本能
「戻ったか」
石造りの街の郊外。小高い丘に立つ白い翳があった。灰を孕んだ風に軍用
つぶやきに応えるように、彼の背後から蒼いMBが近づいてくる。
MBの胸部装甲が展開し、中から顕れたライダーがヘッドギア付きのヘルメットを脱ぐ。密閉空間から開放された金髪が、それ自体が一個の生物であるかの如くざわめき逆立った。我以外皆我下といった傲岸不遜な笑みを浮かべた
「へえ、全然怯まないんだね」
「…………」
ジラ・ハドゥの挑発と戯言はいつものことだが、今回は度が過ぎていた。
「それほどまでに龍神神門が気になるか?」
「……!」
嘲弄を含んだ
「僕と、一戦交えるかい?」
「……楽しめそうだな」
天空――
黎い――いつしか可視化していた瘴気がジラを包み、内側から怪物の姿を映し出す。ヒト型でありながらも
頭蓋は人じみていたが、眼窩から鼻骨までを碧眼を思わせる器官が埋めており、顎部の剥き出しとなった
〝光却のサウゼンタイル〟――。触れるもの総てを
刺々しい殺戮本能を形とした
尋常の――戦闘機兵と見せて、未だ銀河人類史に於いて前例の無い
なるほど、この稀代の
臨界にまで高まる爆発の瞬間。刹那に燃え広がり、周囲は灰燼どころか地に焼痕が穿たれるは想像に難くない。
黎い
豪雷の如き地響きが世界を横断する。ともすれば、火薬庫に火種を投ずるきっかけは、しかし予想に反して、両者への水入りとなった。
「……チッ。白けるなァ」
片や空間そのものに作用する衝撃、片や物質化の域にまで達する高濃度の光の槍。彼らが衝突した場合、その規模は丘から望む石造りの街を巻き込み、焦土どころか消滅せしめるのは確実とさえ言えた。
今の〝光却のサウゼンタイル〟を超越する
「残念だけど、今回も君と遊べないみたいだね。次があれば……
「俺は、構わん」
腰だめの構えを解いた
蠢く黎い翳が土煙に浮かび上がっている。カリアティードという機械人種を狩る、絶対強者。
渦巻く磨り硝子の空、風の色は未だ灰。巡る時代の変遷は、二度目は悲劇、三度目は喜劇という。ならば、〝灰の時代〟を超え〝魔の時代〟を越し〝柱の時代〟を継ぐ時代は、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます