ホワイト・ワイト
藤井さくら
第1話
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いつもの天井だ。
いつもの白い天井だ。
目を開ければいつも感じる背中の痛み。
右手の感覚、左手の感覚、自分の呼吸、自分の心臓の鼓動。心の虚無感。
全てがいつも通りだ。
十分でも不十分でも十全でも不全でもない。
プラスでもマイナスでもない。
ただただここにあるのは限りない、ゼロ。永遠の、虚無。
※※※
僕が住むのは真っ白な一つの部屋。真四角の部屋。部屋というにはあまりにも生活感がない真っ白な部屋。
天井には五本の蛍光灯がむき出しで備え付けられている。
そして部屋の四つの壁には一つが扉が付いていて、あとの三つには大きな窓が付いてる。ただそれだけだった。家具なんてものはもちろんないし、必要もなかった。
もしかしてここは真っ白な部屋というより、ただの真っ白な空間といったほうがいいのかもしれない。
※※※
いつもと違うこと。いつも青空が見えるその窓から雪が見えたこと。
雪落ちる。雪落ちる。雪落ちる。
いつもと違う風景。うれしい。
雪落ちる。雪落ちる。雪落ちる。
※※※
いつもと違うこと二つ目。床が動いたこと。僕はびっくりして跳ね起きた。思わずにやけちゃう。床動く。床動く。床動く。
思わず大笑いしちゃう。いつもと違うこと二つ。雪落ちる。床動く。
間も無く床は消えた。落ちていく僕。眼下に広がる景色。眼下に広がる有。あまねく有。今日は、素晴らしい日。
あまねく虚無はあまねく有へと。
変わったもの。
さよなら四角い家。四角い天井。四角い壁。四角い床。
落ちていく。落ちていく。落ちていく。
一体どこに落ちていく?
僕は誰? え? え?
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さよなら。
※※※
世界は暗転する。反転する。
僕は泳いで。空を泳いでうみををおよで。
のもぬおほいで、ねぬねこおねこ。
なくのゆの。
※※※
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いつもの天井だ。
いつもの白い天井だ。
右手の感覚、左手の感覚、自分の呼吸、自分の心臓の鼓動。心の虚無感。
全てがいつも通りだ。
いつもの目覚まし時計のうるさい音。
なんだ朝か。
なんだか変な夢を見ていた気がするけれど、何も思い出せない。
今日は日曜日だった。何も変わらない日。いつもの日曜日。図書館にでも行こうかな。
「拓也ぁ、起きてる? 朝ごはんもうできてるわよぉ」
母さんの声がした。
僕は部屋を出ると、リビングへと向かっていった。
ホワイト・ワイト 藤井さくら @sakura22
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