畸嵬
小烏丸が大地を奔る。三脚の鴉は空を飛べぬものの、その羽撃きは塵埃を巻き上げて濛々たる土煙を引き連れている。
「…………」
周囲を睥睨しつつ疾駆する神門は、朽ち
曇天に手を伸ばし、半ばで潰えた
その景色がやけに心に突き刺さるのは、何も全く見知らぬ光景ではないからだろう。そう、建ち並ぶ高層建築物が標となった墓場……ここに既視を感じるのは、その建築物の様相が神門の知るそれと酷似していたからに他ならぬ。
竒妙な符号……別惑星で発生しているであろう別人類種が、
確かに、何者かが人類という種の進化の道筋を誘導しているように思える。ならば、それは誰か……。彼が――神門が追っている者達が或いは……。
軀と化した摩天楼が生んだ緑の風が歌。廃れ朽ちたものと、そこに息づく確かな生命が奏でる蒼然さと鮮烈さが入り交じる哀切な美しさは、なだらかな坂に雪が舞う風景と何処か似る。
鈍い灰色の空を
「……ッ!」
小烏丸がブレーキステークスを打ち込む。脚部に仕込まれた杭が大地をえぐり突き刺さり、土煙を共としてつんのめる勢いでMBは急停車した。
そして――彼自身説明がつかないのだが、ルードの救出を第一目的としていたはずが惹き寄せられるかのように、それへと近づく。まるで夢遊病の如き、忘我に彼は陥っていた。
「……ロボット、か?」
今、彼が駆っている小烏丸と比較すると明らかに
木漏れ日差す緑の海の底で眠る
――黒き君よ。あなたのアニマを
「……ッ」
唐突に響いた声に小烏丸の腰にマウントしていたマシンライフルを構える。しかし、如何なる反射の妙か、周囲何処からも聴こえる声は発生源が掴めぬ。警戒心から神経を針の如く
――黒き君よ。あなたのアニマを
再度の同じ文句に、神門はこの得も言われぬ――鼓膜を介していないような声に総毛立った。この声の〝気配〟といい、脊髄に沁み入るような、脳内で響くような声……。三柱の白い法衣を纏った異形の者――
「……何者だ」
――…………黒き君よ。あなたのアニマを
声は神門の誰何には答えず、一言一句違わずに
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