イラストリアス4
数日後のイラストリアス星系――。この日、二舟の宇宙艇が星系へと侵入した。
一つは、ルード所有の宇宙艇。定員数こそ少ないものの、宇宙艇を所有しているのは
「なんか、並んで飛ぶと劣等感に苛まれるなぁ」
だが、若くして一国一城の主となったルードは、とてもそうとは思えない表情を浮かべている。操縦席から並走する宇宙艇を横目で眺めたルードの、ため息混じりのぼやきもむべなるかな。
そして、もう一つの宇宙艇――。依頼主アリアステラの宇宙艇だ。滑らかな陰翳を描く流線型のデザインは、高級宇宙艇メーカーによるフラッグシップモデルだ。磨き上げられた
「…………」
同じく操縦席に座る神門はというと、宇宙艇には興味がないと言わんばかりに目指す惑星――よく眼を凝らせば、僅かとはいえ灰色の点が見える――を見つめていた。
「依頼主もさ、調査をしたいんだってさ。一度、俺たちが惑星地表に降り立った後、調査チームとして二名降りてくるらしい。まあ、彼らはあくまで学術的調査がメインだそうで、サルベージそのものは俺たちが担当ね」
「了解した」
「……なあ、神門って秋津人なんだよな?」
唐突に話題を変えたルードに、神門は首肯した。別に隠し立てするようなことでもない。
「純粋な興味なんだけど、秋津人って
「……他民族に比べると少なくはない。旧時代から
確かに、脳内チップ未処置者が多いのか、携帯端末機は
「だからかぁ。俺、
「俺からすると、それほど珍しい存在じゃないがな」
誰かを思い出しているのか、胸元を飾る銀製のラリエットと
「……そろそろ到着かぁ。到着したら、俺、〝向こう〟で打ち合わせあるから」
誤魔化すように出した言葉の裏側に、神門は気づいていたのだろうか。彼から触れられれば斬られそうな気配が失せ、朴訥さから来るのであろう無表情に立ち戻っていた。
「……整備でもしておこう」
「よろしく!」
ルードは、安堵に嘆息している自分に気がつかなかった。何処か危うい雰囲気を隠し持つ護衛の少年。だが、腕前は本物だ。契約前の試験では、涼しい顔で全てにおいて完璧な成績を叩き出し、確かに特殊部隊出身との触れ込みも頷けた。これほどの逸材は探そうとしてもそうそう見つからぬ以上、些末な部分には目を瞑らねばならない。
大戦が終わりを迎え、多かれ少なかれ誰も彼もが何処かに傷を負っている。隠していることも当然あるだろう。せいぜい、彼が着火するような出来事が無いよう、ルードは信じてもいない神に祈っていた。
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