ? 気づかないうちに、声に出てて」

そう言うと小林君は目を見開き、顔を手で隠してしまった。表情が見えないから、照れているのか引いているのか分からない。いやきっと、彼のことだから引いてはいないと思うけど、万が一のことだってある。「ねえ」とかける言葉が喉まで出かかったとき、彼はゆっくりと顔を上げた。

「愛されてるんですね、僕」

未だかつて見たことがないほどに、嬉しそうな顔。しかしよく見ると、その目にはうっすらと涙のようなものが浮かんでいた。

「え、嘘。な、泣いてる?」

「え、僕、泣いてるんですか?」

彼は手の甲で目元をこする。

「本当だ」

「感極まったの?」

「そうですね。極まりました」

「そっかあ」

「ごめんなさい。泣くなんてどうかしてますよね」

「そんなことないよ。愛されてるんだなあって、私も思った」

「もちろんですよ。僕は桐花さんを、愛しています」

澄ました顔で言い放たれた言葉に、1人で赤い顔をしてしまった。慣れるわけないじゃん、こんなこと!

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小林くんの声 城崎 @kaito8

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