書きたてフレッシュ!ふたりの秘密全部見せます!?[Side:B]
「二〇〇一年十二月九日
今日から、キャロライナとまた一緒に暮らすことになった
キャロライナはお金持ちで、前の部屋よりも良い部屋を借りてくれた
これからはまたずっと一緒だなんて、なんだかまだ実感が湧かない」
……セブンポットの目にまず飛び込んできたのは、その短い文章であった。
アナハイムが言った通りに、セブンポットは一旦赤いノートの研究を止め、青く分厚いノートを開いた。てっきり『完璧な魔導書』第二巻だと思って手をつけていなかったのだが、そこにあったのは、どう見ても日記。それも、ヒウィッヒーに書くような短文であった。
ページが真っ黒になるほど細かな字で、みっしりと書かれた日々の記録。その筆跡は『完璧な魔導書』に比べると酷く歪んでおり、また卑屈そうな印象を覚えた。しかし書き方の癖など、明らかに一致している部分も見られる。セブンポットはとにかく続きを読むことにした。
「二〇〇一年一二月十日
出勤の時間だと思って目が覚めた
もうあそこに行って、男の相手をしなくてもいいなんて、まだ信じられない
なぜか涙が出てきたので泣いていたら、
キャロライナが『モルガン、つらかったね』と慰めてくれた
二〇〇一年一二月十一日
キャロライナは、私なんかよりとても上手に、たくさんお金を稼いでいる
馬鹿を騙してある程度まとまった額手に入れられれば、
そこから増やすのはそう難しくないそうだ
男相手に小金を稼いできた私の暮らしは何だったのか、自己嫌悪が凄まじい
二〇〇一年十二月十二日
キャロライナが高いご飯のお店に連れて行ってくれた
あんなにからくて美味しい食事は、
ヤクサイシンにいた頃から数えても初めてだった
私なんかがこんなものを食べていいのかと不安になり、後で吐いてしまった
二〇〇一年十二月十三日
ここでの生活費は全てキャロライナが出してくれていて、私は一円も稼げていない
キャロライナにそれを言うと、
アナタは居てさえくれればそれ以上は何も望まないと返された
私の愛する人はとても優しいけれど、
私はその優しさにまるで報いることができない
二〇〇一年十二月十四日
キャロライナと抱き合っている時だけ、
私は自分が最低な存在だということを忘れられる
しかし今日は途中で仕事のことを思い出し、怖くなって泣いてしまった
キャロライナは大丈夫だと抱きしめてくれたが、
お金でも体でも彼女に報いられないなら何ができるのだろう」
……本当にこれが、あのモルガンの日記なのか。読めば読むほど、セブンポットの疑念は膨らんでいった。
モルガンといえば、『完璧』が口癖の重度のナルシストのはず。対してこの文章の書き手は、どう考えても自分が好きだとは思えないし、どちらかと言えば自分を嫌っているようにすら見える。それにこの書きぶり、夜の店か何かで働いていたかのようだ。キャバクラ、いや、この書きぶりだと体を売っていたように見えるし、風俗か? 基本的に他人を見下している風なあの女が、そんな仕事に耐えられるとはとても思えない。
読み進めれば読み進めるほど、こちらの気分が悪くなるような記述が続いた。ヒウィッヒーやブログの鬱々とした文章を延々と読まされているかのような感覚。普段ならこんなノートは即刻閉じるところだが、モルガンの書いたものとあれば読まざるを得ない。アナハイムもただこちらを不快にさせるために「読め」と言ったわけではあるまい。キャロライナの秘密が書かれているはずなのだ、このどこかに。
