第7話 高校三年生 5月 歪んだ現実はまだまだ続く
三年生になるとまたクラス替えがあった。なのに、
桜の季節が終わり新緑がまぶしい季節になってきた。クラスの雰囲気も固まってきた頃だ。このクラスは居心地がよさそうだな。
新しいクラスには騒がしいけど面白い女子がいる。クラスを明るくするムードメーカーのような女子。普段は友達三人と一緒、計女子四人でつるんでるようだが、他のクラスメイトにも一目置かれている。遠藤を女子にしたらこんな感じかもしれない。
妙な女もいる。「タッくんとこんなエッチしたのー」、と男子の反応を見ながら大声で話していて、気持ち悪い。一応、近くの席に座ってる女子数人に自慢している建前にしているらしい。男子の半数は聞き耳を立て、半数はバカにしながら話半分に聞いている。結局、好むと好まざるとに関わらず、全員聞いていることになる。その反応をチラチラ横目で見ながら嬉々として喋っているのだ。海沙お姉ちゃんや葉月ならこんな
女子といえば海沙お姉ちゃんと葉月、というくらい毒されている俺はクラスの女子を恋愛対象として見ることが出来ないし、特に強い関心も持てない。1ヶ月も経つのに顔と名前が一致する子は、目立つ子だけといったところか。そもそも海沙お姉ちゃんと葉月以外に興味をもてる人が少ないから仕方ないのかもしれない。
海沙お姉ちゃんと葉月との甘い日々は相変わらず続いている。俺も心から二人のことが大好きだといえるし、夜伽を楽しんでいる。
二人に優しく抱きしめられ、唇を重ねたり、髪や顔、体を撫でたり、大好きという気持ちを捧げる空想をすることは人生の最大の喜びだ。一人ずつ交代の時もあれば、二人まとめての時もある。好きとか、気持ちいいとか、愛してるとか、プラスの気持ちしか存在しない、甘い空間。戸惑うくらい激しく攻められることもあるけど、それは心の深いところをこじ開けて刺激するためで、本当は嬉しいこと。好きな人に心を犯されるのは、とてつもない快感だ。お互い、求めて、求められる。愛し、愛される。俺にとって、二人は人生の生きがいだ。全てを許しあった、恋人で、きょうだいで、大切な家族。
ちょっとむしゃくしゃしたときでも、親と反りが合わなくていらいらしたときでも、海沙お姉ちゃんと葉月の胸に顔を埋めて頭をなでられていると気持ちが穏やかになって落ち着いてくる。海沙お姉ちゃんと葉月だから特別なんだろうか。それとも俺がただのおっぱい星人になってしまっただけなのだろうか。
海沙お姉ちゃんと葉月に両側から遥ミルクを吸われるのは、なんともいえない感覚だ。吸われると頭がちょっとぼーっとして、すごく気持ちいい。何よりも嬉しいのは、吸われた後の二人が、すごくきれいになること。つやつやしてて、雰囲気がすごく明るくなっている。俺も二人のミルクを飲んでいるせいか、体の調子もいいし、気分もいい。
調べたところ、授乳ブラ、なるものがあるらしい。カップとよばれる、胸を覆う部分を外すことができる仕様になっている。
外で体育の授業を受けている女子を見ると体操着を姉妹に着せたくなる。そして上着をたくし上げ、体操着の下につけている授乳ブラのカップを外して姉妹のおっぱいを吸うのは、ありきたりの言葉で表現するのができないくらい興奮する。想像しているだけで俺の胸もうずく。急に姉妹に吸われたくなってきた。次の休み時間はトイレに避難するか。快感をこらえている恥ずかしい表情をほかの人に見られたくない。それに、自分で胸をもんですっきりしないと気が済まない。
「マエストロ、いかがなさいましたでしょうか?
また新たな境地に思いをはせているのでしょうか?」
魂のブラザーの次男、樺山が声をかけて来る。いつの間にか次男のポジションに収まっている。
「何だ、おまえもあの女ののろけ話聞いてたのか?」
長男の遠藤が追いかける。
「のろけ話?」
「聞いてなかったのか? あいつ、スーパーの階段の踊り場でいいことやったらしいぞ?」
「俺が同級生には興味ないって知ってるだろ。」
「マエストロ小郡の雰囲気がどんどん変わっていってるんですよね。最初から変だったけど、だんだん遠くなって行くというか。道を極めているというか、俺達よりずっと高いところに到達している感じですぜ。人里離れたところで過ごしている仙人みたいな感じなんですよ。ブラザー遠藤もそんな感じしません?」
やっぱり神様ミルクはやりすぎだったかな。
あれ、どう考えても異常だよね。
「おまっ! まさか、既に卒業しちゃったとか? 小郡が抜け駆けするとはな。」
「ん? 卒業してる訳ないじゃないか、こうやってまだ高校三年生だ。」
「マエストロ、遠藤先輩の言ってることが本当わからないんですか?」
「ん? 何のことだ?」
「だから……!」
「樺山、この分だと卒業はまだだな。相変わらず天然くんのマエストロだ。」
◆ ◆ ◆
こんな馬鹿話をした翌日、登校するときに姉妹が話しかけてきた。
「今日は学校で女の子が大切な話をするから、ちゃんと聞いておきなさいね。」
「そうだよ、遥お兄ちゃん。今日は大事な日になると思うの。
ちゃんと耳をそばだてて聞いておくんだよ?」
女子の話で思いつくのは……あのタッくんとやらののろけ話か?
