夢の帰り道

「うーん、君はやっぱりここにいるのが似合っているんじゃないかなあ。覚醒した状態でこんな幻が創れるなんて、たいしたもんだ。」

どうやら僕は地上に帰って来られた訳ではなく、この風景は僕が想像したものが映し出された幻でしかないらしい。そういえば、記憶の薄いところはどこか造りがあいまいな感じだ。

「君がうらやましいよ。僕はもう長い間ここに住んでいるものだから、そんな夢が生み出す魔法の力がすっかり退化してしまった。地上の人たちもみんな夢から遠く離れてしまい、星空の美しさに気がつくことさえ無くなってしまったみたいだ。僕は今夜、自分の持てる可能性を試したんだよ。星たちを力の限り美しく輝かせることで、僕の存在に気づいてもらおうとね。どうやら、君だけは気がついてくれたんだね。」

「ああ、とても素晴らしかったよ。あんな美しい空は初めてさ。君の夢の力だって凄いじゃないか。」

僕らのまわりは、またしても美しい無数の星たちがやさしく取り巻いていた。僕はこの美しい星たちに協力してもらういい手を思いついた、と想像するや否やそれは創造されていた。数えきれないほどの星、そして星のこどもたちが集まって、地上まで続く金色に瞬くハシゴを形作ってくれたのだ。二人は同時に感嘆の声を漏らした。

「素晴らしい・・・。」

「帰るんだね。また、会えるかな。」

「会えるさ。今度はちゃんと眠ってからくるよ。」

二人は顔を見合わせて、笑った。

 星の輝きで出来たハシゴは、僕が降りると端から散り散りに分解して夜空に吸い込まれていく。寂しげな表情で僕を見送る彼の顔は、遠目に僕の顔のようにも見えた。僕が地上に着くと同時に、ハシゴは影も形も無くなっている。見上げると夜空の星たちが、僕にさよならの合図を送るように一斉に瞬いた気がした。さあ、早く帰らなきゃ。早く帰って暖かい布団に入って、もう一度彼に会いに行こう。

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星のこどもたち 花咲風太郎 @h_futaro

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