それはしかし、本当に果てしない作業であった。暫定モルガンの日記は、先程のように苦しげな日々がどこまでも綴られているばかり。分かることといえば、モルガンがこのファクトリーで、キャロライナと共に暮らしていたこと。心を病んだモルガンがキャロライナに養われていたこと。あとはふたりがしょっちゅうセックスをしていたことくらいである。
(恋人だったんだ。女同士なのに)
二十三年越しに知った事実であったが、別に知りたくもないし、そんなもの知ったところでどうしようもない。ノートを放り投げたい衝動と戦いながら、セブンポットはびっしりとした文字を丁寧に追っていた。
モルガンの筆跡が比較的安定し始めたのは、二〇〇二年の四月に入ってからであった。
「二〇〇二年四月十一日
今日はキャロライナから服を借り、
出掛ける用事もないのに久々にお洒落をしてみた
姿見の前で一回転し、笑顔を作って、あの頃のように『完璧』と言ってみる
昔はこうやって鏡を見るのが何より好きだった 懐かしい
二〇〇二年四月十二日
最近、セックスの時以外でも笑えるようになっている気がする
キャロライナにそれを伝えると、確かにその通りだととても喜んでくれた
こんなに喜んでくれるなら、早く元気にならないとと思った
二〇〇二年四月十三日
キャロライナに、人を騙してお金を稼ぐ方法を聞いてみた
だけどキャロライナには、
アナタはいつもどちらかというと騙される側だからやめておきなさいと諭された
確かにそうだ でも何かをやってみたいと思えることは、
とても素晴らしいことだと言われた」
この頃から、比較的前向きな内容が増えている。この記述からのみ判断するならば、キャロライナはそれを心から喜んでいる様子だった。
少々驚きといえば驚きである。ハッキリ言って、キャロライナは何を考えているか分からない時が多いし、それを隠しているようにも見える。カイエンへの態度の辛辣さは言うに及ばないが、『友達』と呼んでいるセブンポットにすら、少しでも本音で接しているようには見えない。別にキャロライナが腹の中でどう思っていようと構いはしないが。さっさと人間をぶち殺す許可さえくれれば。
もう少し先まで読むと、モルガンと思われる書き手の精神はますます快方に向かっているように感じられた。
「二〇〇二年九月四日
カイエンやネロはどうしているだろうか ふと気になった
二人ともキャロライナのように器用でないだろうから、
きっとかつての私と同じように苦労しているだろう
まだ生きているならば、もう一度会いたい
二〇〇二年九月五日
キャロライナと将来の話をした ヤクサイシンを復興したいと私は言った
彼女は賛成した
『孤島を買いお城を建て、カイエンとネロも招こう』と言ってくれた
ジョロキア様はもういないが、戦いもつらい仕事も無い幸せな暮らし
本当に叶うなら素敵だと思う
二〇〇二年九月六日
魔導書を書き始めた
魔導が失われた今、書いたところで無意味かもしれないけれど
一度は次の魔王と言われたのだし、
魔導書を書き、己が知恵を後世に残すのは魔王の義務だ
知っていることは全て書くつもりだが、
この知識が無駄になり、単なる書き損と終わることを祈る」
……セブンポットは首をひねった。てっきり、こんな目に遭わせたファクトリーもショトー・トードも、ジョロキアを復活させて絶対滅ぼしてやるくらいに考えているものだと思っていたが。ジョロキアは死んだものと諦めているようだし、戦いなどせず皆で人里離れて暮らしたいとは、随分平和な発想である。そして、モルガンが次の魔王と言われていたと? キャロライナではなく?