まさか、大切な話がのろけ話とか言わないよね?
「内容は聞いてからのお楽しみに取っておきなさい。じゃあ、いってらっしゃい。」
「遥お兄ちゃん、気をつけてねー。」
「海沙お姉ちゃん、葉月、行ってきます。」
姉妹との朝の「行ってきます」の挨拶はお約束だ。とはいっても、姉妹はずっと俺と一緒にいるんだが。
それでも、いってらっしゃいの挨拶があるだけで心が満ち足りてくる。家族っていう感じがする。俺は、海沙お姉ちゃんと葉月ときょうだいになれて幸せだ。
◆ ◆ ◆
「ねえ咲、
「え? 綾音、知らなかったの? あそこ、あまり大きくないけど意外と歴史あるんだよ。確か、室町時代にできたんだっけ?」
「ということは、心霊スポットなの?」
「そんなことないって。歴史の割には変な話がないから、意外なんだよね。」
「あらあら、何か感づいちゃった子がいるみたいだねえ。」
「遥お兄ちゃん、ここはちゃんと話を聞いておいたほうがいいと思うよ。」
え?
「あ、綾音、もしかして夏休みに肝試し大会でもやろうと思ってるの? くっつけたい人いるなら教えて? 協力するからね。」
「そんなことないよ! ただ、気になっただけで……。」
あいつらか!
思わずガン見していたら女子が俺の気配に気付いたみたいだ。
「あの子、小郡くんね? わかった、彼には内緒にしておいてあげる。」
「だから、そういうことじゃないって! 純粋に興味あるだけなの! あの神社の不思議な話とか。」
「そうそう、心霊というか祟りというか、それだったら清海神社のほうが有名だよ。あの神社の噂話、聞いたことあるでしょ?」
「やけに核心ついた質問してくるじゃない。こりゃ、もしかすると、ねえ。」
「そうね、海沙お姉ちゃん。」
顔から血の気が引いていくのがわかる。
くそっ、どういうことだ!
「そういえばあそこ、そうらしいよ?
5年くらい前に、羽振り良かったのに一気に潰れた会社あったでしょ?」
あいつら、何でそのネタを話題にしてるんだ?
「あーあ。結構、噂になっちゃってるのね。
それにしても今更こんな話に興味あるってことは……。」
「彼女、夜伽巫女として覚醒しようとしてるのかな?」
おい! ふざけんなよ! 何やってるんだよ!
俺みたいな歪んだ存在を増やして、何が楽しいんだ?
「そんなことないって。ただ、通学途中に樫払神社が目についただけ。やけにきれいだな、って。」
「そう? だったらいいけど。
あ、そろそろ授業だよ。」
どういうことだ?
夜伽巫女として覚醒とか。
「彼女、樫払神社に呼ばれちゃったのね。あの神社にも夜伽巫女制度あるし、夜伽巫女としての訓練を受けていくのかな。」
「うちの神社じゃなかったでしょ? 私達には遥がいるもの、これ以上はやらないよ。」
「でも、遥お兄ちゃん。お願いだから、彼女を見守ってあげて? 道を踏み外す人を増やしたくないでしょ? それに、樫払神社の神使の見る目は確かだし、あの子はすごく才能のある子だと思うの。百人の平凡な夜伽巫女が束になるより一人の優秀な夜伽巫女のほうが価値がある、なんてこともありうる実力社会だから、遥お兄ちゃんとしても少数精鋭のほうがいいでしょ?」
「そうそう。彼女が優秀な夜伽巫女として成長できるよう見守るのは先輩としての義務だよね。それに、あの子は遥のお嫁さんになってくれるかもしれない子だよ? 大切にしてあげないと。」
何だよ。くそっ。生贄がまた増えるのかよ。
「私達から彼女に直接干渉できないから、代わりに遥お兄ちゃんに頑張ってもらうしかないんだよね。」
「他の神様が遥に直接話しかけないのと同じで、私達二人が彼女に話しかけることはできないんだ。代わりに私の自慢の弟の遥にお願いするしか無いんだ。
私が無理なことを言った覚えがある? 海沙お姉ちゃんのお願い、聞いてくれるよね?」
「遥お兄ちゃんが私達のきょうだいでいる限り、葉月も海沙お姉ちゃんも、ずっと遥お兄ちゃんの味方だから。私達の自慢の遥お兄ちゃんでいてくれるよね?」
表の世界、裏の世界 第一部 碧翠の夜伽巫 禪白 楠葉 @yuzushiro_kuzuha
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