第三十一話 第二十四小隊 三

 魔界、別地区。

 アグラ区のはずれ、森林地帯。

 新しい部隊の実践投入試験が行われていた。


 チキチキチキ………!


 魔界の森林、いや樹海地帯である。

 魔族もうかつには近寄らない秘境に、甲殻のこすれる音が鳴り響く。


 暴動を生み出した元凶、

 魔界の悪。

 有害魔獣ルミリオは、森の中を歩いていた。


 苔を張り付けたような、深緑色の体表。

 尻尾を引きずっている………もとは沼地を好み、陸上にまでは餌を探すときのみ上がる。

 両腕のはさみは、鬼の頭よりも大きく、その力も強力である。


 三匹、四匹、後に続く。

 軍鬼のような訓練された隊列などではない、野生の群集である。



 魔導砲が鳴り響く。

 ルミリオの甲殻は、命中し、弾丸に削られる。

 削られたのは表面だけであり、弾丸はひしゃげて飛び散り、回り跳ねた。

 地面に転がっていく薬莢だけが増える。

 動作は緩慢ではあるが、歩みを止めないルミリオ。


「なんて硬さだ!」


 三匹、四匹に迫られ、魔導砲を持った鬼たちはじわじわと下がる。

 毒素を防ぐ顔装マスクをつけている。

 後退する。

 後退するしかない。


 その鬼たちの間から、素早く駆けだした鬼がいた。

 新型の軍鬼服を身にまとっている。

 強固を誇る怪物、ルミリオ。

 難敵に向かって、特攻していく。


 走りながら、振りかぶった―――かたな

 ルミリオの甲殻に振り下ろす。



 一閃。

 斬撃の際、光が飛び散る。


 切り取られたルミリオの鋏。

 それは鈍器のように、地面に転がっていく。

 片腕を失ったことで、鳴き声を、悲鳴を上げるルミリオ。

 興奮のままに、叫び、体液をまき散らす。


 続いて走ってきた鬼がさらに刀で一閃。

 ルミリオは地面に転がって動きを止める。


「魔導砲を持たない部隊なんて―――最初はだれも信用しなかったのにな」


 単なる刀ではなかった。

 高濃度魔石を刀身に使用した軍刀。

 斬撃時に反応光が煌き―――。


「切れ味を増大させる新兵器―――か」


「ルミリオはこうやって退治すればいいのさ―――弾丸が効かないなら、切り落とすまで」


「前時代的だぜ」


「だが………有効だ」


 目の中に感嘆の色を浮かべながら、後方支援の彼らは新しい部隊の背を見つめる。


 第二十四小隊。

 対ルミリオのために組織された

 有害魔獣撲滅部隊。


 魔界を救うべく組織された彼らは、森の奥へ進む。

 鬼も恐れおののく怪物のるつぼへ、歩いてゆく―――。

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