Interludi.或る地図の裏側

『これは、おれがひろったちずのうらがわににじんでいたもじのられつです。

おれにはがくがないので、うまくよむことができませんでした。

ともだちが、よみきかせてくれましたが、おれにはがくがないので、やっぱりいみがわかりませんでした。えいゆうあぽろがおれにささやきました。これはえいゆううらのすのちずだよって。おまえはうらのすのちずにえらばれたたびびとなんだよって。


さいごのたびびとになるきはない?とあぽろはいいました。

そうすれば、ちずにとじこめられたおんなのこが、かいほうされるそうです。

おれは「いいよ」といいました。

おれはさいごのたびびとになりました。ごめんなさい』


 むかしむかし

 女神さまはやっつの鏡を作りました

 やっつにした理由は、彼女が八番目の星だったからです

 彼女は十人兄弟の八番目でした

 彼女は母の愛を得られませんでした


 彼女は母さまの温もりが恋しくて

 温かな光が恋しくて

 色んな角度から母さまを眺められるように、八つの鏡を作ったのです


 けれど鏡に映る母さまも、九人の兄弟も、

 それはただの像でしかなかったので

 彼女に愛をくれませんでした


 彼女は寂しくて よく散歩に出かけました

 ある時、不思議な船が宇宙を走っていきました

 その船はとても愛らしく、女神はじいっと見つめていました

 するとその船は一つ、また一つ、と

 ぽろりと何かを零して落としていったのです

 それは不思議な部品でした

 船のあとを逆向きに歩いて、女神は八つの部品を見つけました

 それは、かつて女神のように生き物であったものだったのでした


 女神はその部品を組み立てて、彼らの元の姿を取り戻してあげました

 けれど彼らは自分が何者であったか、忘れてしまっていました

 女神はいいました

 「わたしたち、家族になりましょう」


 女神は八人の子供たちに、八枚の鏡を与えました

 そこが彼らの大地になるように

 わたしには役に立たなかった鏡だけれど、

 あなたたちにとって、大切なものになればいい――

 そう、願って


 ある時、一人の子供が、小さな鏡を作って女神に与えました。

 女神がくれた鏡を、女神に返してくれたのです。

 女神は泣きました

 別の子供は、その鏡を割りました

 割れた破片でまた別の子供が、女神の眼を潰してしまいました。

 何故なら女神はいつまでも母の姿に囚われ

 彼らのことを見ようとはしなかったからです

 子供たちにとってそれは

 女神にとって、とても不幸なことだと思えました


 女神は血の涙を流しながら、ありがとう、ありがとうといいました


 別の子供は彼らの罪を憎み

 別の子供は彼らの罪を悲しみ

 別の子供は彼らの罪を見なかったことにしました

 別の子供は、割れた破片を踏み、死んでしまいました


 そして最後の子供は、女神の目に刺さった破片を抜いて

 にやりと笑ったのです

 盲いた目はあなたに相応しいね、と言って

 女神はただ、破片を抜いてくれてありがとうと泣きました

 痛かったの、痛かったのと泣きました


 最後の子供は、女神を蔑んで言いました


「あなたが俺に助けを求めるのなら、

 そんな日が来るのなら、

 俺はいつでもあなたのしあわせを願います」


 けれど女神は、ありがとうと泣くだけで、

 彼に助けを求めませんでした

 彼は呆れたように首を振って、

 女神をばらばらに砕いてしまいました















『アスモ、ごめんなさい。おれはやっぱり、ちずの子をたすけたいんです。

あと、ザウスト、いつもめいわくかけてごめんなさい。



あと、レプリタ。ごめんな。ほんとにごめんな。なにかあったら、おれのいもうとのこと、よろしくね』


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