第4話 雷奈と響詩郎(後編・上の巻)
「では儀式を始めます」
広い和室の真ん中には儀式の当事者たる彼と
そして見届け人として
「まずは霊力分与を行います」
そう言うと
すると彼の背後から黒衣に身を包んだ仮面の
初めてそれを見ることになった
2人の視線の先では儀式が
「
具体的には
すでに霊力分与と代償契約についての説明を
それは祖母の
ところが
そんな彼の様子に
「どうしたの?」
「ん~。やっぱりイマイチだな……。あのさ、言いにくいんだけど、
気まずい表情でそう言う
思いもよらない追加の要求に
「は、はぁ? あんた、何エロい要求してんのよ。こっちが儀式の知識がないからってドサクサに紛れて変なこと言わないでよね!」
顔を紅潮させて文句を言う
「そ、そんなことするか! 霊気口に直接手を触れないと
霊気口というのは霊気が体の内外を出入りする口であり、体のどこにそれがあるのかは人それぞれ異なる。
霊力分与の際は必ず
そのことは事前に互いが申告済みだったが、直接肌に触れる必要については
ゆえに
「直接肌に触れなきゃいけないって何で最初から言わないのよ!」
今にも噛み付いてきそうな勢いで
「いや、言ったらすんなり首を縦に振るのか?」
そう言う
「何でそこまですんのよ。しかも肌を見せろって。何だかあなたがエロ医者に見えてきた」
「誰がエロ医者だ!」
「あなたよ! 患者が弱ってるのをいいことに治療と称して
「お、おまえいい加減にしろよ」
言い合いを重ねる2人だったが、遅滞する事態を見かねた
「
そう言う
「……分かりました。はぁ」
「いや、誰も見てなくても別に妙な
心外だというようにそう言う
「あまり見ないでよね。っていうか絶対見るな」
彼女にそう言われたからというわけではないが、
(目のやりどころに困るっつうの。クソッ)
体調を崩してひどく弱っているとはいえ、
その彼女が胸元をはだけて少し恥じらうように下を向いているその姿は
この状況は
「さ、さっさと始めなさいよ」
「あ、ああ。分かってる」
治療行為とはいえ、
漆黒の大鬼は瞳のない赤い目を
その胸中を読むことは出来ないが、
「
ほんの一瞬、
「よし」
その途端だった。
「イッ……痛い。痛いってば!」
「どうした?」
すぐに鋭い痛みは治まったものの、
「わ、分からない。けど……痛い」
指先ひとつ動く気配も見られない。
それを確認した
「今度はもう少し霊力の出力を抑える。ゆっくりいくからな」
彼の言葉に
果たして霊力は
だが……。
「痛っ! くぅ~……はあっ! 痛い! あぐぅぅぅああああ!」
そのあまりの痛がりように手を止めた
「何でこんなに痛いのよ! このヤブ医者!」
「ひ、人聞きの悪いこと言うなよ。そんなに痛むのか?」
「死ぬほど痛いわよ!」
「そ、そうか。痛がる客はあんたが初めてだ」
そう言うと
「
「もともと霊力が少ないから、霊気の吸気量と排気量も少なくて霊気口が発達しなかったんだろうね」
そう言う2人の言葉を背中に受けながら、
彼女は胸元を手で隠しながら少々落胆していた。
「……す、すんなりはいかないわね」
「そんな顔すんなって。流し込む霊気の量を最小限まで絞る。少し時間はかかるけど痛みも抑えられるはずだ。ちょっとずつ慣らしていこう」
粘り強く説得するようにそう言う
「……分かった。耐えるわ」
それから
「ゆっくり行くぞ。体を楽にしろ」
「うん……うぐっ。くぅ」
「そんなに力むな。入っていかないから」
「そ、そんなこと言ったって。はっ、はぁ。は、早く終わって……」
すると感覚が
そしてそれと同時に体の中が浄化されていくような開放感を覚える。
すべてが終わるまでには、かなりの時間を要した。
しかし一時間ほどかけてようやく霊力分与が終わった時、
「よし。これでだいぶ楽になったろう?」
そう言う
強い痛みに耐えた疲れこそ残っていたが、
「すごい。これが霊力分与……ヤブ医者だなんて言って悪かったわ。このまま代償契約も進めてもらえる?」
「ゲンキンな奴だな。まあそのつもりだよ。少し休まなくて平気か?」
「ええ。いけるわ」
「このまま代償契約に移行します」
事態が急変したのはその時だった。
それまで指先ひとつ動かさなかった
「う……ぐああああっ!」
強烈な力で締め付けられた
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『オニカノ・スプラッシュアウト!』
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