皮肉なのは、モルガンがここに書いたことが何ひとつ現実になっていないことであろう。ジョロキアは生きていて戦は再開。魔導書はセブンポットに全力で活用され、メンバーは確かに揃ったが他ならぬ本人が欠けているときている。そうか、そういえば死んだのであったこの女は。ここからどうやって死ぬかは知らぬが、バッドエンドが確定した物語の途中にある幸せそうな日々というのは、どうにも読んでいていたたまれぬ気持ちになるものだ。
とにかく、目標を定めたモルガンは、ここから張り切り始めている。
「二〇〇二年十月一日
魔導書の構成を考えていた
参照しやすく、誰でも真似できる、
実用的な内容が良いと思っている
キャロライナもそれは素晴らしいと言ってくれた
素晴らしい本に仕上げたい」
「二〇〇二年十一月二十三日
知らなかったのだが、島を買うには何億円も必要らしい
そこにお城を建てようと思うなら、追加でもう何億、
規模によれば何十億円か要るようだ
キャロライナでもそこまでのお金は持っていまい
本当に買えるだろうか」
「二〇〇二年十二月九日
ふたりがここで暮らし始めて一周年の記念日
お祝いをして、沢山愛し合った
お金を出してくれたのはキャロライナ
一年前と何も変わっていない
いい加減何もできないのは嫌だ 彼女の助けになりたい」
……セブンポットは、この先を読むのが何となく嫌になり始めた。
何かしなければと張り切るのは結構だが、こういうのは大抵上手く行かない。セブンポットにはよく分かる。一旦心を崩してしまった者は、そう簡単に元通りにはなれないのだ。
脚をやられたサッカー少年と同じである。今は医療も進歩しているし、治療さえ受ければとりあえず歩ける程度には回復するであろう。しかし、そこまでだ。軽い怪我であるなら構うまいが、それが深い傷であったなら。元通りサッカーができるところまで、というのは、なかなか辛い道程である。
モルガンという女が負った傷は、そう浅いものではなかったはずだ。傍目から見てもプライドが高く、真偽のほどはさておきヤクサイシンで魔王候補とまで言われた女だ。それが体を売ることでしか生きていけなくなったとなれば、その精神的ダメージたるや尋常なものではあるまい。
案の定、そこから先は思わず目を逸らしたくなるような記述が続いた。キャロライナから偽装身分証を用意されたモルガンは、介護の仕事についたようであった。資格も知識も無い状態から、辛うじて見つけた仕事だったのだろう。
「二〇〇二年一二月二十日
今日、利用者から怒鳴られた瞬間に訳が分からなくなった
気付いたら泣きながらうずくまっていた
ファクトリーの人間がこんなに怖いなんて、この一年の間にすっかり忘れていた」
「二〇〇三年一月十七日
仕事を無断で休んで今日で三日目になる
向こうからの電話には一切出ていない
電話なんて作ってもらわなければよかった 身分証も無駄になりそうだ」
「二〇〇三年二月十日
キャロライナにもう働かなくていいと言われた
とても優しい言葉だったけれど、
自分が何の役にも立たないと言われたようでとても悲しい
私は一生キャロライナの足手まといだろうか」
だが、想像した通りであった。僅か数月のうちに、モルガンの文字は最初のようにガタガタと崩れ始めている。それはそうだろう。そう簡単に社会復帰できるわけがないのだ。
そもそも、ここは彼女らにとっての本来生きるべき社会ですらない。いきなり海に突き落とされたライオンのようなものだ。このファクトリーで生きるように生まれていないものが、無理矢理その中で生きて行くというのは。中にはキャロライナのように、水でも陸でもワニめいて強い生き物もいるかもしれないが、ライオンはワニではない。王として振る舞えるのは、ただ陸にいる時のみなのだ。
この物語のオチが、セブンポットには段々と見えてきた気がする。セブンポットはやや飛ばし気味に日記を追った。
「二〇〇三年三月一日
資格の勉強のテキストが届いたが、文字が追えない
何かが書いてあることは理解できるが、視線が滑って内容が入ってこない
ファクトリーにいるうちに、本の読み方まで忘れてしまったようだ」
「二〇〇三年三月二十四日
ここのところ魔導書が進まない
書かなければと思う程考えがまとまらなくなって、わっと混乱してしまう
