第1部 第三幕 雷奈と響詩郎 回り始めた運命の秒針
第1話 雷奈と響詩郎(前編・上の巻)
東京・
約束通り午後4時前に
古くから存在する格式高い神社のようで、平日の昼間でも参拝客が少なくない。
周囲をビルに囲まれた大都会にありながら、この場所だけは緑豊かで、まるで隔絶された別世界のようであった。
広い敷地内を歩いて奥へと案内され、大きな木造家屋に通された
老婆と、そして
老婆が神社の正装で姿勢を正して座る様子が厳かに感じられ、
だが少女のほうは顔色が悪く、どこか覇気のない様子で座していた。
互いに挨拶を済ませ、2人が祖母と孫娘であることを
老婆の名前は鬼ヶ崎
少女のほうは鬼ヶ崎
年齢は
「そちらのお嬢さんだね。うちの
早速そう切り出したのは
彼女はどうやら
その
「そうじゃ。事前に話した通り、この
彼女は静かに
目の下にクマを作り、
(何だか気の強そうな女だな。ただ……)
おそらく出来うる限り気丈にその場に座っているのだろうが、本当ならば床に伏していなければならないほど具合が悪いのだろう。
彼女が相当に無理をしているのだと感じた
「とりあえず契約条件とか細かい話は後にして、まずは霊力分与を始めましょう。話を聞いているのも辛いでしょうから。いいですよね? 先生」
「うむ。ありがたい。事は急を要するでな」
そう言う
「霊力分与って言っても別に難しいことはないから。君は落ち着いて座っていてくれれば……」
そう言い掛けたところで
ふいに喉を締め付けるような圧迫感を覚えて顔を上げる。
すると
「あ、あれが……」
そこには身の丈3メートルは超えるであろう漆黒の大鬼が姿を現していた。
そのあまりに迫力ある姿と、その体から発せられる凶悪なまでのプレッシャーに
鬼ヶ崎
「これはまた強烈だね」
明らかに黒鬼は
敵意とまで呼べるかどうかは分からなかったが、黒鬼の視線はそれだけで大砲の砲口を向けられているかのような苛烈なプレッシャーを
そのせいで
「……フン。
そう言ったのは、それまで黙して語らなかった
彼女は冷たい視線を
祖母の
まるで虎や熊などの猛獣の
そんな彼の様子を
鬼を見ずに立ち上がり、
ただそれだけのことだったが、立ち上がった途端に
それが彼の腰をまるで重石のようにしてしまっている。
「
「なるほど。ってことは下手を打てばここにいる全員死ぬね」
薄笑みを浮かべながらも神妙な口調でそう言う
彼女らも当然のように
だが直接的に
「私らのことを警戒しているね」
「
先ほどは自分に対して減らず口を叩いた
真に
救いの手を必要としながらも、それを差し伸べる先が見えない者の胸の内を。
(……俺には桃先生がいた。彼女には誰がいる?)
かつて幼い時分に
あの時、
その手の温もりを思い出した時、
そして彼は決意の表情を浮かべて
「すみませんが俺と彼女の2人だけにしてもらえますか? 話をしないといけないので」
「話……とな?」
老婆は不安げに
それを受けて
「では
そう言って頭を下げると
広い和室には2人と1体の鬼のみが残される。
今もまだ
「さて。始めるとしようか。鬼
そう言って微笑む
「……無駄なことはやめなさい。
にべもない言葉だが彼女のその口振りに
「へぇ。あんた根性あるな。そんなヘロヘロで死にそうな状態なのに初対面の俺の心配をしてくれるのか」
「
そう言う
目の前にいるのは鬼と契約した鬼
だが彼女はまだ鬼を自分の意思で制御できない。
そして
「
そう言う
「何言ってるのよ。私はちゃんと
だが
「
その目が怒りではなく驚きによって大きく見開かれている。
「何ですって?」
端的かつ単刀直入に嘘偽りのない言葉で。
「今ある契約を破棄して新たに契約を結び直すんだ」
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『オニカノ・スプラッシュアウト!』
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