第3話 雷奈と響詩郎(前編・下の巻)
「今ある契約を破棄して新たに契約を結び直すんだ」
そう言った
「それ……本気で言ってるの?」
正直なところ、こうして座っているのも辛く、今すぐにでも倒れ込んでしまいたい衝動を抑えるのが容易ではなかった。
そんな彼女の様子を察知したのか、
そしてその指で整然と印を組む。
その途端だった。
「……あ」
いや、正確には彼の背後を見たと言うべきだろう。
黒い衣を
何よりもその身から
「俺の
そう言う
自らもその身に
そんな感じたことのないような気配を肌で覚えて、全身の毛が逆立つような思いをしながら
「な、何なの? それ……」
これに
「正直言って俺にもよく分からない。生まれた時からこいつは俺に宿っていたからな。
「あなたの能力は罪科換金と霊力分与って聞いてるけど……」
そう言う
「もうひとつ。契約だ」
「契約?」
「ああ。俺の
その目にわずかな希望の
「
その言葉を受けて
「そ、それなら私は
辛い体を前のめりにしながらそう言い募る
「あんた。本当に
「そ、それは……」
「現実的にどうする? 少ない霊力を大幅に増やす方法があるのか?」
響詩郎の問いかけに
「必死に訓練すれば……」
「今までだって必死に訓練してきたんじゃないのか?」
「……」
彼の言う通りだった。
だが、生まれ持っての体質が大きく左右する霊力を修練によって増やすことは、どんなに努力を重ねても成し得なかった。
だからこそ
彼の話を聞くうちに
それを見た
「大事なことはあんたが健康を損なわずに生きられること。それが一番だ。体調が元に戻るだけでも幸いだと思わないか?
だが、
「一番大事なこと? あんたに……あんたなんかに私の一番大事なことが分かるの? 何が分かるって言うのよ」
「え?」
「もうウンザリ……」
そう言うと彼女は勢いよく顔を上げた。
その表情はやるせない怒りに染まっている。
「ウンザリなのよ! おばあちゃんや父さん達は私が鬼
思いの丈を吐き出すように息せき切ってそう言い募る
怒りと悔しさで彼女の顔が
「誰も私が鬼
そう言うと
「使えもしない
ドンッと足を踏み鳴らしてそう言い放つ彼女の目からついに大粒の涙がこぼれ落ちた。
そしてゆっくりと口を開く。
「……だよな。そうこなくちゃ」
神妙な面持ちで黙って話を聞いていた
「あんたやっぱり根性あるな。
「えっ……?」
彼のその言葉を聞いた
「ど、どういうこと?」
「依頼された俺の仕事はあんたを治療することだった。だけどもうそれだけじゃなくなったな。あんたが
そして顔を真っ赤に染めて怒声を上げる。
「あ、あなた。私を試したのね!」
「そんな怖い顔するなよ。俺だってヒヤヒヤだったんだ。あんたの怒りに反応していつ
肩をすくめてそう言う
「くっ……私を馬鹿にしてるんじゃないでしょうね」
そう言って悔しげに
そして首を横に振った。
「馬鹿になんてしてないさ。俺はあんたが
「えっ?」
そして鳩が豆鉄砲を食らったような顔で彼に聞き直した。
「見てみたいって言った? 本当に?」
「ああ。鬼
そんな彼女に
「だから俺に協力してほしい。あんたと俺とで協力しないと今日の仕事は成功しない」
彼の言葉に
「……分かった。あなたにお願いするわ」
「桃先生。これから始めます。見届けて下さい。霊力分与と……代償契約の儀式を行います」
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