第三十七話 ルミリオ 一

魔界 アグラ区


樹海地帯。

甲虫が、キチキチ、キチ――――と喚きながら歩く。

虫の鳴き声がこだまする森の中。

閃光が光った。

一閃。

対ルミリオ用の新型魔導刀は、また一匹、害虫を駆除した。

金切り声を上げて、倒れていく甲虫が二匹、三匹。


毒の瘴気が舞う。


「かなり、進んだな―――」


駆除のスピードが速くなった。

第二十四隊の、全体の練度が上がってきたのだろう。


「百匹や二百匹で終わりじゃあねえんだぞ、まだまだだ」


「キリがないですね」


とは言っても、隊員たちには疲れよりも、難敵に対する方法に手慣れてきた、という自信があった。

声に、気力が程よくこもっている。


「奴らの巣でも倒せば、一発なんだがな」


「いいですね、それ」


「そうだとありがたいのだが、残念ながらそういう種族じゃない」




群れで飛び回り、大勢で移動して作物を食い荒らす。

それが彼らだった。

この辺りは元々、魔界の鹿類が豊富で、その肉は珍重されていたが、多くはルミリオの餌食となった。

ここにしかいない種族がいくつか、絶滅した。


隊員は森の奥へと進む。

第二十四隊。

対ルミリオのために組織された

有害魔獣撲滅部隊。



腹に大きな穴の開いた、ルミリオの死体が転がっていた。

苔のような湿った緑色の甲殻。

そこから瘴気が舞うと、あたかも巨大な毒茸ドクきのこといった様相である。


「は、先にやっていたか」


隊員は通り過ぎる。

マスクのため、やや視界が狭くなっているが仕方がない。

毒素を吸わないためだ。

他の隊員がすでに倒していたのだと気づく。


「先客か」


「ふん………手際のいいことで」


「負けていられないな………」


自分も討伐を続けなければ。

この隊ではないが、人間界に旅立った部隊もいる。

人間の恐ろしさは、伝え聞いていた。

奴らは鬼を非常に嫌っているらしい、という点では恐ろしい。

或いはルミリオよりも危険な戦いに、行った部隊があるのだ


魔界を救うために軍鬼になった―――そういう自負が、この若い隊員にはあった。


「もっと先に行くぞ」


後方の隊員が言う。


ルミリオはどこから来たのか。

毒素でよどんだ森林の空気の中、考えながら進んでいく。

よどんだ視界は霧のようであった。


キチキチキチ………


「腕だ、腕を切れ」


「わかっている!」


二人の隊員は駆け出し、一人が右腕、もう一人が続いて左腕を切った。

有害魔獣は悲鳴を上げる。

もっとも殺傷力を持つ、爪さえ切ってしまえば、戦える相手であった。

あと、この霧の中にどれだけが潜んでいるかは不明であるが。

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