嫉妬も束縛も苦手なんだよね

 玲の母親と自分の母親は昔からの親友同士だった。そのため玲とは赤ん坊のころからの付き合いだった。自分の親が家を空けていることが多く玲の家に預けられていたのでまさに兄妹のように育てられていた。

 

 お互い成長し中学生になったころも変わりなく本当に仲が良かった。登下校はいつも同じ、親が家を空けているときは晩御飯をごちそうになる。女の子一人は物騒だからとそのままお泊りして一緒にお風呂に入ったりして。変わったのは高校のころになってからだろう。


 兄妹のように育てられ本当に仲のいい幼馴染とはいえやはり血のつながらない男と女であることには変わりないのだ。高校2年の時ふとこんな話をした「私たちの関係ってただの幼馴染?」その時は自分はなんてことを言ってしまったのかという羞恥で押しつぶされ会話の内容はほとんど覚えていない。しかし流れのままにお互い付き合うことになっていた。


 その時は一度付き合うことでただの幼馴染に戻るということがあれほど時間がかかるものだとは思いもしなかった。付き合った当初は別に普段と変わったことなど何もなくいつも通りだったと思う。


 玲と目が合うだけで気恥ずかしくてまともに目を合わせることすら難しくなったことを除けば・・・。


 しかし二人はうまくいかなかった。付き合い始めてから2か月ほど経ち二人は別れた。別れを切り出したのは明奈からだった。明奈自身よくわからなかった。


 ただこのままだと二人の関係は最悪の形を迎えるそんな気がした。悪いのは玲ではない、たぶん私だ。私は私がこんなに嫉妬深い女だとは思っていなかった。ただの幼馴染だったころはあんな気持ちになったことはなかった。玲が他の女の子と仲良くしているのを見ると心の中のもやもやが積もっていく。


 玲は交友関係が広く私の知らない友人だって沢山いる。女の子の友達も多く彼女がいない時期があまりなく常に彼女がいるイメージだった。ただ玲はあまり長続きしないようで長くても3ヶ月くらいで別れているそうだ。


 後で私の友人から聞いてみると原因は私だった。彼女でもないただの幼馴染である私と玲があまりにも仲がいいことを嫉妬して喧嘩になってしまうらしい。確かに彼女がいるときでも私と一緒にいる時間はあまり変わらなかった気がする。


 だから私は玲に彼女がいるかどうか判別しにくかったわけではあるが。私はその時彼氏が他の女の子と仲がいいと嫉妬してしまうものなのか?と嫉妬はあまり理解できない感情であった。しかし玲にもその相手の子にも申し訳ないので、彼女のことを優先してあげなよとよく言ったものだ。だが玲は珍しく困ったように笑いながら


『嫉妬も束縛も苦手なんだよね。』と言っていたのが今でも印象に残っている。


 玲はチャラチャラしているように見えるが浮気とかはするタイプではないのだ。仲のいい女の子がいても嫉妬する必要はないのだ。玲は女の子を泣かせるような男ではないことを私はよく知っている。



 ───だが違った。


 自分は嫉妬と無縁の性格だと思っていがそうではなかったらしい。付き合ってから少しして気づいた、自分が嫉妬していることに。


 でも言えなかった。玲に自分が嫉妬しているから行動の制限をすることを。玲が束縛されるのを嫌うことを知っていたから自分の嫉妬という醜い気持ちを伝えることができなかった。


 いつからか自分は玲を避けるようになっていた。自分の醜い部分を見られたくないから、このまま嫌われてしまうだろうから。だから自分から別れると玲に告げた。玲に嫌われる前に、いや、自分が自分を嫌いになってしまう前に。


 でも少し成長した今なら昔よりもっと上手く付き合えるかもしれない、もっと上手くもっともっと…。

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