窖獣
神門とオリヴェイラは
今日のところは様子見だ。できれば見つからぬよう、そして、危ういとなれば即座に逃げ出せるよう、慎重に歩く。そもそも、二人とも無権能者の上MBもない。権能者のように強引に事を運べようはずもなく、せめてその出口に巣食う荒獣を見定めて対策を練ろうとしているのだ。
洞穴の
ずむっ、ずむっと足元から断続的に震動が伝わってくる。
だが、外の光との邂逅もつかの間、天岩戸の扉は巨大な陰に遮られた。
――お出ましらしい。
神門がハンドサインで上を指し示すと、オリヴェイラは下を指し、続けて回り込むサインを送ってきた。彼らが交換し合ったサインは、神門が上から、オリヴェイラは引き続き下から岩影を渡りながら様子を伺うという意味だ。お互い頷き、情報の交換を確認しあうと、神門は石柱じみた岩をよじ登りだした。手がかり足がかりになる突起が多い岩柱は、予想以上に登りやすく、速やかに目をつけていた
それは、
――MB無しで戦うには厳しい相手だ。
即座に彼我の戦力を冷徹に判断すると、神門はオリヴェイラに撤退のサインを出す。……オリヴェイラより了解のサインが戻ってきた。
見つかれば厄介なことになりかねない。登った時よりも慎重に岩柱を降りていく。ここで焦って岩を踏み外しては悲惨だ。落下の憂き目を逃れたところで荒獣に見つかってしまう。薄氷を履むが如く、焦燥に逸る
傍にオリヴェイラが近づいてきた。彼は彼で距離的に近い場所にいたからか、岩陰に這いずり回っていたらしく服の至るところが汚れていた。ひとまず、どのような荒獣かは確認した。頷き合うとそのまま彼らは姿勢を低くし、来た時と同じく陰へ陰へと移り渡り、仄暗い地の底へと戻っていった。
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