こんなこともできないなんて
魔王を継ぐなどと大それた考えを抱いた私が馬鹿だった」
「二〇〇三年四月十九日
キャロライナと喧嘩をしてしまった
キャロライナが何もしなくていいというから、
私は無能だと言いたいんでしょうと
子供のようにわあわあと泣いていたら、キャロライナが慰めてくれた
死んでしまいたい」
「二〇〇三年五月二日
キャロライナとしようとしたら、全然濡れなかった
どこをどんな風に弄られても、感じないし気分が乗らない
キャロライナはそんな日もあると言ってくれたが、
拒んだように思われたかもしれない 最低だ」
「二〇〇三年五月二十一日
体重が最後に計った時から数えて五キロ減っていた
そういえば最近食欲が全然湧かない
キャロライナからも痩せすぎだと言われた
これ以上醜くなったら、いい加減見捨てられるかもしれない」
……風俗で働いていた頃のモルガンがどうだったかは分からないが、彼女の精神状態は明らかに悪化の一途を辿っている。スイートパラディンに何度倒されても偉そうに登場していたくせに、こうも……いや、案外そんなものか。ジョロキアの下にいて魔導が使えた頃は、それは自信満々に決まっているだろう。何度か負けたとしても、命さえあれば再び戦える。今回の失敗は最終的な成功への布石である。そう思えたに違いないのだ。
それが、魔王の死により……死んでいないのだが……全て変わってしまう。戦うだけでは生きられなくなり、くだらない男に身を売って。そこから事情は知らないがとにかく脱出したはいいものの、そこでは恋人に養われる日々。対して自分は、ただその辺で働くことすらできない状態ときている。
やがて、日記自体が毎日書かれなくなっていった。毎日書かれていた日記が週に四日ほどになり、三日になり、週に一回書けばいい方になり、七月が終わる頃にはぱたりと記述が途絶えている。これで終わりだろうか。残り少ないページを、セブンポットはペラペラとめくり……そこに見つけた。恐ろしく丁寧な字で書かれた、彼女の最後の記述を。
「二〇〇三年十二月九日
キャロライナ、アナタがこれを読んでいる時、私は既に生きてはいないでしょう
アナタは何も悪くありません、
私がファクトリーで生きては行かれない、それだけの話です
魔王を継ぐと言われていた私には、はじめから魔導しかありませんでした
魔導を取れば体しか残らない、つまらない女だったのです
アナタのように賢くて魅力的な女に生まれたかった
いっそアナタも私も、
最初からファクトリーに生まれていればよかったのにと思います
温かい家庭に生まれ、戦う必要も、痩せた土地を耕す必要も、
飢えや暑さに苦しむ必要もなく
魔導よりももっと素晴らしいことを沢山勉強し、
良い仕事に就いて、お金を稼いで
そしてある日私達はどこかで出会って、恋をして、
やがて愛し合うのです
どうしてそうならなかったのでしょうね
薄情だと思われるかもしれませんが、
もしもう一度生まれ直すなら、私は、スイートパラディンになりたい
きっとあの子達は、今頃幸せでしょう
私達が決して受けられなかった女王の愛を受け、悪と呼ばれる者達を倒し、
皆から感謝され、戦いが終わっても居場所があり、楽しく暮らすのです
スイートパラディンになりたかった
ファクトリーに適応することすらできなかった邪魔者は、ようやく消えます
キャロライナは私のことなど忘れ、もっと幸せに生きてください
アナタは賢いので、きっとこれからも楽しく生きられます
カイエンやネロに出会ったらよろしくお願いします
それからスイートパラディンにも
それでは本当に、今までありがとう
今までアナタを縛って、ごめんなさい
モルガン」
「……馬鹿みたい」
セブンポットは吐き捨てるように呟いた。かつて拳を交えた栄光あるスコヴィランの戦士が、本当に想像通りで、つまらない、そして不合理な死に様である。
セブンポットはノートを持ったまま、ベッドにどさりと横になる。ページにはいくつも水滴の落ちた跡があった。書き手のものか、読み手のものか、あるいはその両方か。
「いいじゃん、誰のだろうと使える金がありゃ。とりあえず死なないんだから」
セブンポットは、嫌味のように言った。金を自分で稼げないから死にたいとは、随分と贅沢な悩みではないか。
