降光
ゼクスルク、そして桃李は見上げていた。彼らの視界に映るのは神話の光景。闇から差し込む幾条もの陽光の柱に燦然と耀く一柱の神の姿だった。
『……黒き君』
跪く〝魔の時代〟の覇者。
人像柱や樋嘴が
ならば、その中心に
――やはり、あの方は真に〝黒き君〟だった。
人の身でありながら〝穢れた
否、それだけに留まらぬ。発光現象と物質化を起こしたアニマがゼクスルクを覆い、更なる領域へと引き上げていく。黒化していた軀の一部を覆う白い描線が光を伴って
「ゼクスルク……?」
首を傾げて呟く桃李。
「何よ、あの
「あまりいい雰囲気とは思えないわね」
「あいつ、まだ先があったのか――」
驚愕に目を剥く勇者とルード、そして呆れたような笑みを浮かべる白金。だが、致し方あるまい。魔の時代の覇者たるに相応しい圧倒的な姿を見せた〝穢れた
しかし、ゼクスルクにとっては彼女らの存在は今、重要ではなかった。主たるモノの存在力の傍には明らかに敵対する気配があったのだ。今のゼクスルクでさえも敵うかどうか判らぬ、黒き君ほどでないにせよ、強烈な存在力が――それも二つ。しかも、場所は〝緑の玉座〟の中心に近い。
ゼクスルクは知らぬことだったが、神門とジラの衝突は舞台を駆け回り、今や〝比翼の魔杖ビルヘイムフル〟の坐す付近にまで迫っていた。まさかとは思うが、黒き君にビルヘイムフルが呀を剥くことがあったとしたら……。神門に対する悪意の臭いを発散させている気配が接触したとすれば、全くの杞憂だとも思えぬ。ならば、御君の元へ馳せ参じるのは己の役割と、ゼクスルクは判断した。
『行くぞ。黒き君の元へ急ぐ』
それだけ告げると、魔の時代の覇者は塵雲薙ぐ己の主へと歩を進め始めた。無論、ゼクスルクと戦っていた久遠らも後を追う。奇しくも、〝魔石貴族〟である〝比翼の魔杖ビルヘイムフル〟の眠る玉座へと、運命の徒は集結する構図だ。誰が決めた定めやら、運命に楔を打つ者は、今は差し込むイラストリアスの直射日光の下。
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