第四十一話 未来桃太郎 一
人間界、地下区画。
『大いなる英知』の部屋―――。
鬼たちが立ち去った、老人たちだけの部屋。
「『鬼の皆さまは、みんな、いなくなりましたね』
「鬼というのは―――ああいう人たちだったのだね、知らなかったよ」
溜息をつく、盲目の老婆。
人ではないがな、と爺は言う。
「あの子は、ちゃんとやれるかね」
「貴方の教育を受けているから大丈夫だよ」
少年が生まれたのは、ここよりもさらに深い階層である。
人類が地下に潜ってから生まれた。
『地上滅亡』の次の世代の子供である。
それでも周りの人間と生活し、大いなる英知に教育を受けた。
「貴重な経験ができた―――魔界の
おじいさんは呟く。
「できるなら、『こんなこと』になる前の――――もっと違うときに」
お婆さんも、悲しむ。
心が痛い。
「しかし、婆さんや、もうどうにもならん―――儂らが二人で決めたことじゃあない」
「………」
「儂ら二人だけの意思じゃあ―――変わりはせん」
何も特別なことではない。
少年が旅だったあと、残された二人は、静かに事態を見守る。
そうするしかない。
「なあ、爺さんや」
「鬼は」
鋭く、静かに言った。
「鬼は―――武器を持っとった。儂を撃とうと」
「それは………爺さん、しかしそれは」
「あの紫色の鬼に―――撃たれるべき、だったのかもしれん」
老婆は沈黙が増えていく。
「どちらにせよ―――こちらも命がけじゃ」
この国は疲弊していた。
しかし、『やらなければならないこと』があった。
それは、敵地から数人の敵兵が来ようが、そしてそれが鬼であろうが、これから行われる作戦には全く関係のないことであった。
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