とはいえ、死に向かう者の精神とは得てしてそういうものである。どんな状態でも生きていればいいというのなら、自殺する者などそうそういやしない。納得できる生き方の最低ラインを超えてしまったからこそ、絶望のうちに自ら死ぬのだ。たとえば、どんなにクソのような生活でも、自らが救世の英雄であることだけを心の支えに生き、そして裏切られた女のように。
「アンタ、あんなナリで案外真面目だったんだねぇ」
セブンポットは、分厚いノートに向けて語り掛けた。体を売って自分ひとり生きるのは構わないのに、恋人に迷惑を掛けながらふたりで生きることは耐えられないときたか。完璧完璧とうるさいと呆れてはいたが、そこまで完璧でないと気が済まなかったとは。
「……でもさぁ、モルガン」
セブンポットはノートをぱさりと投げ出すと、天井に向かって呟いた。
「幸せになれなかったよ。スイートパラディン」
セブンポットは、瓶井ナナとしての己が人生を思い返した。親友だと思ったただひとりの女に裏切られ、東堂町生まれであることを隠してようやく人並みに生きられ、つまらぬことで人生を踏み外し、そして最後の希望も失った。ファクトリーに生まれようが、転げ落ちる時はあっという間。キャロライナが来なければ、自分も今頃モルガンと同じところにいただろう。ファクトリーも、ヤクサイシンも、ひょっとしたらショトー・トードも。この世に幸せな場所などどこにもありはしない。
「みんなおなじで、みんなクソだよ」
セブンポットは、静かに唸るように言った。
「あるとしたらさ、過去にしかないんだよ。幸せな場所なんて」
十四歳の頃、確かにあったはずの幸せな場所に向けて、セブンポットは手を伸ばした。そして考え始めた。己がこれから何をすべきなのかを。
アナハイムの言葉を信じるならば、キャロライナの戦いの理由はこれらしい。かつての聖戦の地、東堂町に。かつての戦士達を集め。かつての敵たるショトー・トードを攻撃し。かつてと同じようにプリッキーを呼び出させて。かつて不幸のうちに飼い殺そうとした世界を滅ぼすとうそぶく。そんなキャロライナの戦う理由は、モルガンにあるというわけか。恋人の精神を壊し、死の原因を作った者達への復讐か? それともまだ何か、セブンポットの知らない大きな秘密を握っているのか? たとえば、死んだモルガンが蘇るような?
……それもそうだが、気になるのはアナハイムだ。あの娘は、明らかに自分の手でスコヴィランの戦士を殺そうと考えている。モルガンの話と何か関係があるのか? そもそも誰を殺す気なのだ、まさかキャロライナか? あの娘の考えが、今もまるで読めない。自分まで巻き込んで、一体何をしようとしている? 自分はどう立ち回るのが正解なのか?
次々現れるセブンポットの疑問を遮るかのように、不意にトントンとノックの音。
「誰?」
「ワタシよ、セブンポット」
キャロライナ! よりによってこのタイミングでとは。どんな顔で会えと言うのだろう。セブンポットはノートを素早くベッドの下に滑り込ませた。
「はいはい、今開ける」
セブンポットは部屋の鍵を開ける。そこには、いつものように貼りつけたような笑みのキャロライナが立っていた。
「お久し振りね、セブンポット。なかなか来られなくてごめんなさいね、ワタシも最近自分のやることが忙しかったのよ」
「へ、へぇ」
セブンポットは曖昧な笑いを返す。
「充分休めたかしら」
「ああ、も、勿論。バッチリ……いつでも行ける」
「頼もしいわ。そろそろ前線復帰できるかしらね」
「あ、いいんだ、嬉しいなあ……ハハ」
どことなく応対がぎこちなくなってしまう。キャロライナに怪しまれていないだろうか。セブンポットが苦笑いをすると、キャロライナはクスリと笑いながらセブンポットの腕を抱いた。
「ねぇ、セブンポット?」
「は、はひっ?」
「ワタシの部屋に来ない?」
キャロライナのニタと笑う顔は、いつもより酷く不気味に見えた。
「セブンポットともっと親睦も深めたいし……それに、見せたいものもあるの。いいでしょう?」
その表情に不気味さを覚えながらも、セブンポットは、ゆっくりと二度頷くより他にはなかった。
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