『蛇の王』の聖二
1
「
「排気ガスが
「そうですよねー、私なんて水着になろうかと思いましたよ♪」
「浮いちゃうと困るから、やめておきましたけど」
「十分浮いてる」
「普通の人間は私たちよりも寒さに弱い。もう少し合わせて」
「君たち……いや……はぁ――」
「5℃だぞ、今日」
「へえ、どうりで暖かいと思ったぜ」
「わたし知ってます! こういうの、ひーとあいらんど? っていうんですよね」
「細胞の特性を置いておいても、彼らに寒さへの
「そういうこと言うの、嫌われるらしいから気をつけろ」
思い思いに
「なあ、そろそろ昼だぜ。そこのコンビニ寄っていいか?」
「わたし、あっちのお店で牛肉食べたいですっ!」
「別々でいいだろ、メシぐらい」
「陽彦は煙草を買いたいだけ。愛海は予算を考えていない。
「何と何の間を取ったんだ、お前。カップ麺買ってろ」
「おーにーくーがーいいーでーす♪」
「君たち、文句言いつつメチャクチャはしゃいでるよな?」
国民の
ここには
治安が悪化しているとはいっても、
この街が灰色だというのなら、北海道は光すらない
それなのに道行く
「もう少しで着くし、昼食はそこで取る。いいか、これからしばらく、単独行動は
「分かってる、分かってるって」
聖二が釘を刺す。陽彦は
聖二からは、基地にない設備を用いた検査を受けるための遠征だと聞いている。
けれど、それが表向きの説明にすぎないことは陽彦や深雪にも分かっていた。
こうやって街中を歩けていることからして、まずおかしい――ヘタクソな尾行が付いていることは、置いておくとしても。
この遠征には、何かがある。
※※※
「聖二、なにかの間違いじゃないの?」
「いいや、ここで合ってるよ」
行き着いた先は
一階の大きなガラス窓から、広々とした
二階へとつながる階段は室内になく、玄関の横に外付けされている。
「病院とか、企業の研究施設とか、そういうところだと思ってたか?」
「どうでもいいよ。メシ食えるんだよな」
「早く行きましょーっ! ステーキだといいなっ♪」
「愛海のその無限のポジティブさ、どこから
聖二がドアを開ける。カラン、コロンと
「あら、いらっしゃい。ワイルドハントの人たちね」
エプロンを付けた優しそうな中年の女性が、陽彦たちに
「これから二ヶ月……いいえ、できれば五年でも十年でも、長いお付き合いになることを祈っているわ。よろしくね」
時が止まったような
陽彦/深雪/愛海――みなの視線が女性を向き、それから聖二に向けられた。
「説明しろ聖二。おれたちに何をさせる気だ」
陽彦が
「適性検査だ。人間社会に
聖二は動じることなく、
「僕らは
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