苛酷な境遇から自死を望んだ少年少女が、偶然に出会い、死に場所を求める旅路で次第に心を通わせていくお話。
文章が読みやすく、エピソード毎に誰の視点で書かれたものなのかが明記されているため、すんなりと物語に浸ることができました。
特に、一つ一つの情景描写が丁寧に描かれており、そのどれもが普通の人からみればなんでもないような事にもかかわらず、鮮明な美しさを内包しています。それは死と向き合った彼、彼女の視点だからこそなんだなと感じました。
ラストは見る人によって印象が変わると思いますが、私は胸にじんわりとしたものが込み上げてくる素敵なお話だと思いました。
自殺を決めた少年と、自殺を決めた少女が、自殺しようとした場所でバッタリと出会います。そして向日葵畑でいっしょに死のう、と決めて、向日葵畑までの道を旅するお話です。
道中に経験する出来事がとても綺麗に描写されていて、そしてお互いが心を開いていく過程が、繊細に描かれています。
このまま二人が仲良くなって、仲良く生きる道を進んでくれたらいいなと、思いたい気持ちがあるのですが、少年の自殺したい理由が『不治の病で死ぬのが嫌だから、その前に死ぬ』なのです。
すでに少年が生に進む道は閉ざされているのです。それがとてもせつなくて、二人のたどり着く道はどうなるのだろうととても気になりました。
ラストは明るいハッピーエンドではありません。
でも何の深みもないようなバッドエンドでもありません。
彼らがそれで幸せだったのかどうか、読んで、あなた自身の目で確かめてみてください。
1月30日時点の最新話「第14話」まで読んだ感想です。
「青春」というものを彷彿とさせる情景の切り取り方がお上手な作品です。
夕焼けの中の雨、星の冴える夜空、小さく灯る蛍の光。
そういった画の中でのやり取りは、みずみずしく感じられます。
様々な辛さと否応なく向き合いながら、けれどまだ未熟な時代は、様々な痛みを伴う時期です。
でも、そういったことを自分なりに乗り越えていく様子を描くというのは、それだけでとても価値のあるものだと思います。
青春を感じさせる「旅」という題材が、これから二人それぞれの不幸にどのように関わって、どのように生きるヒントになっていくのか、期待しています。